今回のリストは、美術家、横尾忠則の個展。アート・シーンで注目度を高めている“抽象芸術”の今を探る企画展。そして、日本の古美術の“読みとき方”をテーマにした企画展

BY MASANOBU MATSUMOTO

『はじめての古美術鑑賞 ー 絵画のテーマ』|根津美術館

 日本美術、とりわけ古美術は、少し難解なものだと思われがちだ。技法的な美しさはひと目でわかっても、画題、つまりこの作品は何について描かれているのかまで正確に理解できる人はおそらく少ないだろう。

 しかし、古美術には作品によく登場するモチーフがあり、その数も多くはないという。その“頻出モチーフ”を軸に、古美術における主題の変遷と“読み方”を学ぼうというのが、この『はじめての古美術鑑賞 — 絵画のテーマ』の狙いだ。

画像: 《源氏物語朝顔図》 (部分) 土佐光起筆 1幅 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

《源氏物語朝顔図》(部分) 土佐光起筆
1幅 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

 たとえば、「寒山・拾得(かんざん・じっとく。中国の国清寺にいたとされる2人の隠者で、たいてい寒山は巻物を、拾得は箒を手に持つ)」や「布袋(ほてい。七福神で唯一実在した僧侶で、大きな袋をふくらんだ腹がトレードマーク)」。こういった被写体が、どのような人物で、また古美術にはどのような風貌でよく描かれるかを、実物の作品を見ながら知ることができる。また、王朝文化が栄えた平安時代以降は、「源氏物語」「平家物語」「伊勢物語」などが画題になることも多く、今回の展示では「子どもが雪遊びをしているシーンは源氏物語の証」といった具合に、物語を見分けるポイントも伝える。

 日本の古美術には、中国の詩や故事をモチーフにしたものも多い。本展に飾られている《赤壁図屏風》はその一例で、画題は中国北宋の詩人、蘇東坡(そとうば)の代表作「赤壁賦(せきへきのふ)」。蘇東坡が、景勝地のひとつ赤壁に遊びに出かけ名月を見て読んだ詩をもとに、右隻は描かれた。そういった背景を知れば、山の奥にうっすらと見える明月にも目が行くだろう。

画像: 《赤壁図屏風(せきへきずびょうぶ)》 (右隻) 谷文晁(たにぶんちょう)筆 6曲1双 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵

《赤壁図屏風(せきへきずびょうぶ)》(右隻) 谷文晁(たにぶんちょう)筆
6曲1双 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵

画像: 《蔬菜図(そさいず)》 啓孫(けいそん)筆 1幅 日本・室町時代 16世紀 根津美術館蔵 PHOTOGRAPHS: COURTESY OF NEZU MUSEUM

《蔬菜図(そさいず)》 啓孫(けいそん)筆
1幅 日本・室町時代 16世紀 根津美術館蔵
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF NEZU MUSEUM

 縁起ものである“吉祥図像”を紹介するコーナーも面白い。猿は「立身出世」、茄子などのつる性の植物は、一本のつるからいくつもの実をつけることから「子孫繁栄」「豊穣」の意味が込められているという。

 前述の通り、こうした画題は繰り返し日本美術の中で用いられてきた。本展でその素養を身につければ、他の展覧会で同様のモチーフに出会ったときにその作品がより深く味わえるし、なにより古美術がぐっと親しいものに見えてくるに違いない。

『はじめての古美術鑑賞ー絵画のテーマ』
会期:〜7月7日(金)
会場:根津美術館
住所:東京都港区南青山6-5-1
開廊時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休廊日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)
料金:一般 ¥1,100、学生(大学・高校生)¥800、中学生以下無料
電話: 03(3400)2536
公式サイト

 

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