ウォッチジャーナリスト高木教雄が、最新作からマニアックなトリビアまで、腕時計にまつわるトピックを深く熱く語る。第11回は、リバイバルを果たした「パシャ ドゥ カルティエ」。カルティエによる防水時計の伝統を受け継ぎ、新生パシャは新たな時代の扉を開く

BY NORIO TAKAGI

 腕時計はまず、女性用のアクセサリーのひとつとして誕生した。その現存する最古の記録は、とある時計メゾンの1810年の台帳にある「ブレスレット用のリピーターウォッチ」との記載。またフランスを代表する高級宝飾店「カルティエ」も、1888年から時計を組み込んだジュエリーのブレスレットを販売していたという。そして1904年、3代目ルイ・カルティエが、友人である飛行家アルベルト・サントス=デュモンのために製作した「操縦中でも時間が確認しやすい腕に着けられる時計」によって、本格的な男性用腕時計の時代が開かれた。

 最初から腕に着けることを想定して開発された時計のケースに、ルイ・カルティエは角型を選んだ。何故なら、懐中時計にはなく、腕時計には不可欠な腕に留めるためのストラップとケースとを美しく調和させるため。以降ルイ・カルティエは、実に多彩なケースのフォルムを想像してゆく。トノー(樽)型、トーチュ(亀)型、八角形、楕円形などなど。そんなカルティエに1985年、丸型時計のアイコンが生まれた。メゾン初のラグジュアリー・スポーツウォッチ「パシャ」である。オーソドックスな丸型にもかかわらず、パシャはカルティエらしい独創的なディテールをいくつも持っていた。

画像: 1985年に発表された初代パシャ。18KYG製のケース径は38mmで、逆回転防止ベゼルを備えていた MARIAN GÉRARD, COLLECTION CARTIER © CARTIER

1985年に発表された初代パシャ。18KYG製のケース径は38mmで、逆回転防止ベゼルを備えていた
MARIAN GÉRARD, COLLECTION CARTIER © CARTIER

 最大の特徴は、ケースにチェーンでつながれたスクリュー式のリューズキャップ。ストラップは、一般的な対になったラグではなく、プレートにビス留めする構造とし、ルイ・カルティエの時代から模索してきたケースとの一体感が図られている。丸いダイヤルの中央に四角い線路型分目盛を置き、四方向にやはりカルティエでは珍しいアラビア数字を配した様子は、実にエレガントである。アイコニックで美しい外観によって、パシャは瞬く間に大ヒットを遂げる。そして多彩にバリエーションを増やしていった。しかし残念ながら現行にあるのは、27mmの小ぶりな「ミス パシャ」のみ。男性でも着けられる大型のパシャは、2010年代に姿を消している。

 それが2020年代の幕開けとなった今年、ついに復活を果たした。コレクション名は「パシャ ドゥ カルティエ」。バリエーションは、実に豊富だ。ベーシックな三針だけでも41mmとジェンダーレスで使いやすい35mmをラインナップ。41mmはSSとYGが、35mmはSSとPG、ジュエリーセットモデルが選べる。いずれも防水性能は、100mと高い。これがパシャたるゆえん。その名は、カルティエの防水技術確立に関するエピソードにまつわっているからだ。

画像: カルティエ「パシャ ドゥ カルティエ」¥1,764,000(予価)※ 2020年9月発売予定 <ケース径41mm、18KYG、自動巻き、アリゲーターストラップ> 41mmは、日付表示を装備。イエローゴールドのケースは、初代パシャの面影が最も色濃い。ブルーとグレーのストラップが付属する © CARTIER

カルティエ「パシャ ドゥ カルティエ」¥1,764,000(予価)※ 2020年9月発売予定
<ケース径41mm、18KYG、自動巻き、アリゲーターストラップ>
41mmは、日付表示を装備。イエローゴールドのケースは、初代パシャの面影が最も色濃い。ブルーとグレーのストラップが付属する
© CARTIER

 

This article is a sponsored article by
''.