BY KURIKO SATO
ストーンが演じるアビゲイルは、サラのお情けで宮廷の下働きに雇われる。だが同僚たちからは手ひどい嫌がらせを受け、いつかこんな境遇におさらばしたいと、むくむくと野心を膨らませる。有象無象の策略が渦巻くなか、彼女は機転を利かせて女王に近づき寵愛を受け、やがてサラの地位を脅かすほどになる。ストーンは自身の役柄をこう分析する。
「アビゲイルはサバイバーよ。彼女がこうむってきたさまざまなことから生き延びて、新たな地位を手にいれる。決して性格がいいとは言えないけれど(笑)、頭が切れて人を操作するのにも長けている。でも私は彼女をジャッジしたくはなかったし、彼女の行為を正当化するつもりもなかった。ただ演じる上で、どうして彼女はこうなったのかという自分なりの解釈を持っただけ。たぶん映画を観た人は私同様、彼女のやり方には共感できなくても、感情的にはどこかで部分的に共感するのではないかしら。同じような立場に立たされたら、自分もそうするかもしれない、というふうに」
ストーンにとってはまた、初めてのコスチューム劇であることもハードルが高かった。「本当に息ができないぐらいコルセットが苦しかったわ! でもそれは一方で、役作りの助けにもなった。ふだんとは異なる思考を得るためにね。そして彼女の地位が上がっていくに連れ、コスチュームも立派になっていくの」
素顔のストーンは陽気でユーモアに満ちた、天性のポジティブ思考の人という印象がある。取材の受け答えも、ときにランティモス監督の声音を真似たりしながら、表情豊かに語ってくれる。
「この物語はまったく異なる女性3人を核にした、とても珍しい脚本よ。しかも3人それぞれが欠点を持ち、とても複雑で、コミカルな味もある。一見特殊な世界だけど、複雑な現実のリアリティを反映していて、だからこそとても面白い。女優同士、ライバル意識はなかったかって? あったと言いたいところだけど(笑)、実際はその反対。こういう話だからこそ逆に、俳優たちの団結が大切だったの。わたしたち3人は、打ち解けて信頼し合えるように、ヨルゴスと一緒にセットに入る前に3週間、リハーサルをした。そのおかげで、どんなことにも一緒に立ち向かえるようなチームワークが生まれた。私にとってはとても貴重な経験よ」
最近30歳を迎えたストーンにとって、本作はまさに20代最後の記念すべき作品になったようだ。だが、30歳になった感想を尋ねると、こんな答えが返ってきた。「30歳になって嬉しい! どうしてって、20代は自分が何者であるかということを模索するうちに、足早に過ぎていった感じがするから。キャリアに関してはとてもラッキーだったと思うけれど、息をつく間もないぐらい忙しかった。30代になったらもう少し落ち着いたペースで、じっくりと好きな仕事に集中できるような気がするの」
果たしてその前途洋々な30代に彼女がどんな軌跡を残すのか、それもまた、われわれの楽しみのひとつである。
『女王陛下のお気に入り』
2月15日(金)より全国ロードショー
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