今回のリストは、美術家、横尾忠則の個展。アート・シーンで注目度を高めている“抽象芸術”の今を探る企画展。そして、日本の古美術の“読みとき方”をテーマにした企画展

BY MASANOBU MATSUMOTO

『B29と原郷-幼年期からウォーホールまで』|スカイザバスハウス

 日本を代表する美術家、横尾忠則の個展『B29と原郷-幼年期からウォーホールまで』が、東京・谷中のギャラリー、スカイザバスハウスで始まった。

 横尾は1938年生まれ。少年時代に戦争を体験し、ポップ・アートの隆盛とほぼ重なる時期に日本のクリエイティブシーンで脚光を浴びた。自身の体験や記憶から湧き上がってくるものを刹那的に描くのが横尾の流儀だと言われているが、その点からも、横尾の個人史において特別な出来事であっただっただろう「B29(=戦争)」と「ウォーホール(=ポップ・アート)」がタイトルに掲げられているのは意味深長だ。

画像: © TADANORI YOKOO PHOTOGRAPH BY TOMOKI IMAI

© TADANORI YOKOO
PHOTOGRAPH BY TOMOKI IMAI

 会場に並ぶのは、おもに戦前・戦後に生きた人物の肖像画。連合国最高司令官であったダグラス・マッカーサーや、昭和の歌い手で戦中に従軍歌手でもあった渡辺はま子、もちろんアンディ・ウォーホールも登場する。ウォーホールの場合は、彼の肖像画を中心とした60枚の絵(ところどころに別モチーフも混じる)を壁一面に設置し、“曼荼羅(まんだら)”と名付けた展示に。同じ空間に、新婚旅行での愛妻とのツーショット(そこに描かれている横尾は、とても美男子!)や、横尾が初めて観た映画であり幼少期の憧れだった『ターザン』、また自宅と事務所で飼っている猫といった個人的なモチーフの作品も飾られる。

 代表作のひとつである「Y字路」(Y字の道のある風景を描いたシリーズ)の新バージョンや、顔の横に首吊り縄を置いた近作の自画像もある。その自画像は、MoMAに収蔵された、横尾による“横尾忠則ポスター”《TADANORI YOKOO》の一枚に見られる首吊り男の姿とリンクしているようにも思える。

 体験や記憶、さらに過去に描いた作品の残像や幻影がカオスのように渦巻くーー。その中から、横尾忠則という芸術家の本質的な姿をも、本展は感得させる。

『B29と原郷-幼年期からウォーホールまで』
会期:〜7月6日(土)
会場:スカイザバスハウス
住所:東京都台東区谷中 6-1-23 柏湯跡
開廊時間:12:00〜18:00
休廊日:日・月曜、祝日
料金:無料
電話: 03(3821)1144
公式サイト

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