BY KURT SOLLER, PHOTOGRAPHS BY RAFAEL GAMO, TRANSLATED BY JUNKO HIGASHINO

書斎に並ぶのは、ロメロの建築模型。家具はすべて「フェルナンド・ロメロ・スタジオ」によるカスタムメイド
もともと生活空間は上下の2フロアに分かれていたが、ロメロはすべての機能を、上のフロアに集約させた。上階へは新たに設けたゆるやかなスロープでアクセスできる(以前、寝室や使用人部屋があった下階は、現在、収納スペースとして使われている)。室内の構成をあえてコンパクトにしたのは、ゲストに屋外で過ごす時間を楽しんでほしいからだという。前庭と裏庭には、シダ類やサボテン、多肉植物、古い果樹などが豊かに茂っている。ロメロはよく“幸運のお守り”代わりに庭のミカンをひとつもいで、ポケットに入れて一日じゅう持ち歩くそうだ。「メキシコの気候は世界一だ。あと一年もすれば、この家は庭の緑にすっぽり飲み込まれてしまうだろう」と彼は微笑んだ。

屋内庭園に面したTVルームと、その奥に見えるダイニングルーム
ロメロが室内と屋外の両方に大胆な色を選んだのは、それらが自身の活力となり、クリエーションの源泉になると考えたからだ。外壁の金属パネルには朱色を施した。「日本の寺院に見られる色だよ。家とは一種の“聖域”だからね」と彼はその意図を明かす。ダイニングルームを彩るショッキングピンクは、メキシコ建築の巨匠ルイス・バラガンの作品を思わせる。ロメロは、バラガンが1960年代に手がけた名作、フラミンゴ色の「サン・クリストバルの厩舎」を2017年に購入し、現在は文化センターへ改修を進めている。書斎は鮮やかなグリーンで統一。窓の外に広がる熱帯植物を模した色だが、彼は最近「本のブラウンやベージュといった落ち着いたトーンに対して、少し派手すぎたかもしれない」と気にしている。ロメロと、彼が率いる60人以上から成るチームは、ここを単なる住居ではなく「実験の場」として捉え、絶えず何かを変えたり動かしたりしている。彼はこう続けた。「この家はマスターピースなんかじゃない。パビリオン、つまり変化し続ける仮住まいのようなものなんだ」

瞑想スペース
日頃からよく人を招くロメロだが、ひとりで静かに過ごす時間も大切にしている。彼が好きなのは、1930年代のオランダ製アンティークチェアを裏庭のテラスに引っ張り出し、トンボが飛び交う中、自ら設けた滝型の噴水の水音に耳を傾けること。屋外で読書やデッサンをしながら日曜日をまるごと過ごすことが、「週末の最高の贅沢」だと言う。ロメロが次に取り組みたいのは、ボートのデザインだ。チェスルームの壁に飾ってある模型のような、カタマラン(註:二つの船体を甲板で平行につないだ船)を作りたいと思っている。だが彼の頭を常に占めているのは、近い将来に建てたいと願う自邸の構想だ。都市部でも、メキシコの海岸沿いでも良い土地さえ見つかれば、すぐにでも着手したいそうだ。ロメロはそう前置きして言葉を続けた。「もし何の縛りもなく、本当に自由に設計していいのなら、家というのは時代を映し出す鏡であるべきだと思う。今暮らしている家は、既存の建物をリノベーションしたものにすぎないからね。次に手がける夢のマイホームは、完全にゼロから自分の手で築き上げたいんだ」

チェスルームの壁に飾られているのは、メキシコの現代アーティスト、ゴンサロ・レブリハの作品。手前に並ぶのは、「フェルナンド・ロメロ・スタジオ」のテーブルと、パリの「ギャラリー・クレオ」の依頼でヘラ・ヨンゲリウスが手がけた「バックパック・スツール」
ARTWORK ON WALL, RIGHT: GONZALO LEBRIJA, “UNFOLDED,” 2015 © GONZALO LEBRIJA, COURTESY OF THE ARTIST AND MICHAEL KOHN GALLERY, LOS ANGELES
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