韓国ドラマ『復讐代行人3 ~模範タクシー~』に出演している俳優・笠松将。韓国での記者会見や授賞式で韓国語を駆使し、自然にやりとりをする様子がSNSで話題にもなっている。快進撃が止まらない彼に、話を聞くことができた――

BY MARI KATSURA, PHOTOGRAPH BY EMIKO TENNICH

 日米合作シリーズ『TOKYO VICE』でも評価され、ハリウッドの大手エージェンシーCAAと契約。日本では個人事務所を設立し、『ガンニバル』『奥のほそ道 ―ある日本軍捕虜の記憶―』『グッドニュース』と、ボーダレスな作品で観る者を魅了し、勢いに乗る俳優・笠松将。今年1月10日に最終話が韓国で放送、日本でも同日配信された韓国ドラマ『復讐代行人3 ~模範タクシー~』でも、その存在感を存分に発揮し話題となった。

画像1: 規格外の俳優、笠松将が熱い! 
韓国ドラマは
「とても濃い撮影だった」

『復讐代行人 ~模範タクシー~』は、法で裁かれることのない悪に、タクシー会社の面々が、代行人となって復讐していく痛快ヒューマンドラマだ。ファン待望の2年ぶりとなったシーズン3、第1話の舞台は福岡からスタートし、笠松将や竹中直人がキャスティングされた。毎回ヴィラン(悪役)でゲスト出演する俳優にも注目が集まるのだが、ユン・シユンやチャン・ナラも出演するなど、そのシリーズ特有の世界観と魅力をスケールアップして視聴率も好調、海外配信でも話題となり、グローバルヒットを記録。主演のイ・ジェフンも、この作品で視聴者から「俳優としていただくことができる最高の愛を得た」といい、昨年末の3大ネットワークのひとつSBSが主催する「SBS演技大賞」でも、作品とイ・ジェフンが大賞に輝いた。この生放送の華やかな祭典に、急遽、笠松もプレゼンターとしてサプライズ登壇。流暢な韓国語でジョークも飛ばすなど、注目の的となった。実は海外の役者が登壇したのは彼が初めてだったとのこと。韓国での人気のほどが伺える。笠松さんは現在も韓国で、ノ・ジョンウィ、ITZYのリュジンらと、キム・ジョンフン監督による映画『ミョンド(原題)』の撮影に臨んでいる。その計り知れない才能をどのように昇華させていくのか。今後も目が離せない俳優・笠松にインタビューを行った。

――『復讐代行人3~模範タクシー~』のキャスティングのお話が来る前からこの作品をご存じでしたか?

笠松将(以下、笠松) タイトルは知っていましたけれど、作品はまだ観ていないタイミングでのお話でした。鑑賞後、僕の作風、ジャンル、タッチではないんじゃないかと思ったのですが、向こうの方々とお話しして、けっこう好きにやっていいという雰囲気だったので、やらせていただいたという感じです。

――元軍人で特殊部隊出身のタクシードライバー、キム・ドギを演じているイ・ジェフンさんとは、かなり長い時間を過ごされたのでは? 特に撮影時に面白いと感じたエピソードや感心したことなどはありましたか?

笠松 この作品は大人気のシリーズで、すごくエンターテイメントに振っている作品だと思うんです。イ・ジェフンさんは、観るお客さんのことをいちばんに考えて、どうしたら楽しんでもらえるかを、現場に入る前はもちろん、現場に入ってからも細かいところまで突き詰めていて。一緒の現場を体験できたのは、今までやってきた仕事のなかでもすごく新鮮でしたし、その部分はとても面白かったですね。バランスって難しいじゃないですか、エンターテイメントとアートのバランスって。だけど、彼はそのバランス感覚がいい方で、そこにすごくこだわっているのが、とにかく格好よかったですね。

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韓国ドラマは
「とても濃い撮影だった」

――そんなイ・ジェフンさんの姿を見て、役者として糧になったと感じることはありますか?

笠松 そうですね、そういう目線みたいなものですね。アートに寄せるってやりやすいんですよ、だけど、エンターテイメントに振り切りつつ(作品を)当てるって難しいと思うんです。エンターテイメントに振って当たらなかったらとても恥ずかしいじゃないですか。アートに寄せてあたらなくても、いや、この作品はアートに寄せてるから、わかる人がわかればいいんだって言えるんですけど。それがやっぱりとてもすごいと思いますし、その分だけプレッシャーだったり責任感みたいなものを現場で本当にバシバシ感じましたね。

――ジェフンさんは日本語のセリフがかなり多かったですね。アドバイスなさったのですか?

笠松 いえ、いえ、いえ、そんな、アドバイスすることなんて何ひとつ無かったです。とにかく現場でお芝居をしたという感じです。アドバイスをもらうこともなかったですし。でも、自分のやっていることにすごくプライドがある人間同士で一緒にやれたから、変に馴れ合うわけでもなく、逆に変にぶつかり合うわけでもなく、ただそこにいるだけという感じで、僕はすごく楽しかったですね、その空気感自体が。

――国の違いとかは、何か関係してくるのですか?

笠松 いえ、結局、人ですよね。どのくらいの強度でやっていいのかって、人によるじゃないですか。たとえば、こういう取材があって、とにかくビュー数がとれればいいっていう取材もあるじゃないですか。でもビュー数も大事だけれど、とにかく中身の濃い、10年後も20年後も読まれるものだって思って書いている人と、そうじゃない人とだと深さだったり強度って全然変わってくるじゃないですか? そこですよね。

 強度の高いものを追いかけている人たちと僕は一緒にやりたいし、そういう人としか一緒にできないから、そういう人と仕事ができた時はいいなって思う。アメリカでも韓国でも日本でも、そんなことない場合もあるだろうし。だからやっぱり、人ですね。どこにそういう人がいるかわからないけど、そういう人に出会いたい。なので、国とかは関係ないです。言語のズレみたいなもの、文化のズレみたいなものはもちろんあるんですけど、日本語同士でも、目標が違うと何言ってるかまったくわからないみたいなこと、ありますよね。その国の言葉が喋れるかどうかはあまり関係ないかもしれないです。同じ共通言語がもてるかどうか、ということかもしれないですね。

――福岡ロケでは撮影時以外でもキャストとの交流はありましたか?

笠松 それはなかったんですが、撮影中がとても濃いんで、細かいすり合わせのようなことはかなりやりました。ここはもっとテンポ上げようかとか、ここもっと逆に溜めていいですかというのを、言葉にしなくても、いろいろ試して探っているんだなと。語弊があるかもしれませんが、イ・ジェフンさんが食いにくるんだったらこっちもいきますけどっていう感覚でやっていたから。だから僕はすごく好きだし、イ・ジェフンさんもすごく認めてくれたんだなと思いました。

――アクションチームとの相性はどうでしたか? 韓国のアクションチームがほかと異なるところはどんなところでしょうか?

笠松 これもその人によると思うんですよ。チームの中でもその個人によると思うんですけど、今回のアクション監督さんはものすごく面白くて、2時間の練習って聞いていたのに、7時間やる、みたいな。2、3日の練習って聞いていたのに2、3週間やるみたいな感じで。でも何かやっぱり本気なんですよ、めちゃくちゃ。だから、とてもムカつきますよ(笑)。帰りの金浦空港にはシャワーがなくて(※練習スタジオにももちろんありません)、泥だらけの汗だくで。ちょっと体をほぐす程度って聞いていたから、僕、(予備の)靴も持っていかなくて。だから履いていたニューバランスのピカピカの靴がボロボロになって。

 そんな感じなんですよ、だけど、本気なんですよ。本気でやっているから、だんだんもう可愛く見えてきて。アクション監督のことをボスって呼んでいたんですけど、撮影でOKテイクがどんどん重なっていくとボスとの関係性もできてきて。でもやっぱりどこか可愛いんですよ、完璧じゃないから(笑)。「カースタントは俺がやるぜ」ってボスが現場に向かったから見てみたら、結構速度は遅いし、距離そんなに取るか?みたいな(笑)。それを言ったら「右ハンドルと左ハンドルが違うから」とか言い訳したり。でも、本気だったから僕は好き。今となっては、ですよ。

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韓国ドラマは
「とても濃い撮影だった」

――韓国のドラマや映画には、以前から興味があったんですよね?

笠松 それがね、好きだったんですよ。20代前半くらいの時にめちゃくちゃ好きで。でも映画ですね、どちらかというと。好きな映画は何ですかと聞かれたら、ほぼ韓国映画でした。最近は観てないんですが。

――韓国語が流暢で釜山映画祭でも注目され、韓国で人気が急上昇中です。人気を実感することはありますか?

笠松 よく聞かれるんですけど、実体がないですからね。韓国、アメリカ、日本での人気といっても実体がないから、今後どれだけ自分の出た映画のチケットが売れるか、配信でどれだけその作品が観てもらえるのか、というところでわかるんですかね。今のところ害もないけれど、いいこともないような感じです。

――人気の理想像はありますか?

笠松 僕がステージに出てきた途端、全員気絶する。観る側、個人ではなくて観る団体(そばにあった塊を指して)この団体にもリスクを背負って欲しいです。僕だけでなく、同じリスクを共有するから面白いんじゃないでしょうか。僕も死ぬ気でやります、そっちも死ぬ気で観てくださいみたいな。

――何かをあきらめようとしたこと、あるいは、あきらめてしまったこと、あきらめなくてよかったことがもしあれば教えてください。

笠松 日本で、正当なスターになるということを一回諦めました。無理だなと思いました。誰も悪くないんですけど。アメリカの作品と日本の大きい作品ってなった時に、当時はアメリカの作品に出るのを選んだんですよ。そのタイミングで当時所属していた事務所も抜けたので、日本の人気俳優みたいなのにはなれないんだろうな、と思いましたね。諦めなかったことは――(かなり考えた後)歯に挟まった胡麻とかあるじゃないですか、それって爪楊枝とか使えばすぐ取れるけど、それを、舌と口の中の水分だけで取ること。昨日まさに2時間ぐらいずっとやってました。なかなかの達成感がありますよ、やってみてください。

――今回の作品や『TOKYO VICE』『グッドニュース』「ガンニバル」など、縦横無尽にグローバルな俳優として活躍中ですが、プロデュースや企画に携わることに興味はありますか? これから叶えたいことはありますか?

笠松 (目の前に座るインタビュアー編集者を見ながら)今、動いてる企画があるのでミニマムで3億円ずつ出資してください。叶えたいこと、いちばん面白いことって、たとえば、すごい賞をいただくとか、たくさんお金をもらうとか、めちゃくちゃおいしいものを食べるとかってことじゃないと思うんです。僕が思うに、いちばん面白い事って、自分がすっごい背伸びしてグーッと手を伸ばして掴んだものなんですよ。多分、訳もわからないすごいものって、あんまりなんとも思わないんですよ。僕は今までそうで。で、それをみんなとやっているのが面白い。もちろん僕より年齢的にもキャリア的にも上の人もいるし、そういう人たちとみんなで背伸びして、手をグーッて伸ばして何かをみんなで掴んだときに、ずっと面白いんですよ。1年後も2年後も3年後もずっとその話ができるし、楽しめる時間がすごく長いんですよ。なので、みんなで背伸びして何かを捕まえるっていうことが叶えたいことです。

ー―ところで、私、『グッドニュース』のピョン・ソンヒョン監督にインタビューしたことがあるのですが、彼は天才ですよね!

笠松 おお~! はい、天才です、マジで天才ですよ。ピョン監督ってブラインドタッチできないの、知ってますか? 右手と左手の人差し指で台本を打ってるんですよ。で、保存の仕方がわからないから消しちゃうんですよ。充電とか切れるとワーッとか言って、また書くんですよ。ていう、本当の天才なんで。ピョンさん、すごいですよ、次の日朝8時から撮影なのに朝5時まで飲んでますからね。で、今日は俳優たちはみんな仕事だからこのくらいにしようって、5時まで(笑)......国際問題ですよ。

――ご自身のことも天才だと思いますか?

笠松 電気を発明した後のエジソンが天才というなら、僕は天才じゃないです。つけちゃいけないとこに火をつけちゃってボロボロに燃えた時に、母ちゃんが学校に一緒に謝りにいってくれたから、家族のことめっちゃ好きみたいなエジソンが天才っていうなら、僕は天才だと思います、うん。

画像: 笠松 将(SHOW KASAMATSU) 1992年、愛知県生まれ。21歳ごろから本格的に俳優として活動を始め、その後『花と雨』(2020年)で長編映画初主演。日米合作の話題作『TOKYO VICE(HBO max)』で注目を浴び、2022年、ロサンゼルスに本社を置く、世界最大級のタレントエージェンシー・CAAとの契約を発表。2023年からは個人事務所を設立し、リチャード・フラナガンによるブッカー賞受賞作を原作とするドラマ『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶』(製作/オーストラリア・アメリカ)への出演をはじめ、国内外へと活躍の場を広げている。 ニット・時計/本人私物

笠松 将(SHOW KASAMATSU)
1992年、愛知県生まれ。21歳ごろから本格的に俳優として活動を始め、その後『花と雨』(2020年)で長編映画初主演。日米合作の話題作『TOKYO VICE(HBO max)』で注目を浴び、2022年、ロサンゼルスに本社を置く、世界最大級のタレントエージェンシー・CAAとの契約を発表。2023年からは個人事務所を設立し、リチャード・フラナガンによるブッカー賞受賞作を原作とするドラマ『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶』(製作/オーストラリア・アメリカ)への出演をはじめ、国内外へと活躍の場を広げている。

ニット・時計/本人私物

画像: 笠松さんは第1話と第2話に出演 ©SBS

笠松さんは第1話と第2話に出演 ©SBS

画像: 元軍人で、特殊部隊出身のタクシードライバー、キム・ドギ役のイ・ジェフン ©SBS

元軍人で、特殊部隊出身のタクシードライバー、キム・ドギ役のイ・ジェフン ©SBS

画像: 撮影は福岡でも行われた ©SBS

撮影は福岡でも行われた ©SBS

画像: ユン・シユンも独特な魅力を放つ ©SBS

ユン・シユンも独特な魅力を放つ ©SBS

『復讐代行人3 ~模範タクシー~』(2025)
全16話
出演:イ・ジェフン、キム・ウィソン、ピョ・イェジン、チャン・ヒョクジン、ペ・ユラムほか
■Leminoにて独占配信中

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