RECEPI BY TOMOKO NAGAO, PHOTOGRAPHS BY TAKAKO HIROSE, TEXT BY MIKA KITAMURA

材料全てがだしに。
米のとろみでやさしい仕上がり
日本のお米の行末が心配なこの頃だが、新米の季節到来です。炊き立ての新米とお味噌汁は心に染み入る日本人のソウルフードだが、「お米をスープ仕立てにするのもおすすめです」と長尾智子さん。
長尾流お米のスープは、「リゾットでもスープでもない、イタリアとスペインの米料理のいいとこどりをしました。スペインには”アロス”で始まるお米料理がたくさんあります。中でも『アロス・カルドソ』に近い味かもしれません」。 スペイン語の「アロス」は「米」、「カルドソ」は「スープがたっぷりの」という意味。つまり「汁気の多い米料理」。パエリヤよりリゾットに近く、スープと米を一緒に味わう料理だ。「イタリアのリゾットと同様に、他の食材と共に米も炒めてから煮込みます。煮汁は多めですが、少しずつ溶け出た米のでんぷん質でとろりと仕上がります」。米の存在感を際立たせ、とろみのついたスープがポタージュのようなまろやかさに。好みで水分をもっと多めにしても。
えびとあさり、野菜のだしがたっぷり出るので、市販のブイヨンなどは不要。「トマトピュレは頼りになる調味料です。だしの土台になってくれます。トマトピュレやトマトペーストなどのトマト系の調味料は充分に旨みがありますから、常備しておくことをおすすめします」。
今回はすっきりと食材の味だけで仕上げたが、ローズマリーやタイムなどのハーブ類、ごく少量のカレー粉、シナモンなどで風味づけしても。
<材料4人分>
米 1/3カップ
えび(ブラックタイガーなど)6尾
あさり 約250g
玉ねぎ 大1/4個/粗みじん切り
ブロッコリー 約1/3株/ひと口大に切る
にんにく 小さめ1片/粗みじん切り
トマトピュレ 約大さじ4
塩、こしょう 各少々
オリーブオイル 大さじ1
ローリエ 2枚
赤唐辛子粉 少々
レモン 約1個/くし形に切る

材料の下ごしらえをする。えびは殻を外し、背に切り込みを入れて背わたを取り、1尾を3、4等分する。ボウルに入れ、塩を揉み込み、水で洗い流して水気を切る。あさりの塩抜きは、8分目くらいの量の水に浸し、塩小さじ1/2程度を振って混ぜ、常温で1〜2時間おく。使う直前にあさり同士をこすり合わせるように流水で洗う。写真のように材料を下ごしらえしたものを揃えてから、一気に火入れするのが料理上手への第一歩。

鍋にオリーブオイルを入れ、玉ねぎとにんにく、ローリエを入れて軽く炒める。塩少々を加え、油が全体に馴染んでにんにくの香りが立ったら、米を加えて軽く炒める。米は洗わない。

水600ml(材料外)を注ぎ入れ、弱めの中火で米に火が通るまで煮る。米は、火が入ったか入らないくらいのかための状態がよい。

ブロッコリーを加え、トマトピュレも入れてざっと混ぜる。この時、煮汁が減っていたら適宜足し、弱めの中火で10分ほど煮る。

あさりを加え、しばらく蓋をして煮る。あさりの口が開いたら、味を見て足りなければ塩を少し加える。

えびを加え、火が通ったら赤唐辛子粉を振ってざっと混ぜて火を止め、器に盛る。くし形に切ったレモンとオリーブオイル(分量外)を添える。
スープ×レモン、オリーブオイルの関係

スープを作るとき、長尾さんはスープストックを使わない。素材のだしをうまく引き出し、材料の組み合わせ次第でも、だしが充分に出るから。今回は魚介類と野菜、全ての材料からのだしを上手に利用。最後に、トマトピュレの濃厚な旨みで味を決めている。「おいしい」と感じる感覚はそれぞれだから、「もし足りなければ各自で足してね」とそっと添えられるのが、レモンなどの柑橘類やオリーブオイルだ。レモンの酸味はきゅっと味のメリハリをつけてくれるし、上質なオリーブオイルの風味はそれだけで料理の味の格上げになる。この二つの、スープに対するメリハリ効果には驚くはず。レモンの季節にぜひ。

長尾智子
フードコーディネーター。書籍や雑誌の執筆、食品や器の企画やディレクションほか、食にまつわる提案を手がける。『料理の時間』(朝日新聞出版)、『ティーとアペロ お茶の時間とお酒の時間 140のレシピ』(柴田書店)ほか、著書多数。自らの目で選ぶオンラインストアSOUP(https://soup-s.shop/)も好評。
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