舞台の上をダイナミックに舞い、高らかに歌い上げるその姿で多くのファンを魅了する柚希礼音。多様な役柄に果敢に挑み、唯一無二のオーラを放つ俳優が、最新のモードを軽やかに着こなす

BY SATOKO HATAKEYAMA, PORTRAITS BY YOSHIYUKI NAGATOMO, STYLED BY FUSAE HAMADA, HAIR BY JUN GOTO(OTA OFFICE), MAKEUP BY NOBUKO MAEKAWA(PERLE)

 朝から晩まで芸事を習えることが嬉しくて、演じる楽しさに開眼するも、男役のスターに憧れて入ったわけではないので完成形がわからない。試行錯誤で自分なりに演(や)ってみても、時に上級生からは「宝塚らしくない」と言われもした。先輩たちのまねではない自分のスタイルとは何か。星組の男役トップに上りつめても、理想の男役を探し、追い求める日々だったという。

「どんな男役になりたいのか、自分でもわからないでいたんです。ただ、お客さまは夢の世界を観に来てくださるけれど、演じる役柄の感情は本物じゃないと感動が伝わらない。そう思って本来の自分を動かしていったら、自分自身と柚希礼音、そして作品の役柄が、だんだんと近づいてくる感覚がありました。先輩方や演出家の先生にご指導いただいたものと、ストレートプレイの両方を照らし合わせることで、大仰な言い回しも自分のものにでき、納得のいく男役を積み上げることができました」

 真から男になろうとして演じていたわけではなく、そこにはリアルな「自分」が常にあったと語る柚希。退団する際、多くの人から「もう自分に戻れますね」と言われたときも、その実感は薄かったという。その半面、その後の舞台で女性の役柄を自然に演じられたかというと、そうはいかないのが演技の難しいところだ。

「初めて芝居を習ったのが男役だったので、舞台の上での歩き方や所作まで、すべてを変えていく必要がありました。男でも女でもなく『人間』として役を考えるのだと思っていたのに、初めてスカートで舞台の上に出されたときの居てもたってもいられない気持ちは、初めて宝塚で男役を演じたときの違和感と同じ。だったら男性役は楽に演じられるのかというと、以前の自分をなぞるだけでは新鮮さがなく、それもまた違う。まっさらな場所から始めないといけないので今でも難しいです」

 性別はもちろん、異なる時代や場面をも自分なりに咀嚼して演じきるには、自身の基点となるべき軸をどこに置くかに尽きるのだろう。そして、その軸をブレずにまっすぐ通しているものは何なのか。柚希は自身の場合を「心の高まり」と表現する。

「もともとバレエが好きでしたけれど、芝居や歌を学ぶことによりバレエも変わり、またその逆もしかり。研鑽し続けていくことによってそれぞれが研ぎ澄まされていき、心の高まりを表現するすべてになるのだと思います。私の場合は宝塚で基礎をたたき込まれたことが、自分軸の芯となっているし、ここからまたいかにして心を高めていけるかが、大きな課題なのです」

 花の軸は強くて太いほど、大地から吸収した水やミネラルを各所へ運び、瑞々(みずみず)しく青々とした葉をつけ、鮮やかな大輪の花を咲かせるものだ。今年6月には、2018年に好演し、当たり役とも言われたミュージカル「マタ・ハリ」の再演が決定している。コロナ禍での充電期間を経て、ますます進化した柚希礼音のダイナミックかつ繊細な演技に、期待は大いに高まる。

柚希礼音(REON YUZUKI)
大阪府生まれ。幼少時よりクラシックバレエを習い、1997年に宝塚音楽学校に入学。’99年に85期生として宝塚歌劇団に入団、同年10月に星組に配属。2009年に星組トップスターに就任し、’15年の退団まで6年間トップを務める。その後はミュージカル、舞台を中心に多くの作品に出演。2021年6月より、東京、大阪、愛知の三都市でのミュージカル「マタ・ハリ」の再演が決定。最新情報は、reon-yuzuki.jp

画像: PHOTOGRAPH BY MAI SHINYA(STILL)

PHOTOGRAPH BY MAI SHINYA(STILL)

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