季節にふさわしいもの、ときめくものをさりげなく――。ギフトコンシェルジュの真野知子さんが、日本の作り手たちによる素敵な贈りものを紹介する連載第3回

BY TOMOKO MANO, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 ひと目見た瞬間から、釘付けになったこの「平戸細工」。その繊細さ、精巧さ、精緻な美に息をのんでしばし見つめてしまった。「平戸細工」は江戸時代、長崎の平戸に、オランダ人もしくはポルトガル人かスペイン人によって伝わった技法だ。しかし、現在、この技法は平戸には存続していない。秋田と東京などに、この技法を持つ職人がごくわずか存在し、その職人の数も減少していく一方なのだとか。なぜ、長崎から遠く離れた秋田に平戸細工が伝わったのか? 参勤交代のある江戸時代、江戸の市中で、平戸藩と秋田藩の屋敷が近所同士で親交が深かったところにルーツがあるそう。そして、鉱物資源が豊富であった秋田藩は銀細工を特産品として奨励したため、その技術が発展したのだという。

画像: 平戸細工の帯留め<18K、SV,あこや真珠> ¥290,000

平戸細工の帯留め<18K、SV,あこや真珠> ¥290,000

 銀を極細の線状に加工したものを、手先とピンセットを巧みに操って撚(よ)ったり、巻いたり。気が遠くなるほどの緻密な手作業が重ねられ、いくつもの工程を経て成型されたものを、根気よく組み合わせて仕上げていく。それぞれのパーツごとの工程に専門職があるわけではなく、一連の作業をひとりの職人がこなしていくという。日本の職人の手仕事の底力を見せつけられた気がする。

 銀の細い糸を束ねた御所車の綱。目を疑うような繊細な葉の葉脈や、優雅で柔らかな曲線を描く花びら。この帯留めのデザインのベースは花車。御所車に花を飾ったもので、着物にもよく描かれる吉祥文様のひとつである。四季の花々が咲きほこり、春夏秋冬どの季節でも身に着けることができる。幸福の象徴である花車の花々に祝意を込め、花芯には真珠がセットされて、華やかさをいっそう際立てる。そうした花のひとつひとつの細部まで、職人の手によって巧みに表現されている。

画像: 平戸細工のブローチ<18K、SV,あこや真珠> ¥290,000

平戸細工のブローチ<18K、SV,あこや真珠> ¥290,000

 ショーケースの中に飾っておきたいような工芸品だが、身に着けてこそ価値があるというもの。私は、国賓クラスの海外からのゲストにも身に着けてほしいと思うほどに、この「平戸細工」に惚れこんでいる。ハレの舞台や、大切な人のお祝いの席に身に着けるのにふさわしい逸品を、長年の感謝とたくさんの愛情をこめて、母の日に。

問い合わせ先
(株)英工芸(はなぶさこうげい)
TEL. 03(3822)2218

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