BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO
「『ペリエ ジュエ』はボトルが芸術品だと評されますが、私たちが肝に銘ずべきは、“中身も芸術品でなくてはいけない”ということです。その年のブドウの性質を見極め、過去のヴィンテージや味わいなどの記憶をたどりながら、アサンブラージュ(キュヴェのブレンド)を行います。そうして、『ペリエ ジュエ』ならではの繊細な味をつくり上げなくてはならないのです」
加えて「ペリエ ジュエ ベル エポック」の場合、通常、熟成に6年以上の時間をかけるので、半年ごとにひとつひとつのタンクや樽の味をチェックするのだという。「眠っているシャンパーニュは、いわば私の娘のようなもの。嫁ぐ日まで大切に育てなければいけないのです(笑)」
じつは、デシャン自身にも結婚にまつわるスイートな思い出がある。「ペリエ ジュエ」に入社したのは1983年のことだったが、その翌年、現在の妻と結婚したのだ。「妻の両親に結婚の許可をもらいに行くとき、『ペリエ ジュエ ベル エポック 1978』を持っていきました。今も、結婚記念日には『ペリエ ジュエ ベル エポック』を開けますよ」と満面の笑顔を見せる。彼は「シャンパーニュは人生の楽しみの一部」というが、確かに、彼の言葉を聞いていると、幸福のシーンには欠かせない飲み物であることがよく理解できる。
入社から35年。人々の心に残るシャンパーニュを造り続けてきた彼は、現在、また新たに “ここ20年で最良の収穫”と言われる2018年のクリエイションに取り組んでいる。次は、どんな美しい「ペリエ ジュエ」に出合えるのか。その秘密の鍵は、彼が握っているのだ。