クリスタルガラスのメゾンとして名高いラリックが、今年6月27日、日本初となる路面店を東京・銀座にオープンした。グループ会長のシルヴィオ・デンツ氏が考える、ラリックのこれからの100年とは

BY ASATO SAKAMOTO JULY 06,2018

―― オリジナル製品を作るだけでなく、さまざまなアーティストや建築家、ブランドとのコラボレーションを行っていますね。そういった活動を積極的に行う理由とは。

「アーティストたちに、クリスタルで作品を作る機会を与えたい、という思いがまずあります。それによって彼らの世界観が広がっていくところを見たい。でも、見ていただくとわかると思うのですが、ダミアン・ハーストの作品にしてもザハ・ハディドの作品にしても、アーティストの作品でありながら、サテンのフィニッシュや繊細なカッティングにはラリックらしさが表れています。その融合がとてもおもしろいのです」

―― オリジナル製品を生み出す際のアイデアにもつながりそうです。

「確かにそれもありますね。内部のデザイナーにはとてもよい刺激になっていると思いますし、同時にそれはブランドの発展にもつながることだと思っています。わかりやすい“ラシックらしさ”や、長きにわたって受け継がれてきたデザインも大切ですが、新しいアイデアをとり込むことによって、これまで接する機会のなかったお客さまや若い方にとっても魅力あるブランドになれるのではと思います」

画像: ベース(花瓶)『イロンデル』2018年コレクション

ベース(花瓶)『イロンデル』2018年コレクション

―― 2018年のコレクションでは、ルネ・ラリックを象徴するモチーフである、ツバメを使用していました。2年前からハイジュエリーの製作も再開し、ブランドとして“原点回帰”を意識しているように感じます。

「おっしゃるとおり、自分たちの“オリジン”は今まで以上に大切にしなければいけないと思っているところです。なぜなら、新しいものを作るときにはルーツをしっかり理解することと、過去の経験から積み上げていくことが大切だからです。花が咲くためにはまずきちんとした根っこがないと木は育たないですし、花も咲かないですよね。つねに過去に敬意を払い、そのうえで現代にマッチする形を模索する。これからの100年に向けて前進するということは、私たちにとってそういうことなのです」

画像: フランス、ボルドー地方にラリックが建設したホテル&レストラン「シャトー・ラフォリー・ペラゲ」。ほかにもミシュラン2つ星を獲得したレストランをもつホテル「ヴィラ・ルネ・ラリック」、「シャトー・ホッホベルク」といった施設を運営している PHOTOGRAPHS:© LALIQUE

フランス、ボルドー地方にラリックが建設したホテル&レストラン「シャトー・ラフォリー・ペラゲ」。ほかにもミシュラン2つ星を獲得したレストランをもつホテル「ヴィラ・ルネ・ラリック」、「シャトー・ホッホベルク」といった施設を運営している
PHOTOGRAPHS:© LALIQUE

―― 前進する先には、どのようなブランド像をイメージしていますか。いま思い描いている未来について教えてください。

「ラリックは、ライフスタイルブランドとして6つの柱を大事にしています。ジュエリー、クリスタル製品、香水、インテリア、アート、そしてホスピタリティの6つです。私たちはいま再び、この6つの柱を強固なものとし、現代に沿う形でそれぞれを魅力的なものにしなければいけないと思っています。それがルネ・ラリックのDNAを継承することだと思いますし、文化的なヘリテージをブランドにもたらしてくれると思っています」

―― 最後に。ご自身で所有しているラリック作品の中から、特に思い入れや思い出のあるものを教えてください。

「たくさんあるのですが、ひとつ選ぶとしたら、1898年にルネ・ラリックが自宅のキッチンで製作したフレグランスボトルでしょうか。ロストワックス製法という手法で作られたもので、そのせいでアパートが火事になり、ラリックは大家さんに追い出されてしまったというエピソードが残っています。25年間ほどルーブル美術館に収蔵されていたものを、約10年前に私が入手しました。火事になったときも、ラリックはそのボトルをパンツのポケットに入れて持ち出し、ラリック自身もボトルも無事だったのですが、彼はそれから20年ほどお守りのようにずっとポケットに入れたままにしていたそうです。それが私にとってのスペシャルピースです」

「ルネ・ラリックに幸運をもたらしたそのピースは、私にも幸運を運んできてくれるかもしれません」と笑顔で語ったシルヴィオ氏。彼にとってもお守りとなったこのピースは、今ではアルザスの工房近くに建てられたラリックミュージアムに展示され、ラリック社を支える人々とこれからの100年を見守っている。

シルヴィオ・デンツ
ラリックグループ会長。ラリック会長兼CEO。スイスとアメリカで金融、小売業等の分野に従事した後、2000年、アート&フレグランス社(現ラリックグループ社)を設立。2008年、ラリック社を買収。ラリックをライフスタイルメゾンとして再確立することを目指し、ホテル、レストラン事業にも力を入れている。ボルドーのヴィンテージワインの熱心なバイヤーとしても知られ、8つのワイナリーを所有、経営している

ラリック銀座店
住所:東京都中央区銀座5-6-13
営業時間:11:00〜20:00(7月)、12:00〜21:00(8月〜)
電話: 03(6228)5206
公式サイト

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