絵画と彫刻の“あいだ”のようなカラフルな立体的作品で知られる美術家ジョシュ・スパーリング。彼の日本初個展が「ペロタン東京」で始まった。オープニングの二日前、われわれ『T JAPAN』はギャラリーで展示の準備を行う彼のもとを訪れた

BY MASANOBU MATSUMOTO, PHOTOGRAPHS BY YASUYUKI TAKAGI

 この個展で、ジョシュは、ギャラリーの2つの展示室にそれぞれ異なるタイプの作品を展示した。メインスペースには、カラフルな“スクイグル”の新作インスタレーションが、もうひとつの小部屋には、“コンポジット(いくつかの要素を組み合わせたもの)”の作品が色鮮やかに並ぶ。この“コンポジット”も彼のもうひとつのシグネチャーだ。丸や三角など幾何学的なかたちのキャンバスや板を重ね合わせたオブジェで、そのなかにはあのくねくねとしたモチーフも潜む。“スクイグル”作品のスピンオフでもある。

 なかでも、今回チャレンジしたことは何かと問うと、ジョシュは真っ先に「“スクイグル”のインスタレーション方法だね」と答えた。過去、このシリーズは、モチーフを壁一面のみに配置したものだったが、本展では、部屋全体の壁を覆い、没入感のある展示を試みたという。そして、この作品はスケールが大きくなればなるほど、作り上げるのが難しくなる、彼のこだわりとも言える理由もある。「モチーフにさまざまな色を施しているけれど、じつはひとつとして同じ色を使っていないんだ」

画像: (左)ジョシュは、「シンプル」「ビューティ」「ファン」の3つの視点から自身の作品を鑑賞してほしいと話す。「この3つの言葉は、自分の人生のモットーでもあるんだ」 (右)会場に置かれた、作品の配置を記す図面

(左)ジョシュは、「シンプル」「ビューティ」「ファン」の3つの視点から自身の作品を鑑賞してほしいと話す。「この3つの言葉は、自分の人生のモットーでもあるんだ」
(右)会場に置かれた、作品の配置を記す図面

画像: (左)立体的なフォルムも彼の作品の特徴だ。それにより単色のモチーフに陰影が生まれ、グラデーション状に見える (右)それぞれのピースの背面にサインを記す

(左)立体的なフォルムも彼の作品の特徴だ。それにより単色のモチーフに陰影が生まれ、グラデーション状に見える
(右)それぞれのピースの背面にサインを記す

 後日、設営を終えたばかりのギャラリーを訪れた。そこで、ジョシュは、個展名の『Summertime』を、ロックバンド、ザ・フレーミング・リップスの楽曲《It’s summertime》から取ったことを、われわれに明かしてくれた。タイトルをつけるのがあまり得意ではないという彼曰く、この名前に決めたのは、「ギャラリーにタイトルを提出しなければいけないギリギリのタイミングのとき、アトリエにこの曲が流れていたから」。

「だから、特別な意味はないんだ」と本人は語るが、“夏”を冠にしたことで、このエキシビションは、われわれに新しい抽象表現のひとつのかたちを提示すると同時に、鑑賞者が素直に楽しみ、寄り添えるものになった。「日本の夏は、とても湿気が多くて暑いと聞いているからね」とジョシュ。「そんな夏に、こういったカラフルなインスタレーションは、観る者の目にきっと心地よく映ると思うんだ」

画像: 《Debbie Downer》 2019年 キャンバス、パネルにアクリル絵の具 85×92cm PHOTOGRAPH BY GUILLAUME ZICCARELLI. COURTESY OF THE ARTIST AND PERROTIN

《Debbie Downer》
2019年 キャンバス、パネルにアクリル絵の具 85×92cm
PHOTOGRAPH BY GUILLAUME ZICCARELLI. COURTESY OF THE ARTIST AND PERROTIN

 

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