TEXT BY CHIKAYO TASHIRO
『サラ・キムという女』
シン・ヘソンの存在感で魅せる傑作ミステリー
これは、一瞬たりとも目が離せない、スリルと虚飾に満ちた衝撃作です。顔の潰れた無惨な遺体が見つかるところから始まるミステリーですが、もう幕開けからしてゾクゾクします。一体この女は何者なのか……。そこから「サラ・キム」という謎めいた存在が浮かび上がってくるのですが、物語は私たちの予想を遥かに超える、とんでもない方向へと突き進んでいきます!

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見ていくうちに、「えっ、これって世の中を丸ごと騙すような、大胆不敵な大博打の話なの⁉」と気づかされるわけですが、そこからの二転三転がもうお見事! わずか8話という疾走感の中に、これでもかと衝撃の展開が詰め込まれていて、一気見必至の面白さです。何より深く考えさせられるのが、「見栄の文化」や「格付け社会」の闇。「ブランドって一体何なんだろう?」という問いが、ずしんと胸に響きます。実態がなくても、噂やキラキラした表面に人々が熱狂し、吸い寄せられていく……。そんな現代社会の空虚さを、皮肉たっぷりに、かつドラマチックに描き出しているのが本当に素晴らしいです。

主演のシン・ヘソン
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そして主演のシン・ヘソン! 彼女が演じる主人公が名前を変えるたびに、どんどんステージを上げていく、その演技が神がかっています。ブランドというきらびやかな世界を自らの手で作り上げ、それを何が何でも守り抜こうとする執念。その大胆不敵さと、ふとした瞬間に見せる人間の業、怖さ。彼女の圧倒的な存在感があるからこそ、この無謀ともいえる大勝負に説得力が生まれます。さらに、物語を盛り上げるのが刑事役のイ・ジュニョクとの対決シーンです。この2人の、一騎打ちのような、一歩も引かない攻防戦! 互いの腹を探り合い、ギリギリのところで火花を散らす空気感。もう、見ていて心臓がバクバクするほどの緊張感で、ゾクゾクが止まりません! 華やかなファッション業界の裏側に潜む人間の醜さと、美しさへの渇望。「何が本物で、何が偽物なのか?」その境界線が揺らぎ、崩れ去る瞬間を、ぜひ皆さまにも目撃していただきたいです。
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『親愛なるX』
清純派を覆すキム・ユジョンの鬼気迫る演技が圧巻
こちらは、類まれなる美貌と明晰な頭脳、そして他人を操る冷徹な本性を隠し持つソシオパスのヒロインが、自身の地獄のような不遇な生い立ちを背景に、のし上がっていく姿を描いた、ダークで退廃的な物語です。彼女は俳優として成功していく過程で、表向きは清純な美少女という「完璧な仮面」を被りながら、次々と関わる人々を破滅に追いやるという恐ろしさを持っています。主演を務めるのは、子役時代から活躍し『雲が描いた月明り』などでも知られるキム・ユジョンですが、本作ではこれまでの清純なイメージを覆す驚愕の「悪女」を演じています。闇を抱えたキム・ユジョンのダークな美貌と鬼気迫る演技は底気味悪く、目の見開き具合も怖いし笑顔すら恐ろしさを感じさせる圧巻の凄みで、その変貌ぶりに釘付けです。

主演のキム・ユジョン
©2026 Tving & Studio Dragon All Rights Reserved
そしてこのドラマの大きな見どころは、ヒロインを取り巻く「超豪華な俳優陣」です。彼女を幼少期から見守り、何があっても守り抜こうとする役のキム・ヨンデ、彼女の手下として汚れ仕事さえ厭わない役のキム・ドフン、男気が仇になり罠にはめられる役のキム・ジフン、そして同じ俳優事務所の人気俳優を演じるファン・イニョプなど、旬の俳優たちが次々と登場します。彼らがヒロインに魅了され、翻弄され、そして壊れていく様子がドラマに厚みを与えています。さらに、物語の終盤にはホン・ジョンヒョンが登場し、彼が演じるキャラクターの狂気を孕んだ演技も、作品の恐怖と緊張感を高める重要な要素となっていて、サイコパス対サイコパスの展開は斬新です。

キム・ユジョン(左)とキム・ヨンデ(右)
©2026 Tving & Studio Dragon All Rights Reserved
作品全体のトーンについては、東野圭吾の『白夜行』やフランスの小説『危険な関係』を彷彿とさせるような、退廃的でシリアスな雰囲気があります。ヒロインの容赦のなさが一貫していて、逆にあっぱれと思えるほど。独特の雰囲気があって目を離せない作品です。
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『こんなに親密な裏切り者』
天才プロファイラーが娘への疑念に揺れる
名優ハン・ソッキュ主演の心理サスペンスです。人の嘘を見抜くことに関しては天才的な国内最高のプロファイラーが、ある殺人事件を捜査していくうちに、「自分の娘が犯人かもしれない」という疑念に取り憑かれてしまう物語です。

主演のハン・ソッキュ(左)と娘役のチェ・ウォンビン(右)
©2024 MBC
このドラマの見どころにしてキーワードになっているのが「疑心」。「血を分けた我が子だからこそ信じたいけれど、疑わざるを得ない」という状況に置かれた親子関係の複雑な心理を克明に表現し、疑ってしまう心が一つの家族を崩壊させていくさまが緻密に描かれていきます。ハン・ソッキュ演じる「壊れていく父親」の、娘とうまくコミュニケーションできないもどかしさ、疑いに揺れてしまう震える視線、苦しい心情から絞り出すような吐息。彼が娘を疑う自分に絶望し、プロファイラーとしての理性が崩壊していく過程が、見ていて辛くなるほどお見事。そして、娘を演じた新人チェ・ウォンビンが本当に素晴らしいんです。謎めいていて、感情が読めない無機質な瞳で父親を翻弄していく姿は、まさに新スターの誕生を予感させます。いやがおうにもこの二人のあいだの緊張感に引き込まれて、一筋縄ではいかないストーリー展開にはまること必至です。

主演のハン・ソッキュ
©2024 MBC
家族だからといって理解し合えるわけじゃない。家族という名の迷宮にはまり込んでしまった彼らはどうすればよかったのか。極限の親子の心理戦を描いたこのドラマは、静かな部屋でじっくりと見ていただきたい大人のための極上ミステリーです。
■CS放送 衛星劇場にて2/12より放送開始
『我が家~嘘のかけら~』
心理カウンセラーの嫁と推理作家の姑がバディに
家族の中でも嫁と姑が最強のバディーを組むという、ひねりの効いたヒューマンミステリーです。主人公は、名声を得ている家庭心理カウンセラーで、キャリアも家庭のことも完璧な日常を送っている女性と、そんなできすぎの嫁が気に入らない推理小説家でもある姑。この二人の間には上流階級特有の、優雅ながらもどこかぴりついた緊張感が漂っていました。しかし、一見幸せに包まれたこの一家を不幸が襲ったことをきっかけに、家族のとんでもない秘密が次々に明らかになっていき、仲がいいとはいえなかった嫁と姑が、家族を守るために協力せざるを得なくなっていきます。

家庭心理カウンセラー役のキム・ヒソン
© 2024.Rednine Pictures.Co., Ltd. All rights reserved.
このドラマはその過程が面白くて、嫁は、家庭心理カウンセラーという職業を生かして、犯人の心の動きや隠された本音を読み解いていき、一方、姑のほうは、推理作家ならではの推察力を使って論理的に事件の謎を解き明かしていきます。「感情」で読み解く嫁と「論理」で攻める姑。反発しあいながらもそれぞれ補完し合いながら、結果的に戦友のような絆が芽生えて犯人を突き止めていくようになるんですね。

推理作家の義母役イ・ヘヨン
© 2024.Rednine Pictures.Co., Ltd. All rights reserved.
いったい誰が、何のために罠を仕掛けたのか、家族それぞれの「嘘」や「秘密」が物語を複雑にし、最後まで誰が味方で誰が敵なのか目が離せません。そうした謎解きの面白さとともに、家族の円満とは何なのか、家族の再生について考えさせられるドラマになっています。
■Prime Videoのサブスクリプション「Channel K」にて配信中
『悪の花』
夫の過去を知っても妻は信じ切れる⁉
妻と子供を溺愛し、裕福な親に恵まれている男が、本当は身分を入れ替えていて、殺人犯を父に持ち、自身も反社会性人格障害を抱え、殺人の容疑を持たれている人物だった…というサスペンスドラマ。ですが、その実、とてつもなく深い夫婦の愛が描かれた作品です。

主演のイ・ジュンギ(中央)とムン・チェウォン(右)
© STUDIO DRAGON CORPORATION
この男の妻は刑事で、男の過去を知らずに結婚したのですが、あることをきっかけに自分の夫が連続殺人犯なんじゃないかと疑惑を持ってしまいます。妻のほうは、愛に包まれた完璧な家族だと信じて疑っていなかったのに、夫の過去を知って夫を信じ切れるのかという展開に。一方、夫のほうは、「自分には感情がないので、愛なんてわからない」と思い込んで、作り笑いと偽のやさしさで妻をだまして生きてきたつもりなのですが、身バレしそうで追い詰められた状況でも、彼女に危険が迫れば体が反射的に動いて助けてしまうのです。根っこの部分では愛が溢れているのに、それを自分で認められない不器用さが何とも不憫でたまらなく、男を演じたイ・ジュンギの抑制の効いた演技の美学が光っています。

主演のイ・ジュンギ(左)とムン・チェウォン(右)
© STUDIO DRAGON CORPORATION
つまり、このドラマは、「犯人は誰か?」を探るだけの作品ではなく、「愛を知らないと思い込んでいた男が、自分の中の愛に気づいていく過程」を丁寧に丁寧に描いた物語なわけです。それを象徴するように、一連の事件は一応15話で解決しますが、最終回は男の自分探し的な話になります。愛によって救われ、人は変わっていけるというテーマが最後の1話に集約されていて、一人の男性が妻の愛で自分自身を取り戻し、再生していく物語として完璧に描き切っていることに拍手です。
■U-NEXTにて配信中
田代親世 韓流ナビゲーター
韓流解説、韓流イベント司会の第一人者。公式サイト「田代親世の韓国エンタメナビゲート」やYoutube「ちかちゃんねる☆韓流本舗」「韓ドラ・マスター親世と尚子の感想語り」などで韓流情報を発信しているほか、会員制のコミュニティ【韓流ライフナビ】を主宰。ツアーやイベントを企画・開催している。
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