BY RYO YAMAGUCHI, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO
20世紀の初めころ、西欧、とくにフランスやベルギーを中心として起きた美術の中に、アール・ヌーヴォーがあります。日本や中国などの美術に大きく影響を受け、流れるような曲線、左右非対称、動植物などの奇抜な具象のデザインを特徴とし、美術の様々な分野で広まりましたが、中でもジュエリーでは多くの名作が残されています。こうしたジュエリーは、その後の戦争やら過度の大衆化、工業化が進む中で消滅しますが、今また日本から、日本人ならではの素材、技術、デザインを生かした新しいジャポニスムともいうべきジュエリーが生まれようとしています。その多くは、大きな宝石店やメーカーのものではなく、一人ひとりの作家がコツコツと作っているもので、量産などとは程遠いものです。そうした作家たち四人を選び、ここにその作品と共にご紹介します。どうか隠れた名作家たちを応援してください。
大倉 仁さんーー多様な素材で、新しいジャポニスムを追求する
大倉さんは、神田にあって日本屈指のジュエリー工房、その精密なつくりで知られるマイエドール社の二代目です。彼は親から工房を引き継ぐと、宝石店のためにジュエリーを作り続ける一方で、自分のブランドとなる新しいジュエリーの創造を思い立ち、2009年にOKURADOを立ち上げます。彼が目指したのは、文字通りネオ・ジャポニスムともいうべき、日本固有のデザインと技術を活かしたジュエリーでした。今回ご紹介する四人のなかで最もストレートに、日本の香りが立ちのぼる作品が中心です。自分の工房だけではなく、日本の各地で活躍する伝統工芸のクラフトマンたちにも頭を下げて制作を頼むという、おおらかさも特徴です。
椿という花は日本原産で、海外でも人気の高い花です。OKURADOの椿は紅白ありますが、赤い方は鮮明な赤の漆を使い、白の方はなんと白サンゴを使っています。このぬめりのある白や赤の色は、ダイヤモンドやルビーを使ったのでは絶対に出ない日本ならではの色使い、さすがです。
飾りのついた窓枠を通して見たモノトーンの花のネックレスも、洗練された作品です。白と黒という、このうえないシンプルな色使いと、全てが曲線というデザインで、これだけの表情をだせる。それこそがネオ・ジャポニスムといえるでしょう。
問い合わせ先
ジュエリーコンシェルジュ大倉
TEL. 03-3524-8187
公式サイトはこちら