BY NANCY HASS, PHOTOGRAPH BY PHILIP CHEUNG, STYLED BY ALI GALLAGHER, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
シャープなアングルであろうと優雅な曲線であろうと、モダンなデザインとは、凝りすぎた表現や過剰な装飾に語らせずに、本質のみを表現するものである。モダンであるということは、ある意味、その存在の本質を世にさらけ出すことなのだ。ブルガリの新作ジュエリーは、まさにその好例と言える。この三連チョーカーは、ポストモダン論が隆盛な1980年代を思い起こさせるとともに、現世を超越したクレオパトラの時代のエジプトの装身具のようにも見える。中心となるのは、3つの堂々たる透き通った半円の石―― 甘美な魅力をたたえたザクロピンクとパルムグリーンのトルマリンに、澄んだカリビアンブルーのアクアマリン。この3つの石にはカボションカットが施されている。
有史以前から存在した、宝石の色そのものを引き立てる加工法であり、いつの時代にもコンテンポラリーな印象を放つが、実はファセットカットよりも昔からある技法である。貴石がセットされたピンクゴールドは、ブランドのシグネチャーであり、インダストリアルデザインの先駆けでもある“トゥボガス”――20世紀初頭の地中のガス管をモチーフに、はんだを使わずに制作されるしなやかなコイル状のバンド―― を用いて、円環を重ねている。このジュエリーには、明るい未来の兆しが感じられる。これは、あらゆる時代において、とりわけ今の時代にこそ、スーパーヒーローのデコルテを飾るのに最もふさわしいアミュレット(お守り)なのだ。
STYLIST’S ASSISTANT: JUSTIN FRY
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