病を患う父に寄り添う息子を演じた新作映画で彼がその胸に刻んだのは、家族との時間の大切さと、不変の愛を注ぎ続けること。俳優・松坂桃李がいま思う、演じること、作品を届けることの意義、そして見据える未来とは。

BY SATORU YANAGISAWA, PHOTOGRAPHS BY JUN YASUI AT HOME AGENCY, STYLED BY KEITA IZUKA, HAIR & MAKEUP BY AZUMA AT M-REP BY MONDO ARTIST-GROUP

画像: 絶妙なアンバランスさが目を引く、浮遊感のあるコーディネート。軽やかな素材、仕立てしかり、あらゆる役柄に柔軟に挑み続ける俳優としての彼の姿勢を表しているかのようだ。 コート(参考商品)・ジャケット¥319,000・パンツ¥132,000・靴¥143,000/フェラガモ フェラガモ・ジャパン TEL. 0120-202-170

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画像: 薄手のニットの上に羽織ったのは、モヘアとシルクを混紡したミニマムなブルゾン。落ち着きのあるダークブラウン、そして素材特有のツヤが年相応の気品を漂わせながら、スポーティなディテールが彼のもつ爽やかな魅力を後押しする。 ブルゾン¥484,000・ニット¥390,500・パンツ¥357,500(すべて予定価格)/プラダ プラダ クライアントサービス TEL. 0120-45-1913

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松坂桃李インタビュー「親子の時間って、多いようで意外と少ない。家族で過ごす時間の大切さを感じてほしい」

 松坂桃李に話を聞いたのは、彼が演じる"官僚教師"と令和の高校生たちが、ともに教育現場の現実に立ち向かう姿を描いたドラマ『御上先生』が最終回を迎えたばかりの3 月下旬。同作は地上波のドラマながら社会の理不尽さに果敢に対峙し、その強いメッセージ性が多くの耳目を集めた。

「最近は自分のなかで、その作品に参加する意義みたいなものを意識しているかもしれません。たとえば自分の子どもが大きくなって、僕が出演した作品を観る機会があるかもしれません。観てくれたからには何か得るものがあってほしいというか、その子のためになるような作品に参加したいと思うようになりました。『御上先生』はもちろん、今回の映画『父と僕の終わらない歌』もそうですが、時を経ても『観てよかったな』と思ってもらえるような」

 現在公開中の映画『父と僕の終わらない歌』は、息子がYouTubeにアップした動画をきっかけに、アルツハイマー型認知症を患う80歳の父がCDデビューを果たすという奇跡の実話をもとに描かれた、音楽が紡ぐ家族の愛の物語。かつてプロの歌手を夢見たものの、息子のためにその夢を諦め、横須賀で楽器店を営む父・哲太を演じるのは寺尾聰。そして、すべてを忘れゆくかのような父を前に、不安に揺れながらも寄り添い続ける息子・雄太を松坂が演じる。

「実話をもとに作られているので、その方たちの人柄というか、親子の関係にとても惹きつけられました。親子だからといって、なんでも話せる関係ではなかったりもすると思います。そこがすごくリアルに描かれていますし、息子と父親ならではのちょっと特殊な関係性というか、娘と母親にはない距離感も『わかるなぁ』と。でも親子だからこそ、どんなことがあっても父に寄り添う雄太の姿にとても共感を覚えました。僕も年齢を重ねて、自分の親のことを考えると決して他人事(ひとごと)ではなく、誰にでも起こりうる話だと思ったんです。だからこそ、これはやるべき作品だと、ぜひ参加したいと、脚本を読んで強く思いました」

画像: 繊細なシェブロン柄が織りによって表現されたダブルブレストのウールジャケットと、同素材のツープリーツパンツ。パディングされた構築的なショルダーラインが力強さを感じさせる。 ジャケット¥520,300・シャツ¥280,500・パンツ¥225,500・ベルト¥70,400・靴¥181,500/ボッテガ・ヴェネタ ボッテガ・ヴェネタ ジャパン TEL. 0120-60-1966

繊細なシェブロン柄が織りによって表現されたダブルブレストのウールジャケットと、同素材のツープリーツパンツ。パディングされた構築的なショルダーラインが力強さを感じさせる。

ジャケット¥520,300・シャツ¥280,500・パンツ¥225,500・ベルト¥70,400・靴¥181,500/ボッテガ・ヴェネタ
ボッテガ・ヴェネタ ジャパン TEL. 0120-60-1966

 本作の見どころはなんといっても、寺尾と松坂、父と息子の心の交流だ。

「寺尾さんは、今回の出演交渉にもそれなりの時間がかかっているという話は伺っていました。僕が息子役なのであれば、とおっしゃっていたということを聞いて。とても光栄なのはもちろんですが、寺尾さんのなかで僕を息子として接するビジョンみたいなものが、もうすでに見えていたんじゃないかと思います。撮影に入る前に一度、寺尾さんのライブにも伺いました。あとはもう現場に入って、僕は寺尾さんについていくというか、寺尾さんの包み込むような温かさと、慈愛に満ちたまなざしに癒やされながら、親子として向き合う日々でした」

 そこにあるのは、いつまでも途絶えることのない父と息子の歌。そんな、終わらない歌を紡いでいくなかで、私生活においては親でもある松坂にとって、“父”として思うことはあったのだろうか。

「将来、僕が認知症になる可能性もありますし、ほかの病気にかかるかもしれない。どうなるかはわかりませんが、最終的にはやっぱり、自分の子どもには寄り添っていてほしい。寄り添ってほしいけれども、そこに至るまでの時間でどれだけ子どもと接することができるか、どれだけの愛を届けることができるか、それがすごく大事だと思っています。成長して社会人になれば、会う機会はどんどん少なくなるでしょう。実際に僕もこの仕事を始めてから、親より職場の人と過ごす時間のほうが圧倒的に多くなっていますから。どれだけ家族との時間を増やすことができるか、その時間に何を残してあげられて、子どもにとっての選択肢を増やしてあげられるか。それが親としての務めのような気がします。人生において親子の時間って、多いようで意外と少ない。改めて、家族で過ごす時間の大切さ、かけがえのなさを感じていただけたら、この作品に参加したかいがあります」

 そう語る彼に、これからの自身が目指す場所、未来への願望を聞いてみた。

「たとえばドラマの現場でご一緒するカメラマンさんやメイクさんなどは、僕が出演する作品の撮影だけを担当しているわけではないんです。実は並行してほかのジャンルの番組などでもお仕事されていたりして。ドラマの撮休日にはほかの現場に行かなければならない。そういう人たちの働く環境が少しでもよくなればいいなと思っています。それぞれに家族がいるわけで、その家族が安心できるような体制というか、何をすれば現状を変えることができるのかということは考えていきたいと思っています」

 俳優・松坂桃李はこれからも、さまざまな思いを胸に演じ続ける。時を超えて、そのメッセージが届くことを信じて。

画像: 松坂桃李(まつざか・とおり) 1988年、神奈川県生まれ。2009年に俳優としてデビュー。映画『孤狼の血』(2018年)で第42回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、『新聞記者』(2019年)で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。ドラマ『御上先生』(2025年)での主演も記憶に新しい。現在、寺尾聰と親子を演じた映画『父と僕の終わらない歌』が公開中。待機作に映画『フロントライン』(6月13日公開)。また2027年のNHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』で主演を務める。

松坂桃李(まつざか・とおり)
1988年、神奈川県生まれ。2009年に俳優としてデビュー。映画『孤狼の血』(2018年)で第42回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、『新聞記者』(2019年)で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。ドラマ『御上先生』(2025年)での主演も記憶に新しい。現在、寺尾聰と親子を演じた映画『父と僕の終わらない歌』が公開中。待機作に映画『フロントライン』(6月13日公開)。また2027年のNHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』で主演を務める。

画像: ©2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会

©2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会

映画『父と僕の終わらない歌』
大ヒット上映中
出演:寺尾 聰 松坂桃李
佐藤栞里 副島 淳 大島美幸(森三中)齋藤飛鳥 / ディーン・フジオカ 
三宅裕司 石倉三郎 / 佐藤浩市(友情出演) / 松坂慶子
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイトはこちら

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