BY SATOKO HATAKEYAMA, PHOTOGRAPHS BY YASUTOMO EBISU, STYLED BY NAOMI SHIMIZU, HAIR & MAKEUP BY HIROKO ISHIKAWA(eek)
画面に登場すると、ついその姿を目で追ってしまう。役どころはさまざまだが、物語に奥行きを添える佇まいからいっときも目が離せない。江口のりこはユニークな輝きを放つ俳優だ。正義を貫く国務大臣、ひと癖もふた癖もある学園理事長、はっきりとモノを言いすぎるバイリンガルなど、話題となった役柄が、現代的な強さをもつ理知的な女性というのも胸がすく。
本人にもそういう側面があるのかと撮影後に軽く問うてみると「まったくないですね」と、即座に否定されてしまった。「自分が現代的だとか、強さをもって役を演じているとは考えたことがありません。お酒が強そうとは言われますけど飲まないし、愚痴や文句もよく言うし、性格も強くない。たまたま個性の強い役を演じることが多かったので、そういう印象をもたれているんだと思います」
バサッ、バサッと歯切れよく答えるさまは彼女が演じてきた役柄にも重なるが、19歳で劇団に入団して以来、自分自身は何も変わっていないと繰り返す。憧れの俳優がいたわけでも、特別なターニングポイントがあったわけでもない。「面白い芝居をしたい」という気持ちだけが、この仕事を続けさせているのだとも。
「あの役が、この作品がやりたいという願望も特になく、目の前の役をやり、あぁ難しいなと思って、次の役をやる。その繰り返しです。やりきったという達成感もなく、芝居をすることだけが続いていく。満足したことが一度もないから、続けてこられたのかもしれないです」
傷つくから見ないようにしていたという出演作も、最近は見るようにしているというが、その理由が「やっぱりちゃんと傷ついていったほうがいいな、と思って」というのがまた彼女らしい。過度に自分を盛ることをしない、まっすぐな正直さは小気味いいほどだ。次回作も「江口のりこ」の存在にどっぷりとハマりそうだ。
江口のりこ(NORIKO EGUCHI)
1980年兵庫県生まれ。1999年に劇団東京乾電池に入団。2002年の映画デビュー以来、ドラマ、CM、映画に多数出演。2021年には第44回日本アカデミー賞で優秀助演女優賞を受賞。10月開始のドラマ『SUPER RICH』(フジテレビ系・木曜22時)にて主演を務める。10月20日(水)より上演の舞台『Home, I’m Darling〜愛しのマイホーム〜』、11月3日(水)公開の映画『川っぺりムコリッタ』に出演。2022年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では源頼朝の愛妾を演じる