なぜ、モード界の中心はパリなのか。ムッシュ ディオールが世に生み出し、創り上げたものとは――? 作家の原田マハが、パリで開催中の『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』展を訪れ、長年の問いへの答えを見いだす

BY MAHA HARADA

 私は、ディオールがいかにして<ムッシュ ディオール>となったか、その経緯を本展で詳しく知った。そして、彼がメゾン設立後に解き放たれた鳥のごとく、自由闊達に創造の翼を羽ばたかせた理由がわかった。もともと彼が持ち得た豊かな感性、エレガンス、美への希求は、財政難、戦争、占領下でのデザインというネガティブな出来事によって抑圧されてしまった。戦争が終わり、パリが不死鳥のように蘇ったとき、彼のクリエイションの芽吹きを止めるものはもう何もなかったのだ。ディオールが自らのメゾンでデザインの指揮を執ったのはわずか10年。が、その短いあいだに20世紀のモード史に残る名作の数々を生み出した。展覧会では、ディオールのデザインによるため息がでるほど美しいピースを、「コロラマ(カラフルなミニチュア・コレクション)」「トリアノン(プチ・トリアノンを舞台にした展示)」など、凝った演出で堪能するとともに、彼の後継者たち――イヴ・サンローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、マリア・グラツィア・キウリ─のデザインによるピースも、時代を超えて並べられ、さながら知的な遊園地のようだ。私たちは、いつしか時を忘れて美の森に遊び、モードの花畑を舞い飛ぶ蝶になる。

画像: (左から)1958年春夏 イヴ・サンローランによる「Bonne Conduite」ドレス、1961年秋冬 マルク・ボアンによる「Gamin」スーツ COURTESY OF LES ARTS DÉCORATIFS / NICHOLAS ALAN COPE

(左から)1958年春夏 イヴ・サンローランによる「Bonne Conduite」ドレス、1961年秋冬 マルク・ボアンによる「Gamin」スーツ
COURTESY OF LES ARTS DÉCORATIFS / NICHOLAS ALAN COPE

画像: (左から)1992年春夏 ジャンフランコ・フェレによる「Palladio」ドレス、1998年春夏 ジョン・ガリアーノによる「Shéhérazade」アンサンブル COURTESY OF LES ARTS DÉCORATIFS / NICHOLAS ALAN COPE

(左から)1992年春夏 ジャンフランコ・フェレによる「Palladio」ドレス、1998年春夏 ジョン・ガリアーノによる「Shéhérazade」アンサンブル
COURTESY OF LES ARTS DÉCORATIFS / NICHOLAS ALAN COPE

画像: (写真左から)2012年秋冬 ラフ・シモンズがデザインしたドレス、2017年春夏 マリア・グラツィア・キウリによる「Essence d’herbier」カクテルドレス COURTESY OF LES ARTS DÉCORATIFS / NICHOLAS ALAN COPE

(写真左から)2012年秋冬 ラフ・シモンズがデザインしたドレス、2017年春夏 マリア・グラツィア・キウリによる「Essence d’herbier」カクテルドレス
COURTESY OF LES ARTS DÉCORATIFS / NICHOLAS ALAN COPE

 なぜパリがモード界の地軸であり続けたのか。その答えを胸に抱きしめて、私は会場を後にした。─なぜって? なぜなら、ムッシュ ディオールがいたから。ディオールという強烈な磁力、ふるえるほどのエレガンス、真実のクリエイション。モードがパリを去るわけにはいかないのだ。ムッシュディオールが遺した花が、いまなお咲き誇るこの街を。

画像: 「コロラマ」より"黒"のコレクション。香水のボトルやパッケージ、ジュエリーやシューズや、ミニチュアのドレスなど。ディオールが描き出す、優美で典雅な黒の美を堪能 PHOTOGRAPH BY ADRIEN DIRAND

「コロラマ」より"黒"のコレクション。香水のボトルやパッケージ、ジュエリーやシューズや、ミニチュアのドレスなど。ディオールが描き出す、優美で典雅な黒の美を堪能
PHOTOGRAPH BY ADRIEN DIRAND

クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ
会期:~2018年1月7日(日)
会場:パリ装飾芸術美術館
公式サイト

 

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