TEXT BY CHIKAYO TASHIRO
忙しい毎日を送る人に観てほしい!
『なにもしたくない~立ち止まって、恋をして~ 』
会社と家の往復だけで忙しい毎日を送っているヒロイン、ヨルムが、会社では見下され、恋人には疎まれ、あげく突然母親を亡くし、思い立ちます。「これからは何もしない、人生のストライキだ!」と。そして会社に辞表をたたきつけ、あてもなく出かけた先で居心地のいい素敵な図書館を見つけ、この町に住もうと決心。ゆったりと時間が流れる海辺の町でのなにもしない日々が始まるという物語です。
ヒロインが、ミニマムに、シンプルに暮らす姿、昼間からお酒を飲んで酔っ払ってみたり、図書館で日がな一日過ごしてみたり、そうしたすべてが、日常からの逸脱感に満ちていて、観ているだけでも憧れが募ります。そんなヒロインを何かとサポートしてあげるのが、イム・シワン演じる図書館司書。超美形なのに強烈なキャラクターを演じることの多かった彼が、ここでは緩やかなウェービーヘアが似合う等身大の心優しき青年に扮しているのも嬉しいところ。訳ありの事情を抱えながら静かに暮らしていた彼が、ヨルムと出会って、少しづつ心を寄せ合っていくさまをピュアに演じていてキュンとさせられます。
彼の手助けもありながら、ヒロインが町の人々に少しづつ受け入れられていく様子がゆったりとした時間の中で描かれていくのがじんわりと来ます。自分もこの、のどかな町でひと夏を過ごしたかのような気持ちになりますし、幸せはとってもシンプルなことなのだというメッセージが伝わってきます。忙しい毎日を送る人への珠玉のエッセイ本のような作品です。
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突き放し系のやさしさに胸キュン必至
『海街チャチャチャ』
上司とけんかしてソウルから海街にやってきた歯科医の女性と、海辺の町でホン班長と呼ばれている何でも屋の男性が繰り広げていくドラマです。
このホン班長、なんでもできるからみんなに頼りにされていますが、どこか寂しさを抱えていて、それを他人にはおくびにも出さないけれど、ヒロインと触れ合っていくうちに、彼女の前でだけふっと心を見せていくというところにキューンときます。それを演じたキム・ソンホがなんともチャーミングで、この男性に惹かれない人はいないでしょうっていうぐらいの魅力を振りまいています。そんな彼と、シン・ミナ演じるキュートでちょっと強がりなヒロインとのケミストリーがとってもお似合いでした。ソウルからやってきた彼女は最初行動や振る舞いが都会っ子過ぎて浮いてしまい、町の人たちになじめなかったのですが、ホン班長がさりげなく手助けしていくうちに愛が芽生えていくのです。ここでのホン班長は、突き放し系のやさしさで彼女の自立を促し、でもここぞというときには全力で助けに来るので、そこに胸キュンです。
もう一つの見どころポイントは、今韓国でとっても流行っているリアルバラエティーをこのドラマの中にうまく入れ込んでいるところです。バラエティ番組好きな人にとっても、あれだけのカメラやスタッフに囲まれて収録しているんだ~みたいなのがよくわかって面白いです。
やるせない事情や誤解も出てきますが、でも最終的には人って優しいのだということが伝わってきて、なにかと閉塞感が漂う時代にほっこりとハートウォーミングな気持ちにしてくれる作品です。
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穏やかな時の流れに癒される
『天気がよければ会いにゆきます』
喧騒のソウルから田舎町に戻ってきたヒロインと地元の青年が紡いでいく穏やかなラブストーリーです。
都会で心が折れてしまったヘウォンが高校時代に暮らしていた自然に囲まれた田舎の町。
冬のひと時のあいだ叔母がいるペンションで過ごそうと帰ってきました。そこで再会したのが高校時代の同級生だったウンソプ。彼はペンションの隣でグッドナイト本屋というほとんど客が来ない書店を営んでいました。実はウンソプにとって、ヘウォンは初恋の存在。嬉しさを内に秘めヘウォンとのできごとをブログに綴る日々が始まっていきます。
テンポの良い弾むラブコメを見慣れた人にとっては、間合いのある、まるで映画のような時間の流れ方をするドラマで、主演のソ・ガンジュンもパク・ミニョンもとっても繊細な演技を披露しています。
ソ・ガンジュンが静かな空気をまとった優しい青年に扮し、初恋相手を前にして意識しすぎてぎこちない感じがこそばゆいです。
本屋では同級生や町の人が集まって読書会があったり、どんなことも瞬時にして街のみんなが知っていたり、ゆったりと流れる時間の中で一見穏やかにエピソードが綴られていきますが、人生にとげが刺さっている人々のささくれた心が交錯してもいます。特に、常に失うことを恐れている青年が宿すそこはかとなく漂うあきらめ感や寂しさが切ないです。
寒いということに気づいてもいなかった自分が、家に帰って実はとても寒かったことに気が付くような、心の奥底の孤独に寄り添うようなお話です。
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