「クリュッグ」最高醸造責任者であるジュリー・カヴィルさんが「クリュッグ」のニュー・エディションとともに初来日。その魅力とメゾンの新たな試みについて尋ねた

BY KIMIKO ANZAI

 “シャンパーニュの最高峰”と称され、熱狂的ファンが多い「クリュッグ」。1843年の設立以来、初代当主ヨーゼフ・クリュッグの「その年の気候に左右されない最高品質のシャンパーニュを造る」という哲学を大切に、唯一無二のマルチ・ヴィンテージ「クリュッグ グランド・キュヴェ」を世に送り出してきた。その複雑かつ優美な味は壮麗なシンフォニーにも例えられている。

 今回、新たに登場したのが「クリュッグ グランド キュヴェ 171 エディション」と「クリュッグ ロゼ 27 エディション」。どちらもブレンドの妙味が際立ち、ハーモニアスで優雅な味わいだ。その根底にあるのが、歴代最高醸造責任者の「創業者の夢を実現し続ける」という熱い思い。ジュリー・カヴィルさんは最高醸造責任者として、2019年にそのバトンを引き継いだ。最高醸造責任者は、いわばオーケストラの指揮者のような存在。彼女はどのようにあの美しい”シンフォニー”を生み出しているのだろうか。

画像: メゾン クリュッグ 最高醸造責任者 ジュリー・カヴィルさん。ランス大学で醸造を学び、06年「クリュッグ」入社、20年より現職。サステナビリティにも注力する。初来日の今回、大阪で鉄板焼き、東京で精進料理とともに「クリュッグ」とのマリアージュを体験。日本料理との相性のよさに感動したという PHOTOGRAPH BY DOMINIQUE SILBERSTEIN

メゾン クリュッグ 最高醸造責任者 ジュリー・カヴィルさん。ランス大学で醸造を学び、06年「クリュッグ」入社、20年より現職。サステナビリティにも注力する。初来日の今回、大阪で鉄板焼き、東京で精進料理とともに「クリュッグ」とのマリアージュを体験。日本料理との相性のよさに感動したという

PHOTOGRAPH BY DOMINIQUE SILBERSTEIN

「たとえばラフマニノフやモーツァルト。世界中で異なるオーケストラがその美しい楽曲を演奏しています。ですが、演目と楽譜は同じでも、奏者によってその音色は少しずつ違う。けれど、それは誰が聴いてもラフマニノフであり、モーツァルトなのです。『クリュッグ』も同じです。年ごとにブドウの出来は異なりますし、また、多数のリザーヴワインを使いますので、毎年『どのブドウを選ぶべきか』を熟慮しつつ、”ブドウのオーディション”を行います。オーケストラは第一ヴァイオリンの奏者だけを集めても成り立ちませんので、ほかの楽器も必要です。『クリュッグ』も同様に、骨格のしっかりしたブドウ、アロマティックなブドウなど、個性が際立ったものをセレクトしています」。

画像: メゾンは、1843年の創設以来、唯一無二の美しいシャンパーニュを生み出してきた。樽発酵を行い、「クリュッグ」ならではの芳醇な味を生み出している。現在、「ヨーゼフ2.0」のプロジェクトが進行中だが、ルミュアージュ(動瓶)やデゴルジュマン(澱引き)、熟成などはランスのメゾンで行われるという PHOTOGRAPH BY MIKAEL BENARD

メゾンは、1843年の創設以来、唯一無二の美しいシャンパーニュを生み出してきた。樽発酵を行い、「クリュッグ」ならではの芳醇な味を生み出している。現在、「ヨーゼフ2.0」のプロジェクトが進行中だが、ルミュアージュ(動瓶)やデゴルジュマン(澱引き)、熟成などはランスのメゾンで行われるという

PHOTOGRAPH BY MIKAEL BENARD

 その言葉通り、「クリュッグ グランド キュヴェ 171 エディション」には2015年のブドウを中心に131種類のワインが、そして「クリュッグ ロゼ 27 エディション」には2015年のブドウを中心に38種類のワインが使用され、見事なハーモニーを奏でている。
 また、現在メゾンでは、新しいプロジェクト「ヨーゼフ2.0」が進行中だ。これは、メゾンが位置するランス市の近郊に新醸造設備を開設するプロジェクトで、これにより、ブドウはより早く醸造所に運ばれるようになり、高いレベルで新鮮さが保たれるようになるという。だが、カヴィルさんがより力を入れているのが、ここで働く人々の労働環境の改善。自然にも、人にも優しい職場環境を作ることで、よりサステナブルなメゾンを目指したいと語る。

「自然環境も、人々の労働意識も変わってきている。人々が『クリュッグ』に何を求めるかも。味を守ることは大切ですが、加えて、自然にも、人にも優しい職場環境を作ることで、よりサステナブルなメゾンを目指したいと思っています。これは、次世代がこの素晴らしいシャンパーニュを未来でも造れるようにするためのプロジェクトでもあるのです」。

画像: 「クリュッグ グランド・キュヴェ 171 エディション」ピノ・ノワール45パーセント、シャルドネ37パーセント、ムニエ18パーセント。リザーヴワイン42パーセントブレンド。12年間の異なる年の131種類のワインを使用。レモンや白い花、ドライフルーツの香り。”極めて”奥深い味。750ml ¥44,990 COURTESY OF KRUG

「クリュッグ グランド・キュヴェ 171 エディション」ピノ・ノワール45パーセント、シャルドネ37パーセント、ムニエ18パーセント。リザーヴワイン42パーセントブレンド。12年間の異なる年の131種類のワインを使用。レモンや白い花、ドライフルーツの香り。”極めて”奥深い味。750ml ¥44,990

COURTESY OF KRUG

 穏やかに語るカヴィルさんだが、その奥に感じられるのは力強い”シャンパーニュへの情熱”だ。実は、彼女のワイン業界でのスタートは、通常よりも遅かった。ビジネススクールで5年学び、その後、パリの大手広告代理店で6年間アカウントディレクターとして活躍した。この間に結婚したが、夫ともに自分たちの今後を考え、地方への移住を決めたという。その頃、夫がシャンパーニュに新たな職を得たことで、なんと、彼女は出産1週間後にランスに移住した。もともとワインに人一倍の情熱を持っていたことから、ランス大学へに入学、醸造を学んだ。そして、2006年に「クリュッグ」に入社、次第に頭角を現していった。

画像: 「クリュッグ ロゼ 27 エディション」 ピノ・ノワール57パーセント、シャルドネ23パーセント、ムニエ20パーセント。リザーヴワイン55パーセント、赤ワイン10パーセントブレンド。9年間の異なる年の38種類のワインを使用。ローズヒップやレッドカラント、コショウの香り。ドライフルーツのニュアンスが長い余韻を残す。750ml ¥61,600 COURTESY OF KRUG

「クリュッグ ロゼ 27 エディション」 ピノ・ノワール57パーセント、シャルドネ23パーセント、ムニエ20パーセント。リザーヴワイン55パーセント、赤ワイン10パーセントブレンド。9年間の異なる年の38種類のワインを使用。ローズヒップやレッドカラント、コショウの香り。ドライフルーツのニュアンスが長い余韻を残す。750ml ¥61,600

COURTESY OF KRUG

「最高醸造責任者になったのは自然な流れでした。入社して2年が経った頃から、前任者のエリック・ルベルからなんとなくメッセージを受け取るようになりました。チームのみんなも、その空気感を大切にしてくれて、今に至っているように思います」。
 そう語るカヴィルさんには”メゾン初の女性の最高醸造責任者”という気負いは感じられない。なぜなのかと尋ねると、こんな答えが返って来た。

「クリュッグは、チーム全員が優秀で素晴らしいのです。皆が互いにリスペクトし合っている。もちろん、人に対してだけでなく、自然にも。そう、ありとあらゆるものに」。

MHD モエ ヘネシー ディアジオ
TEL. 03-5217-9736

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