BY MIYUKI NAGATA, PHOTOGRAPHS BY JOHN CHAN
マシンに手を入れれば、その日の自分の肌にぴったりのスキンケア剤が抽出され手のひらに。ハンディなデバイスで極細の繊維を肌に吹きつければ人工皮膚が!? まるでSF小説のように聞こえるかもしれないが、これらはすでに実用化され、日常に使われている技術だ。テクノロジーの進化は、美容のルーティンにも変化をもたらし始めている。新時代を築くビューティツールはいかにして生まれたのか。開発者に話を聞いた。
IoTの進化を体感できるのが資生堂の「オプチューン」だ。スマートフォンのアプリで自分の肌を撮影すれば、環境情報などと分析され、マシンが最適なスキンケア剤を抽出する。「今は情報があふれ、自分に本当に合う製品を選ぶのが難しい。一方、仕事や子育てで忙しく、スキンケアの優先度を下げざるを得ない人もいます。そういう人に“その日の肌に最適なケア”を提供したいという思いから、オプチューンはスタートしました」と開発に参加した近藤美鈴は言う。
“デジタルテクノロジーで化粧品の未来を変える人材を求める”社内公募に興味をもち、参加を決意し大阪から東京本社へ。資生堂の各研究部門をはじめ、アプリとシステムサーバー、マシンを制作する社外のメンバーともミーティングを重ね、14カ月でβ版(正式版の発売前に試用のために提供されるもの)にこぎつける。その後はユーザーインタビューで問題点を探り、ブラッシュアップ。β版で1,000通りだった抽出パターンは80,000通りに。「オプチューンは、資生堂が蓄積した肌への知見があってこそ実現したもの。今後オプチューンによって得たデータが新しいスキンケア開発につながる可能性もあります。これはひとつの通過点、今後もアップデートを続けていきます」