世界から熱い視線が注がれる日本映画。その魅力を未来へどうつないでいくのか。エイミー・ホンマ、二宮和也、村田千恵子が集ったケリング「ウーマン・イン・モーション」で交わされた、映画の現在と未来をめぐる言葉を届ける

BY NATSUE HANAWA

画像: (左から)映画プロデューサーの村田千恵子、歌手・俳優の二宮和也、アカデミー・ミュージアム・オブ・モーション・ピクチャーズ館長兼プレジデント、アカデミー・コレクション統括責任者のエイミー・ホンマ、オープニングスピーチを行った是枝裕和監督

(左から)映画プロデューサーの村田千恵子、歌手・俳優の二宮和也、アカデミー・ミュージアム・オブ・モーション・ピクチャーズ館長兼プレジデント、アカデミー・コレクション統括責任者のエイミー・ホンマ、オープニングスピーチを行った是枝裕和監督

 10月27日、第39回東京国際映画祭の提携企画として、ケリング「ウーマン・イン・モーション」トークがTOHOシネマズ 六本木ヒルズで開催された。日本では9回目となる今回は、アカデミー・ミュージアム・オブ・モーション・ピクチャーズ館長兼プレジデント、アカデミー・コレクション統括責任者のエイミー・ホンマ、歌手・俳優の二宮和也、映画『国宝』を企画・プロデュースした映画プロデューサーの村田千恵子が登壇。日本映画の現在地と未来、そして映画文化を支える多様性や創造性について語り合った。

 オープニングスピーチには、昨年に続き映画監督の是枝裕和が登場。「日本映画って面白いよね」という声を海外で耳にすることが増えたと語り、若い監督たちが作品を海外の映画祭へ届けてきた積み重ねに言及。一方で、アートハウスやミニシアターが減少する現状を挙げ、映画文化をどう守り、次世代へつないでいくのかという課題を投げかけた。

世界から見た日本映画、その魅力とは

画像: 世界から見た日本映画、その魅力とは

 最初のテーマは「世界から見た日本映画と日本らしさ」。『国宝』を携え、カンヌ国際映画祭やアカデミー賞のキャンペーンを経験した村田千恵子は、海外で受けた評価について振り返った。

村田千恵子(以下、村田):アカデミー会員の方たちに観てもらい、フィードバックをもらうと、職人技術の高さをすごく評価していただいたんですね。衣装や美術、俳優部門など、同業者の方に技術の高さを評価していただけて、それが日本らしさにつながるのかなと。緻密なものを作る、手先が器用みたいなところなのかなと思っています。

 この意見にエイミー・ホンマも深く共感する。

エイミー・ホンマ(以下、ホンマ):職人技を含め、そういったものを通して日本の芸術から感銘を受けていました。歌舞伎もそうですが、ヘアメイクの技術など、『国宝』を通してすごく日本の伝統を感じることができました。

 そして俳優の立場から二宮和也も、『国宝』への率直な思いを口にした。

二宮和也(以下、二宮):俳優側はもちろんみんな『国宝』を観ていましたし、あれだけ作品に参加したかったと思える作品は久しぶりだったんじゃないかな。

『硫黄島からの手紙』でベルリン国際映画祭、昨年は『8番出口』でカンヌ国際映画祭を経験した二宮は、この20年で日本映画への視線が変化したことも実感しているという。

二宮:『浅田家!』がフランスの方にたくさん観ていただいたという話は聞いていたものの、実際に体感はなくて。(映画祭の)現場で“面白かったね”という言葉をいただいた時に、“あの話は本当だったんだ”と初めて感じました。日本らしさというのは、ミニマムな空間や展開がすごく得意なところなのかな、と思っています。抽象的な表現の手数が多い国なのかなと。

多様な人が力を発揮できる環境へ

 トークは、当事者ではない人が当事者に寄り添い支援する「アライシップ」へと展開。女性がより力を発揮できる環境について、3人それぞれの立場から意見が交わされた。

ホンマ:私自身、いろんな決断をする立場として、皆を率いる立場として、力を持たせていただいているわけですから、思いを分かち合いたいですし、他の女性たちのことにも目を配りながら仕事をしていきたいと思っています。

 さらに10年後の日本映画界について、村田は子育てをしながら働く人たちが置かれた環境に言及した。

村田:子供が熱を出して仕事を休まなければならないような場面に直面することもあると思います。そういった時に、産休や育休だけではない、もう少しゆとりを持って働けるような制度や環境が整ったらいいなと。

画像: 多様な人が力を発揮できる環境へ

映画という「共通言語」を未来へ

 話題はさらに、映画文化を次世代へどう継承していくかへ。ホンマはアカデミー・ミュージアムで黒澤明監督作品をフィルム上映した際、若い観客が上映の何時間も前から列を作ったというエピソードを紹介した。

ホンマ:アカデミー・ミュージアムでは、映画の裏側をお見せすることができます。その舞台裏ではどのような方達が映画に貢献したのか、そのストーリーを見ることができます。それが、未来の作り手たちのインビテーションになっているのではないかと考えています。

 これを受け、二宮和也も映画が世代や立場を超えて人を結ぶ力について語った。

二宮:性別や年齢、生きている時間や職種も違う中で、映画という共通言語の中で通じ合えるのは、エンタメ以外で考えにくいものだと思いますし、劇場体験をするというのは重要ですよね。

 そして最後に、次の世代へ向けた思いをこう語った。

二宮:とにかく、良い作品で良いお芝居をして、“あの作品を観て映画業界に入りたいと思ったんです”と言ってもらえるような環境を作っていきたいなと思います。

画像: 二宮和也は数々の話題作への出演経験をふまえて、俳優の立場から映画界の未来と希望を語った

二宮和也は数々の話題作への出演経験をふまえて、俳優の立場から映画界の未来と希望を語った

 2015年にカンヌ国際映画祭で創設されたケリング「ウーマン・イン・モーション」は、芸術や文化の世界に残るジェンダー格差に光を当て、多様な才能や声を支援してきた。映画から写真をはじめとするさまざまな芸術分野へと活動を広げ、対話の場を生み出し続けている。

 世界から日本映画への視線が熱を帯びる今、何を守り、何を変え、未来へと手渡していくのか。作り手、俳優、そして映画文化を保存し伝える立場という異なる視点が交差することで、日本映画のこれからが立体的に浮かび上がるトークとなった。

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF KERING

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