季節にふさわしいもの、ときめくものをさりげなく――。ギフトコンシェルジュの真野知子さんが、真摯にものづくりに打ち込む作り手たちによる素敵な贈りものを紹介する連載第22回

BY TOMOKO MANO, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 12月はクリスマスや忘年会のシーズン。ホームパーティなど大勢で食卓を囲む機会も増える季節です。お世話になった方へのお歳暮やギフトに、または年末年始に家族や親類、友人と過ごされる時のご馳走として、「カニ」の贈りものは絶大な人気。カニは古来、“試験合格”や“金運招福来”の吉祥ともされ、そのハサミはピースもしくはVサインとも。ラッキーパワー満載のカニづくしを、“おいしいカニ”から“おしゃれなカニ”まで厳選してご紹介。

山本永二商店の「津居山かに」

 兵庫県北部の豊岡市、城崎温泉からさらに日本海側へ車で約10分弱の津居山港。そこで水揚げされるズワイガニはブランド蟹「津居山(ついやま)かに」とされ、極上の品質を誇る高級ブランドとしても知られています。北陸では「越前かに」、山陰地方では「松葉かに」と呼ばれる「ズワイガニ」。津居山港で水揚げされる松葉かにのみを、津居山かにと呼ぶことができるのです。

画像: 「津居山かに」(浜ゆで)<1kg>¥20,000〜、(浜ゆで・せこがに ※メス)大 ¥1,500〜 津居山港で水揚げされたカニは厳しい目で選別され、ブランド名に見合う品質のカニのみに青いタグが付けられます。「漁港名」と「漁船名」が記されたこのタグには漁業関係者の、品質に対する自信と誇りが感じられます

「津居山かに」(浜ゆで)<1kg>¥20,000〜、(浜ゆで・せこがに ※メス)大 ¥1,500〜
津居山港で水揚げされたカニは厳しい目で選別され、ブランド名に見合う品質のカニのみに青いタグが付けられます。「漁港名」と「漁船名」が記されたこのタグには漁業関係者の、品質に対する自信と誇りが感じられます

 地元の城崎温泉の旅館をはじめ、京都や大阪の割烹や日本料理店、東京都内の日本料理店でも人気が高い津居山かに。身は上品で繊細甘み、カニ味噌は濃厚なコクと旨味。通な人もうならせる極上の味わいです。津居山港は流域面積1300㎢、流路総延長約700㎞の円山川(まるやまがわ)の河口にあります。山の栄養分を含む多数の支流が注ぎ込み、その恵みのおかげで多くの生き物が育まれるのです。さらに津居山沖は潮流のぶつかりあう漁場でもあり、津居山かにはその深海で育ちます。他の地域に比べ、美味しい餌が豊富にあるため、味が濃厚なのです。津居山港はこの最高の漁場から近く日帰り操業が可能。生きたままカニを持ち帰るので、当然、その鮮度は抜群です。

画像: メスは「セコがに」と呼ばれ、冬の味覚の女王。内子はコクが深く濃厚、外子はプチプチと心地よい食感と塩加減が魅力。誰もがうなる高級珍味。届いたセコがにを、真野さんは手際よく“甲羅盛り”に

メスは「セコがに」と呼ばれ、冬の味覚の女王。内子はコクが深く濃厚、外子はプチプチと心地よい食感と塩加減が魅力。誰もがうなる高級珍味。届いたセコがにを、真野さんは手際よく“甲羅盛り”に

 メスの「セコがに」は、環境と資源の保護のため漁期は11月6日の解禁から12月末までに限定。短期間だけ食することができる貴重な味です。オスの津居山かには3月20日までとメスに比べると漁期は長めです。

 カニをご家庭で茹で上げるのは、なかなか至難の業かもしれません。こちらの品は、職人がこだわり抜いた絶妙な茹で加減と塩加減。一心不乱に楽しんでいただくために、贈りものには届いたらそのまま召し上がっていただける、浜茹でのカニがおすすめ。家族が集う日や、お世話になった恩師など特別な方へ、冬の味覚をお届け。繊細な甘み、旨味を胃袋の細胞レベルで味わう。沈黙の団欒が始まるのは間違いありません。

問い合わせ先
山本永二商店
TEL. 0796(28)2255
公式サイト

本と温泉の小説『城崎へかえる』

画像: 湊かなえ書き下ろし小説『城崎へかえる』¥1,200(税込)

湊かなえ書き下ろし小説『城崎へかえる』¥1,200(税込)

 城崎温泉といえば、外湯めぐりと松葉蟹や但馬牛などを誇る食文化で、多くの文人たちに安らぎと同時に創作のための刺激を与えてきました。志賀直哉をはじめ、さまざまな小説家や詩人、歌人、芸術家が訪れ、愛した温泉地です。

「本と温泉」は2013年の志賀直哉来湯100年を機に、次なる100年の温泉地文学を送り出すべく、城崎温泉旅館経営研究会が立ち上げた出版レーベルです。これからの100年に読まれ続ける新しい本づくりを目指しています。こちらは、2016年山本周五郎賞受賞作家の湊かなえ氏が書き下ろした小説『城崎へかえる』。

画像: エンボス加工で殻表面のゴツゴツ感をリアルに表現。赤い糸で綴じられた“中身”も、カニ仕様。本というメディアが秘める新たな可能性をも感じさせる一冊

エンボス加工で殻表面のゴツゴツ感をリアルに表現。赤い糸で綴じられた“中身”も、カニ仕様。本というメディアが秘める新たな可能性をも感じさせる一冊

 地域限定発売で、現地でしか手に入らない一冊です。城崎温泉へかにを食べに訪れたならば、旅の思い出や誰かへのプレゼントとして、ユニークでレアなお土産におすすめしたい品のひとつ。本物のカニの殻を思わせる特殊テクスチャー印刷で加工された装丁も、殻から身を抜くように本を取り出す様式も愉快。

問い合わせ先
本と温泉
TEL. 0796(32)4141
公式サイト

みなとやの「かに最中」

画像: かに最中<6個入り> ¥1,100(税込) 厳冬の城崎の風物詩、松葉かにの姿を模した、厳選された丹波大納言のつぶ餡入りの最中

かに最中<6個入り> ¥1,100(税込)
厳冬の城崎の風物詩、松葉かにの姿を模した、厳選された丹波大納言のつぶ餡入りの最中

 城崎温泉きっての名店「みなとや」。江戸時代に旅館業として創業し、明治時代以降には菓子製造販売と土産物販売店として、昭和天皇、上皇陛下をはじめ、訪れた多くの文化人たちにも愛されてきました。城崎温泉街の中心部に位置し、菓子は勿論のこと、伝統工芸「麦わら細工」を自社で製造販売、但馬地方の工芸品、海産物、地酒なども扱います。城崎温泉でお土産屋といえば「みなとや」なのです。

 丹波産大納言小豆、讃岐産和三盆をはじめ、厳選した材料を用い、良い菓子を作ることを心がける。『見て美しく、食べて美味しく、思わず笑顔のこぼれる菓子』、それが初代から一貫して今日に至る菓子づくりのこだわり。『良い品物をお客様に』をモットーとし、長年受け継いできた伝統を守り、観光客はもちろん、地元の人達にも愛されています。

画像: 版画家、川西英の絵による包装紙。長く愛されてきた絵柄は、今見るとかえってモダンで新鮮な趣

版画家、川西英の絵による包装紙。長く愛されてきた絵柄は、今見るとかえってモダンで新鮮な趣

 冬の城崎温泉といえば「カニ」と「温泉」が合言葉。カニを模した最中は、甘さ控えめで素材の風味がしみじみ伝わる優しいお菓子。手のひらサイズで愛らしく、甲羅には「きのさき」の文字。文士が愛した地は、お菓子もいとをかし。

問い合わせ先
城崎温泉 みなとや
TEL. 0796(32)2014
公式サイト

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.