BY CHIKO ISHII, PHOTOGRAPH BY MASANORI AKAO, STYLED BY YUKARI KOMAKI

ぷるんと弾力のあるくず餅は、吟味した小麦粉を丁寧に仕込んで、樹齢を重ねた杉の大樽で450日かけて自然熟成。完全無添加、カロリー控えめ、グルテンをほとんど含まない乳酸菌発酵品とくれば、文豪のみならず近頃は美容界にもファン多数。まず沖縄産黒糖を用いた秘伝の黒蜜、次にきな粉をかけて召し上がれ。
「元祖くず餅」24切れ¥900~/船橋屋
TEL.0120-8-27848
「船橋屋」のくず餅は、ゆかりの文化人も多いお菓子だ。たとえば、中学生の頃、体操の授業中にくず餅を食べに行って、口のまわりにきな粉をつけたまま学校に戻った逸話が残っている芥川龍之介。ほかにも汁粉や最中などが好きな大の甘党として知られる文豪だ。芥川は船橋屋がある亀戸に近い、本所(現在の東京都墨田区の南の地域)で育った。本所界隈のことをスケッチした随筆「本所両国」に、久しぶりにくず餅を食べたら値段が上がっていたことや、船橋屋の周辺の風景が変わったことを綴っている。芥川にとっては懐かしい少年時代の味だったのだろう。
やはり甘党の永井荷風は、小説『冷笑』にて登場人物がくず餅を食べる場面を描いている。狂言作者とその妻と幼い娘が、正月に亀戸天神へ行ってくず餅を食べる。切り分けられたくず餅の中で、なるべくきな粉と砂糖のついているところを選ぶ妻に親近感をおぼえてしまう。
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