BY JUN ISHIDA, PHOTOGRAPHS BY KENSHU SHINTSUBO, STYLED BY NAOKO SHIINA, HAIR BY KIYOKO ODO(kiki), MAKEUP BY UDA(mekashi project), MODEL BY KIKO ARAI(Donna)

宇宙や森羅万象を表す黒い糸。
個々の人間の存在を超えて、黒い糸は空間に秩序をもたらす

≪内と外≫(2008年/2019年)
人間の体をとり囲む壁やドアや窓は第三の皮膚。塩田は、ベルリンの壁の崩壊から15年後、再開発に伴い廃棄された窓枠を集め歩いた。打ち捨てられた約230枚の窓枠は、そこに住んでいた人とかつてあった壁の不在へとつながる
―― 作品制作はどのように行うのですか?
S ベルリンのアトリエでは材料を作るだけです。展覧会を行う現地にすべてを持ってゆき、今回は11日間かけて糸を編みました。いちばん苦しいのは、イメージが形になるときですね。心が形になるときというか。できるだけイメージを頭の中で温めて、人に伝えるときに初めてスケッチを描きます。
―― 糸を編む意味とは?
S 糸は心を映し出します。うまくいかないときは絡まるし、全部解けたあとはスッキリする。また糸は人間関係も表していて、関係性が切れたりつながったり。糸の線が重なって見えなくなったときに作品が完成します。展覧会が始まれば、作品は一人歩きしてゆきます。見る人が、作品と対話をして魂を触れ合わせてくれれば、「魂ってどこ?」という問いへの答えも自分の中に出てくるのではと思っています。

≪集積―目的地を求めて≫(2014年/2019年)
赤い糸で吊るされた約440個のスーツケース。蚤の市で見つけたスーツケースは震え、カタカタと音を鳴らす。それは見知らぬ土地へと旅立つ人の、あるいは故郷へと帰る人の胸の高鳴りを表すようだ
※下記の展覧会はすでに終了しています
『塩田千春展:魂がふるえる』
ベルリンを拠点に世界的に活躍する現代美術作家、塩田千春の展覧会。初期作品から代表作、新作を含め25年にわたるアート活動を網羅する
会期:〜10月27日(日)
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53階
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)、ただし10⽉22⽇(⽕)は22:00まで(最終⼊館 21:30)
無休
料金:一般¥1,800、学生(高校・大学生)¥1,200、子供(4歳~中学生)¥600、シニア(65歳以上)¥1,500
公式サイト