2016年10月1日、エストニアに待望の国立博物館が開館した。パリを拠点に活躍する建築家、田根剛(DGT.)が、10年をかけて完成させた建築とその想いを旅する

BY YUKA OKADA, PHOTOGRAPHS BY TAKUJI SHIMMURA

滑走路の果てから、エストニアの未来に向かって勇敢に立ち上がるミュージアムの屋根を眺める。
独特の硬いコンクリートを踏みしめる足もとから、世界にたったひとつしかない場所の記憶が、
強く感じられる地点だ。冬の間は滑走路が白銀で閉ざされるが、
「それはそれで美しいものがありますよ」と田根は言う。その言葉は負の遺産を美に変えることすらできる、
建築が持つ力への礼にも聞こえた

「建築ってすごいなって思います」
 田根が普段からよく口にする言葉だ。滑走路の果てに立ってやっと、その深淵に触れる。冒頭タルトゥは素朴な街だと書いたが、待っていた建築の姿は記憶を失った更地に建つどんなにデザインされた都市のビルよりも、誇り高いものだった。
 たとえば故人の思い出が残された人間を支えることがあるように、場所の記憶は未来の街や人々の心の拠りどころにもなるだろう。ただ、それを次の世代につなごうという気概が、今の私たちにあるだろうか。
 遠く、悠然と佇むミュージアムに最後、そう問われた気がした。

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