BY YUKA OKADA, PHOTOGRAPHS BY TAKUJI SHIMMURA
「建築ってすごいなって思います」
田根が普段からよく口にする言葉だ。滑走路の果てに立ってやっと、その深淵に触れる。冒頭タルトゥは素朴な街だと書いたが、待っていた建築の姿は記憶を失った更地に建つどんなにデザインされた都市のビルよりも、誇り高いものだった。
たとえば故人の思い出が残された人間を支えることがあるように、場所の記憶は未来の街や人々の心の拠りどころにもなるだろう。ただ、それを次の世代につなごうという気概が、今の私たちにあるだろうか。
遠く、悠然と佇むミュージアムに最後、そう問われた気がした。