BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO
エミール・ガレのアネモネの絵が描かれたシャンパーニュ「ペリエ ジュエ ベル エポック」。ボトル・デザインの美しさと繊細で優雅な味わいから、“シャンパーニュの芸術品”と称される。昨年秋、新ヴィンテージ「ペリエ ジュエ ベル エポック ブラン・ド・ブラン 2006」と限定品の「ペリエ ジュエ ベル エポック エディション オータム 2010」の新しいキュヴェがリリースされ、愛好家たちの注目を集めている。
「ペリエ ジュエ」には熱狂的ファンが多いが、特に今話題となっているのが、「ペリエ ジュエ ベル エポック エディション オータム 2010」だ。これは、最高醸造責任者のエルヴェ・デシャンが“日本の秋”にインスパイアされ、その趣をボトルの中に表現したキュヴェで、秋限定のスペシャル・エディションとなっている。エルヴェ・デシャンは穏やかにこう語る。
「以前、秋の京都を訪れた時、紅葉の美しさに感動しました。赤、オレンジ、黄色など、さまざまな紅葉の色が折り重なって、絵画のように美しかった。その色合いをシャンパーニュのボトルの中に“アサンブラージュ”してみたいと思ったのです」
通常、ロゼにブレンドする赤ワインの比率は12%だとデシャンは言うが、このキュヴェでは赤ワイン比率を15%にし、ロゼの色合いを濃くして“紅葉”に近づけたのだという。確かに、彼の言うとおり、その明るい銅のような色合いはまるで紅葉の色が溶け込んだように見える。
「ペリエ ジュエ」は1811年創業の老舗で、オスカー・ワイルドやサラ・ベルナールなど稀代の芸術家たちに愛されてきた。現代では、モナコ王室アルベール大公の結婚式の公式シャンパーニュになるなど、モナコ王室との縁も深い。優雅さに定評あるメゾンだが、そこには歴代の最高醸造責任者たちのたゆまぬ努力が隠されている。エルヴェ・デシャンは7代目に当たるが、驚くべきは、200年続く歴史のなかで、最高醸造責任者はまだ7名を数えるのみだということだ。これは、ひとりひとりの最高醸造責任者によって、メゾンのスタイルが長いあいだ、いかに大切に守られてきたかを意味する。