BY T JAPAN

©LOUIS VUITTON
4月12日、「大阪・関西万博2025」が開幕した。それに先立つプレスデーに、数あるパビリオンの中から、フランス館を訪れた。
真新しい夢洲駅の改札を抜けて、万博会場の東ゲートをくぐると、少し先にさっそく建築家・藤本壮介の設計による「大屋根リング」が見えてくる。この万博を象徴する外周2km、高さ20mの木造建築は、その上に立てば万博会場全体を見渡すことができ、藤本氏が「一つの空をみんなで共有したい」と語る通り、遮るもののない広い空がどこまでも続く。リングのあちら側ははるか遠く、その規模感にまずは圧倒される。
リングの下を通り抜けると、すぐ目の前に現れるのがフランス館だ。巨大なカーテンに覆われたようなファサードの中央に、ピンクメタリックに輝くスロープ。斬新なデザインが目を引くが、環境に配慮し、各部材は再利用を前提に設計、屋根は緑化され、厳しい夏の暑さを遮る役割も果たす。
内部に足を踏み入れると、火災に見舞われたパリのノートルダム大聖堂で奇跡的に残されたキメラ像が、宮崎駿監督の映画『もののけ姫』からインスパイアされたという「呪いの傷を癒すアシタカ」のタペストリーと向き合う詩的な序幕からスタート。これは建築遺産も豊かな自然も、等しく守るべきものだというメッセージを伝え、「いのち輝く」と謳う万博のテーマに呼応する。
異世界へ迷いこんだようなアプローチを進むと、やがて現れるのは四方の天井までをルイ・ヴィトンのトランクに覆いつくされた迷宮だ。トランクの一つ一つに映し出されるのは、それを創る職人たちの精緻な所作。そして空間の中央、また会場内のそこここに配され来訪者を誘うのは、オーギュスト・ロダンの“手”の彫刻だ。それらが示すのはフランス館のテーマである「愛」、そして「職人技」。芸術もファッションも、人の手と愛によって生み出される。ルイ・ヴィトンのトランクもそれを象徴するものの一つということだろう。このインスタレーションは、OMAの建築家、重松象平が手掛けた。また続く部屋では、ライゾマティクスの真鍋大度による映像とともに、ルイ・ヴィトンのトランクを模った球体が回転し、地球をめぐる旅を想起させるアート作品に出合える。

トランクひとつひとつが職人の世界につながるかのような、没入感あふれるルイ・ヴィトンの展示空間。手掛けたのは建築家・重松象平。
©LOUIS VUITTON

「トランクのスフィア」と壁面にアーティスト真鍋大度による映像作品を投影。旅を想起させる風景やルイ・ヴィトンのモノグラム・モチーフの映像が映し出される。
©LOUIS VUITTON
さらに進んでいくと、フランスを代表するクチュール メゾン、ディオールの世界に導かれる。昨年のパリ・オリンピックのために制作された、フランス国旗と同じブルー、ホワイト、レッド、3色の「バー」ジャケットの完璧なシルエットが、ムッシュ ディオールの時代から受け継がれるメゾンの手仕事の粋、サヴォワールフェールを象徴する。壁一面を覆う白いトワルと、写真家・高木由利子による幻想的な映像が、来訪者を夢のクチュリエの世界へといざなう。

ディオールのアイコニックなバージャケット。パリ・オリンピックのために制作されたもの。
©DIOR

クチュールを象徴する大小の白いトワル(服の立体サンプル)が壁面を覆う。
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同じくフランスの伝統あるラグジュアリーメゾン、セリーヌは、メゾンのエンブレムである「トリオンフ」を再解釈し、日本伝統の漆に蒔絵をほどこした美しく繊細なアートピース3点を展示。蒔絵は石川県輪島市を拠点とするアーティスト集団「彦十蒔絵」が手掛けた。またそのアートピースから着想を得た限定のバッグも登場。アーティスト中村壮志による、日本の美と「トリオンフ」の世界を描く没入感のあるビデオインスタレーションも必見だ。セリーヌの展示は5月11日(日)まで。

セリーヌの展示空間
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トリオンフ 本朱、彦十蒔絵 作、金沢市
木彫漆塗り平蒔絵仕上げ 松竹梅モチーフ
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セリーヌ クラシック トリオンフ バッグ / ゴールド ラミネート シャイニーニロティカスクロコダイル
イタリア・ラダ セリーヌ アトリエ 作 大阪・関西万博 限定品
©CELINE
2025年9月1日(月)から10月13日(月)までの期間は、ジュエリーメゾンのショーメが、「ショーメ、自然美への賛歌」をテーマにインスタレーション形式のエキシビションを開催。自然主義の世界への圧倒的な没入体験とともに、歴史的なジュエリーと現代を融合させた感覚的な旅へと来訪者を誘う。
フランス館のゴールドパートナーであり、ルイ・ヴィトンを始めとする多くのラグジュアリーブランドを擁するLVMHジャパンのノルベール・ルレ社長は、「世界でいろいろな出来事がある中で、フランスと日本の縁、いい関係性を、このパビリオンを通して示せれば」、そして「これは手仕事によるものづくりのメッセージ、平和へのメッセージです」と語る。
フランス館ではほかにも、振付家アンジュラン・プレルジョカージュによるダンス映像や、樹齢1000年のオリーブの木が生命を湛えて静かにたたずむ小さな庭園など、進むにつれフランスの豊かな創造性と愛に満ちた多彩な空間やアート作品が現れる。また美食の国らしく、4階の「ビストロ(Le Bistrot)」ではフランス館のホスピタリティパートナーとして参加するモエ ヘネシーが、フランスならではの料理とともに、「モエ・エ・シャンドン」「ヴーヴ・クリコ」「ルイナール」といったシャンパンやロゼワインを供する。大阪で体感できる、フランスへの小旅行に出かけてみてはどうだろうか。

「大阪・関西万博2025」フランス館の外観。
©DR
大阪・関西万博
会期:4月13日(日)〜10月13日(月)
公式サイトはこちら