天才の系譜は続く――。そんな名門の実力を感じさせる白ワインが日本初登場。その美しきワインを携え、造り手のキアラ・モンダヴィが初来日し、“ファミリーの思いが結実した白”の誕生秘話を語ってくれた

BY KIMIKO ANZAI

 ステラ・マッカートニーやパロマ・ピカソ。鬼才と評される父を持つ、芸術的才能に溢れた娘たち。キアラ・モンダヴィが手がける「センティアム ソーヴィニヨン・ブラン 2021」を口にした時、ふと彼女たちの作品群が思い浮かんだ。

 キアラ・モンダヴィは「コンティニアム・エステート」オーナーであるティム・モンダヴィ氏の二女。ティム氏は「オーパス・ワン」の初代醸造責任者であり、ほかにもイタリアの「オルネッライア」、チリの「セーニャ」など、ジョイント・ベンチャーで数々の銘醸ワインを成功させ、“天才醸造家”とも称される人物。“カリフォルニアワインの巨星”、ロバート・モンダヴィ氏は祖父にあたる。物心ついた時からブドウ畑で遊び、長じてからは父のもとで栽培や醸造を学んだ。アーティスティックな才能にも恵まれ、父が手がける赤ワイン「コンティニュアム」のラベルのイラストも手がけている。

画像: 父のティムとともにワインを造るキアラ。初来日で日本の虜に。人々がリスペクトし合う姿に感銘を受けたという。また、自身のワインが日本料理と合うことも大きな発見だった。「木の芽をあしらった鯖寿司やエビのお椀によく合っていました。日本料理は繊細ですね」

父のティムとともにワインを造るキアラ。初来日で日本の虜に。人々がリスペクトし合う姿に感銘を受けたという。また、自身のワインが日本料理と合うことも大きな発見だった。「木の芽をあしらった鯖寿司やエビのお椀によく合っていました。日本料理は繊細ですね」

 実は、キアラにはソーヴィニヨン・ブランでワインを造ることへの強い思いがあった。ワインの世界では知られていることだが、モンダヴィ家は2004年に大手ワイン会社に「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」を売却、祖父ロバート氏と父ティム氏はワイナリーを去った。その後、ティム氏は2008年に「コンティニュアム エステート」を設立し、カベルネ・ソーヴィニヨン主体でボルドースタイルの「コンティニュアム」を完成させた。その新しいワインは極めてエレガントな味わいで、瞬く間に世界市場に躍り出た。だが、ティム氏はなかなか白ワインを造ろうとはしなかった。彼のみならず、キアラをはじめとするファミリー全員が、素晴らしいブドウを育む“ト・カロン”の畑への深い思いがあったからだ。あの畑は「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」の所有で、もはや自分たちのものではない。畑での思い出を数多く持つキアラにとっては、悲しみと同時に、忸怩たるものがあったに違いない。彼女はこう語る。

「“ト・カロン”の畑は樹齢が高く、70年代後半には、ワイナリーではそれを引き抜く予定でした。でも、それを若かった頃の父が『この畑からはまだ素晴らしいブドウが生まれる』と、引き抜くのを止めたのです。そのブドウから生まれたのが『ト・カロン アイ・ブロック フュメ・ブラン』。この上なく美しい白ワインでした」。

“フュメ・ブラン”とはソーヴィニヨン・ブランのカリフォルニアでの呼び名で、ロバート氏による造語。辛口のソーヴィニヨン・ブランのスモーキーなニュアンスをわかりやすく伝えるために考えたという。「このト・カロン以上の畑が、長年見つからなかったのです。『コンティニュアム・エステート』の白になるのにふさわしいブドウを、私たちはずっと探していました」。

画像: メンドシーノ郡にある畑では、オーガニックでブドウが育てられている。冷涼な気候で、ブドウは酸味を保ったまま、ゆっくりと完熟する。どこかクールさを感じさせるのも特徴だ

メンドシーノ郡にある畑では、オーガニックでブドウが育てられている。冷涼な気候で、ブドウは酸味を保ったまま、ゆっくりと完熟する。どこかクールさを感じさせるのも特徴だ

 そして出合ったのがメンドシーノ郡でオーガニックでのブドウ栽培を行う農家だった。畑はレッドウッド・ヴァレーという冷涼な土地にあり、海からの冷たい風が流れ込むことで、フレッシュでバランスの取れた酸をもつブドウが育まれるという。この理想的なブドウに出合ったことが「センティアム」の誕生に繋がった。ちなみに、ファーストヴィンテージは2020年。今年お目見えした2022年ヴィンテージは2度目のリリースとなり、日本初登場だ。香りはライムなどの柑橘と、スズランやサンザシなど白い花の繊細な香り。酸味は生き生きとしてクール、豊かな果実味が特徴で、スタイリッシュな味わいだ。醸造は小さなステンレスタンクと500mlのオーク樽、そしてコンクリートタンクで果汁を3分の1ずつ発酵、ブレンドするという手法を用いている。これにより、テクスチャーがシルキーになり、より複雑な味わいが生み出せるという。彼女の言葉通り、「センティアム ソーヴィニヨン・ブラン 2022」は滑らかな口当たりで、奥行きが感じられる。

「今、『センティアム』は姉と兄、従兄弟とともに、父の助言を受けつつ。ファミリーで造っています。最近になって気づいたのは、『コンティニュアム・エステート』の白ワインはどんなものであるべきかという方向性。それはかつて祖父が目指した辛口の“フュメ・ブラン”をさらにエレガントに進化させたものです。ワイン造りをしていると、祖父や父が方向性を示してくれていることを感じますね」。

画像: 「センティアム ソーヴィニヨン・ブラン 2022」750ml ¥17,600 アメリカ・カリフォルニア州 ソーヴィニヨン・ブラン100%。ライム、スダチなど青い柑橘や白い花の優しい香り。クールな酸味とふっくらとした果実味が美しく調和し、洗練された味わい。魚介類や鶏肉料理に。豆腐料理や天ぷらとも好相性 PHOTOGRAPHS: COURTESY OF CONTINUUM ESTATE

「センティアム ソーヴィニヨン・ブラン 2022」750ml ¥17,600 
アメリカ・カリフォルニア州 ソーヴィニヨン・ブラン100%。ライム、スダチなど青い柑橘や白い花の優しい香り。クールな酸味とふっくらとした果実味が美しく調和し、洗練された味わい。魚介類や鶏肉料理に。豆腐料理や天ぷらとも好相性

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF CONTINUUM ESTATE

 最後に、彼女にこんな質問をしてみた。「あなたがお父様に似ているところは?」。すると、少し考えてから、満面の笑顔を見せた。
「ちょっと頑固なところ、でしょうか。何ごとにも妥協するのが苦手で。それから、ハードワークを厭わないところ。ワイン造りに向いていると思いたいです(笑)」。
 世代を超えて、ファミリーに脈々と流れる精神。モンダヴィファミリーの“天才たる所以”を彼女の中に垣間見た気がした。

問合せ先
WINE TO STYLE
TEL: 03-5413-8831

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