BY MACKY MAKIMOTO, PHOTOGRAPHS BY SHIGERU OHTSUKI
「挽きたて、打ちたて、茹でたて」が値打ちとされてきた蕎麦にもまた、新しい仕事がある。
「菊谷」の店主菊谷修さんは、以前より蕎麦の食べ比べを提供してきた。産地違いの比較だけではない。打ちたてや10割に固執せず、打ってから寝かす蕎麦や、つなぎのおいしさを出す蕎麦の食べ比べである。
栃木で栽培した秩父の在来種と、北海道の鹿追(しかおい)のブレンドを2割のつなぎで打ち、2日寝かせて熟成した蕎麦は、甘みも香りも肩が丸いので、蕎麦つゆとのなじみがいい。秩父の在来品種、手刈り天日干し、実の状態で4年熟成した10割蕎麦は、穏やかな甘みがあって、心に安寧をもたらすおおらかさがある。新潟と茨城のブレンドで1割つなぎの蕎麦には、温かさがある。茨城の常陸(ひたち)秋蕎麦の10割は、ほのかな甘みと微かな野生のえぐみが、蕎麦つゆの味を深くする――といった具合である。そこには1種類の蕎麦だけでは見えない、穀物としての生命の躍動があって、知的好奇心をくすぐりながら、食べ手の感性をも磨くのである。
菊谷 大塚別亭
蕎麦快席¥5,000~(前々日までに要予約)、菊酔ひ膳¥2,500~(当日予約のみ)
住所:東京都豊島区北大塚1-34-10
営業時間:18:30~19:30(入店)
不定休(原則、月曜休)
問い合わせ先
巣鴨本店
TEL. 03(3918)3462