イタリアの有名家具&インテリアブランドを擁する「イタリアン・クリエイション・グループ」CEOが来日。4つのハイエンドブランドを統括しつつ、「地方色や創業者の人柄といった各ブランドの個性を際立たせる」というその経営哲学とは

BY MIKI HONMA, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 東京・外苑前にまるでヨーロッパのような佇まいのショールームが誕生した。重い鉄の扉を開けると、ピアノのように静謐な、家具のようなキッチンが鎮座している。イタリアのキッチンブランド「ヴァルクッチーネ」は1980年創業。経営や製造、デザインなど各分野を担う4人の創業者が設立した。当初から環境を意識し、人間工学を大切にした開発で知られ、同社のキッチンにもその思想がいかんなく発揮されている。

 まずデザイン面。キッチンの引き出しには、イタリアの伝統工芸を使ったアクセサリーパネルがはめ込まれ、無垢の木やセラミック、金属仕上げの塗装など、イタリアの美意識を生かした素材がふんだんに用いられている。最近、日本でも関心が高まっている極上素材を組み合わせたキッチンデザインが可能だ。

画像: シックな色のガラスで構成されたキッチンを展示する、外苑前の「ヴァルクッチーネ」ショールーム。壁には、キッチンにはめ込むことができる鍛金やモザイク、木象嵌、木彫などさまざまなイタリアの工芸パーツが飾られている

シックな色のガラスで構成されたキッチンを展示する、外苑前の「ヴァルクッチーネ」ショールーム。壁には、キッチンにはめ込むことができる鍛金やモザイク、木象嵌、木彫などさまざまなイタリアの工芸パーツが飾られている

 キッチン内部は、リサイクルできる強化ガラスを扉面に用い、これをアルミフレームで組み立てる構造。必要最小限の材料で分解組み立てがしやすく、運送もしやすい。また、使い勝手も秀逸だ。キッチン収納は大きな一枚のガラス扉で開け閉めするシステムで、料理するときにセンサーでパッと軽く開けると道具やシンクが現れ、料理が終わって扉を閉めれば空間がスッキリする。この扉の開閉もテコの原理や自重の力で、できるだけ自然の力を生かすような設計になっている。

 ヴァルクッチーネのキッチンは、どのモデルもこの思想に貫かれている。量産品というと多くのメーカーが横並びになり、個性が埋もれてしまう傾向が世界的にあるなかで、イタリアのメーカーはこのように人がひとり一人違うように、その個性が際立っている。

画像: 作業面の前の壁面は横に長い大きなガラスの扉。そこを開けると調理道具やシンクが現れる COURTESY OF VALCUCINE

作業面の前の壁面は横に長い大きなガラスの扉。そこを開けると調理道具やシンクが現れる
COURTESY OF VALCUCINE

 そんなヴァルクッチーネも現在、インテリアのグループ化の流れに組み込まれている。先日、イタリアン・クリエイション・グループのCEOであるジュゼッペ・ディ・ヌッチョ氏が来日し、同グループが擁する4ブランドの持ち味を統合する意味を話してくれた。キッチンのヴァルクッチーネ、家具のドリアデ、浴室のトスコクアトロ、照明のフォンタナアルテだ。

「イタリアのグループブランドの多くは、複数のブランドをひとりのアートディレクターの傘下にまとめて統一しようとしている。私の考えはそうではありません。ブランドそれぞれの個性を際立たせることが大切なのです。特にイタリアのブランドは、地方性や創業者の人柄がその哲学と深く絡み合っていることが多い」と話す。

画像: ジュゼッペ・ディ・ヌッチョ(Giuseppe di nuccio) イタリア・マルケ州生まれ。大学で生物化学の学位を取得し、90年代はジルサンダー、バーバリー、ジョルジオ・アルマーニなどの主要ファッションブランドでマーケティングを担当。2018年3月からイタリアのハイエンドデザイン・家具ブランドを擁するイタリアンクリエーショングループのCEOに就任、4つのイタリアデザインブランドを統括する。好きなものは自然と読書、音楽、旅、青色

ジュゼッペ・ディ・ヌッチョ(Giuseppe di nuccio)
イタリア・マルケ州生まれ。大学で生物化学の学位を取得し、90年代はジルサンダー、バーバリー、ジョルジオ・アルマーニなどの主要ファッションブランドでマーケティングを担当。2018年3月からイタリアのハイエンドデザイン・家具ブランドを擁するイタリアンクリエーショングループのCEOに就任、4つのイタリアデザインブランドを統括する。好きなものは自然と読書、音楽、旅、青色

 地方性で言えば、ヴァルクッチーネはイタリア北部のヴェネト州の会社で、誠実で学者肌な気風が製品に反映されている。トスコクアトロは大理石の産地であるトスカーナで創業。イタリアらしい天然石の加工で、彫刻のようなバスルームを作り上げる。ファッショナブルな家具が特徴のドリアデは、近年、エキセントリックでアーティスティックな作風で知られるファビオ・ノーベンブレがアートディレクターに就任した。フォンタナアルテはミラノ出身の建築家、ジオ・ポンティが設立。知的で品のあるミラノスタイルで知られる。

 いずれも日本ではまだ知られていないブランドだが、イタリアにはこうした小さな宝石のような珠玉のブランドが山のように存在する。経営的にグループ化することで、それぞれの個性を守る。それがディ・ヌッチョ氏の考えるシナジー効果だ。

 日焼けした肌に笑顔が似合うディ・ヌッチョ氏は、海沿いの街、マルケ島の出身。若い頃はバイオテクノロジーを学び、一方でファッションを愛してやまなかったという。アルマーニやボルボネーゼなどのブランドで成功を果たし、これからはファッションとは違うリズムをもつインテリアの世界に挑むという。

画像: 人の知恵による手書きスケッチは何よりも尊重される。最新作キッチン「ロジカチェラータ」は、スケッチから製品化までわずか7カ月と工程を短縮し、早々にお披露目することに成功した COURTESY OF VALCUCINE

人の知恵による手書きスケッチは何よりも尊重される。最新作キッチン「ロジカチェラータ」は、スケッチから製品化までわずか7カ月と工程を短縮し、早々にお披露目することに成功した
COURTESY OF VALCUCINE

 たとえばヴァルクッチーネの製品開発は手書きのスケッチから始まる。ディ・ヌッチョ氏は「そのクリエイティビティは尊重されるべきものです。しかし製品化はもっとスピードアップできるはず」と考え、外部のソフトウェアを取り入れて工期の短縮を実現した。照明のフォンタナアルテなども、今後はより最新の技術を取り入れることで、スピーディに暮らしに寄り添うものを提供できるだろうと考えている。

 ちなみにヴァルクッチーネは、日本では大手住宅設備機器メーカーのクリナップが関東地域の総代理店を務める。ものづくりの思想に共通するものを感じ、数年にわたる話し合いを経て契約に至ったという。日本でも高級キッチンへの関心は高まるばかりだ。量産キッチンを手がけてきたクリナップは、ヴァルクッチーネはハイエンドマーケットへの挑戦の布石と考えている。それを受けて、ディ・ヌッチョ氏も日本の技術力や誠実なビジネスに信頼を寄せる。よりよいものが消費者の手に確かに届くよう、「アジア市場に向けたヴァルクッチーネのカスタマイズも考えたい」と、彼のビジョンはさらに広がっている。

Valcucine Tokyo(ヴァルクッチーネ東京)
住所:東京都港区南青山4-1-12 コンフォリア南青山1階
電話:03(3810)2555
営業時間:10:00~18:00(完全予約制)
休日:土・日曜・祝日
公式サイト

 

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