BY EMI ARITA, PHOTOGRAPHS BY YUKARI KOMAKI
2014年の秋に、ルーマニアを旅したという古牧さん。「ルーマニアには伝統的な幾何学模様のパターンを施したラグや器、ロマンティックなバラ柄のタペストリーなど、繊細な手仕事から生まれる素朴でかわいいものが溢れていました。買ったものはラグやクッションカバーなどの布ものと器を少し。ラグはちょうど今、リビングに敷いている幾何学模様のものです。ピンクやグリーン、赤と、とってもカラフルなんですが、締め色に黒が使われているので、華やかだけど甘すぎない、絶妙なバランスがお気に入りです」
ルーマニアの旅では、首都ブカレストから郊外へと車で移動し、世界遺産にも登録されている古い教会群を巡ったそう。
「世界のあちこちを旅してきましたが、13世紀〜15世紀頃に建てられた木造の教会が、そのままの姿で現存しているのはとても希少。壁一面に描かれたフレスコ画も圧巻でしたし、精巧な石彫りの窓枠も美しく、当時の職人さんたちのクラフトマンシップが感じられました」
「教会だけでなく、建物や民家の外壁もかわいいんです。石畳にパステルカラーの建物がずらりと並ぶシギショアラの街並みや、伝統的な幾何学模様のタイルが施された古い民家など、街はたくさんの色や柄で溢れていました」
「トランシルバニア地方のビスクリ村には、イギリスのチャールズ国王がルーマニアの伝統的な家屋を、文化遺産として保存するべく所有している家もありました。2棟あるうちの1棟は民藝博物館のようになっていて、ハンドメイドのキリムやタペストリーなどの伝統工芸品が展示されています。大胆な色使いやバラ柄の刺繍と、ルーマニアの布ものがこうしてずらりと並ぶと、とっても華やかで素敵。あれもこれも欲しくなってしまいますよね」
「伝統的なファブリックは、みなさん手作りをして家に飾っている、とのことだったので、ぜひ実際のお家も見てみたいと思い、二人のおばあちゃんの家を覗かせてもらいました。1軒はキッチンの壁を埋め尽くすように、鍋やプレートを吊るしているおばあちゃんの家。カラフルで楽しいし、鍋や鍋蓋をインテリアとして飾っているのがチャーミングでしょ」
「もう1軒はハンドメイドのレースやタペストリーで装飾されたおばあちゃんの家。特にレース使いが素敵でした。実は初めて一人暮らしをした時に、フリルやレースのついたファブリックでベッドメイクをしていたくらい、こういうロマンティックな装飾も大好きなんです。このおばあちゃんの家を見てから、私もロマンティックなベッドメイクを復活させました」
どちらのおばあちゃんの家もカラフルで、自由な飾り付けを楽しんでいる様子は、混然一体とたくさんのもので彩られた古牧さんの部屋のムードにも通じるものがある。
「おばあちゃんからは、『壁に飾っているタペストリーは売ってあげる』と言われたんですけど、遠慮してしまって。それが今となっては心残り。あと、バラ柄の刺繍のラグも欲しかったんですけど、大きなトランクを持っておらず、幾何学模様のラグを持ち帰るので精一杯でした。いつかまた買い付けの旅に行けたらいいなと思っています」
古牧ゆかり
スタイリスト/ビジュアルディレクター。ファッション誌で活躍後、渡仏。パリに暮らす。帰国後『エル・ジャポン』のファッションエディターに。現在はフリーでファッション、インテリアのスタイリングや動画制作のビジュアルディレクションを手がける。本誌ファッション特集でも活躍中。
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