BY TOMOKO MANO, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO
もうすぐ母の日。毎年のことなので、さあ、今年は何を贈ろうかと悩んでいる方も少なくないはず。女性はいくつになっても、オシャレをする時は少女の気持ちがよみがえるもの。おでかけの日がうれしくなる、美しい小物を贈ってみるのはいかがでしょう。いつものスタイルをさらりと素敵に仕上げてくれるアクセサリーや、ハレの日に身につけられるひと品。“お母さん”の身も心も素敵に彩り、洋装にも和装にもしっくりと合う、日本の伝統工芸品をご紹介します。
和の粋と品のよさを感じさせるたたずまいの中に、どこかユーモアを感じさせる「T.O.D」の帯留め。「T.O.D」は岡部俊哉さんと岡部由美さんのふたりがてがけるブランドで、シルバーやゴールドの持つ、温かさやシャープさを生かしたオリジナルジュエリーに定評がある。デザインのアイデアは由美さん。宝石をはめ込んだり、細かい作業や仕上げの工程は俊哉さんが担当している。デザインから原型製作、量産にいたるまで、すべてがふたりの手作業により、ひとつひとつ丁寧に仕上げられている。
大量生産があたりまえの時代に、きっぱりと清々しいものづくりの姿勢を貫くふたりだが、由美さんのルーツ、祖先には「ビラ清」「ビラ辰」の両氏がいるそうだ。どちらも落語や講談の寄席のポスターや広告を書くことを生業とする“ビラ屋”の祖として、知る人ぞ知る存在である。江戸文字や四季おりおりのモチーフ、日本の縁起物など、彼女のデザインにはそのDNA的ルーツを感じさせる和のモチーフが豊富にあるのが興味深い。一方、俊哉さんのルーツには宮大工の方がいらしたそう。やはりコツコツとしたものづくりの魂が、DNAの中に連綿と受け継がれているように感じられる。こんなふうに美しき、ちいさきものの背景に、時の流れの積み重ねや人の営みの物語が感じられるのは、なんとも心楽しい。
さて、母の日に贈りたいのは、お福分けのしあわせのかたち。「福」の文字、幸福が飛び出す「瓢箪」に、楽しい集いの象徴「盃」がひとつになったもの。それから、「寿」の文字に、和気あいあいと重ねられた盃。どちらも、縁起ものがいくつも重なる福招きのデザインだ。うれしいことがたくさんありますようにと願いをこめて、贈りたい。
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