BY MEGAN CONWAY, PHOTOGRAPH BY EMILIO NASSER, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
2002年にルイ・ヴィトンが発表したウォッチ「タンブール」。ドラム形ケースにちなんで名づけられ(タンブールはフランス語で「太鼓」の意味)、がっしりとした厚みのあるこの腕時計は、発売以来比較的変化がないままだった。しかし2021年、ラグジュアリー・コングロマリットLVMH社の会長兼CEOであるベルナール・アルノーの末息子、ジャン・アルノーが24歳でこのフランスメゾンのウォッチ部門のディレクターに就任。そのとき彼には、ある計画があった。それは、彼の言うところの「こだわりある本物の時計ブランド」を構築するための一環として、現行モデルのうち約130種を廃番にし、いくつかの定番製品を新しくデザインし直すことだった。彼がリーダーシップをとるようになって最初の大きな動きのひとつが、この新生「タンブール」の発表だ。
よりスリムに、よりなめらかなデザインになったユニセックスタイプのスポーツウォッチで、ジュネーブにあるルイ・ヴィトンのウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン(La Fabrique du Temps LOUIS VUITTON)」にて、2 年以上の歳月をかけて開発された。ステンレススチール、K18イエローゴールド、K18ローズゴールドのケースにグレー、ブルー、ブラウンの文字盤を組み合わせた5 モデルの展開。ケースとブレスレットを連結する大きなラグをなくし、両者が巧みに一体化された構造となっている。サンドブラスト仕上げのベゼルの側面、アワーマーカーの位置にひと文字ずつ刻印された「LOUIS VUITTON」の12文字も、同様に精巧な仕上がりになっている。
目指したのは、厚みのあるデザインで知られた腕時計を、ドレスシャツのカフスの下にも着用できるほど薄くすること。時代の変化にふさわしく、さりげなくラグジュアリーのシンボルとなるようなウォッチだ。
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