伊勢丹新宿店に、最高峰のチョコレートのクリエイションが一堂に会する「サロン・デュ・ショコラ」。2026年はマキシム・フレデリックも来日するという。世界が注目する一大イベントを陰で支えるバイヤーたちに話を聞いた。

BY YUMIKO TAKAYAMA

画像: 「創作のインスピレーションは、私を取り巻く自然や人から生まれます」と話す、マキシム・フレデリックのシグネチャー「コフレ シズー」¥7,128。母の生家が営んできたノルマンディーの農場を妹が継承、そこで育つ鶏をモチーフに生まれた。色とりどりのタマゴのなかには、味わいが異なるプラリネとキャラメルが詰まっている。「サロン・デュ・ショコラ」では新作サブレ・シリーズも登場予定。 PHOTOGRAPH BY SHINSUKE SATO

「創作のインスピレーションは、私を取り巻く自然や人から生まれます」と話す、マキシム・フレデリックのシグネチャー「コフレ シズー」¥7,128。母の生家が営んできたノルマンディーの農場を妹が継承、そこで育つ鶏をモチーフに生まれた。色とりどりのタマゴのなかには、味わいが異なるプラリネとキャラメルが詰まっている。「サロン・デュ・ショコラ」では新作サブレ・シリーズも登場予定。
PHOTOGRAPH BY SHINSUKE SATO

 冬の東京の風物詩ともいえる、世界最大級のチョコレートの催事「サロン・デュ・ショコラ」。2003年1月に伊勢丹新宿店 本館6階催物場から始まり、2026年で24回目の開催となる。今や世界最高峰のパティシエやショコラティエたちのクリエイティビティと高品質のチョコレートを贅沢に体験できる唯一無二の場だ。2026年のテーマは「CODE & MODE おいしさの秘密、クリエイションの流儀」。2025年「世界のベストレストラン50」で世界最優秀パティシエに選ばれた、マキシム・フレデリックの初来日も話題だ。

 フレデリックといえば、LVMHグループのパリの5 ツ星ホテル「シュヴァル・ブラン・パリ」内のレストランやカフェ「マキシム・フレデリック アット ルイ・ヴィトン」のシェフパティシエであり、2024年にはパリ17区にベーカリー&パティスリー「プラン クール」を、2025年7 月にはチョコレート工房兼ブティック「アトリエ・ノワゼット&ショコラ」をオープン。世界一多忙なパティシエの来日の実現は、「サロン・デュ・ショコラ」のバイヤーチームが彼と築いてきた信頼関係抜きには考えられないことだ。

画像: マキシム・フレデリック。フランス南西部モンフランカン村、"心の家族"と信頼をおく生産者のローランとソフィーが営むヘーゼルナッツ畑にて。さまざまな種類のヘーゼルナッツを、ペーストやプラリネなど用途に応じて使い分ける。 PHOTOGRAPH BY AURORE NGUYEN

マキシム・フレデリック。フランス南西部モンフランカン村、"心の家族"と信頼をおく生産者のローランとソフィーが営むヘーゼルナッツ畑にて。さまざまな種類のヘーゼルナッツを、ペーストやプラリネなど用途に応じて使い分ける。
PHOTOGRAPH BY AURORE NGUYEN

 フレデリックは2022年に「サロン・デュ・ショコラ」に初参加。当時の担当バイヤーが、フランスのロット=エ=ガロンヌ県モンフランカン村にフレデリックを訪ねてきたのだ。ヘーゼルナッツの木々の間を一緒に散歩し、食事をし、さまざまな話をしたことを今でも覚えているとフレデリックは言う。「フランス南西部の小さな村まで足を運んでくれたことに感動しました」。シェフたちとこまやかなコミュニケーションを取り、敬意と誠意をもって接すること。それが信頼関係を築くうえでなによりも重要だと「サロン・デュ・ショコラ」のバイヤーの田嶋紘一郎は語る。

「フレデリックは超多忙ですが、われわれは彼の作品をぜひとも紹介したくて、2022年の初回は小ロットの商品販売から始めました。彼は真摯な職人気質で、今回も参加するにあたり、日本のお客さまがどのようなチョコレートを求めているのか、自分のクリエイションがどんな人たちに届いているのか知りたがっていたんです。"だったら実際に来てみたらどう?"という話から来日が決まりました」

 バイヤーチームは、開催の2 年以上前から世界中に広がるネットワークを駆使して出店候補をリサーチし、早ければ1 年半以上前からオファーを開始する。バイヤーは現地に約1 カ月滞在し、シェフたちと会話を重ね、目指す方向性を共有する。「世界のトップシェフほど、しっかり話を聞いてくださる印象です。日本のチョコレート市場への関心が高まっていて、積極的に日本向けの新作を考えてくださるシェフが増え、"いいものを作りたい!" という意気込みを感じます。僕たちの仕事は、彼らのクリエイションを最大限に引き出すことなので、"こういった商品を作ってほしい"というリクエストはしません」。その結果、「サロン・デュ・ショコラ」でしか買えない新作が並ぶことになり、それがイベント最大の魅力となっている。

画像: 三越伊勢丹「サロン・デュ・ショコラ 2026」の舞台裏を担うバイヤーチーム。左からバイヤーの田嶋紘一郎、アシスタントバイヤーの和田真由子、阪根尚樹、岩瀬智哉。 PHOTOGRAPH BY KAZUYA TOMITA

三越伊勢丹「サロン・デュ・ショコラ 2026」の舞台裏を担うバイヤーチーム。左からバイヤーの田嶋紘一郎、アシスタントバイヤーの和田真由子、阪根尚樹、岩瀬智哉。
PHOTOGRAPH BY KAZUYA TOMITA

 2026年に開催される「サロン・デュ・ショコラ」は三部構成。Part1はビーントゥバーを中心に、「カカオ」と密接な関係をもつシェフやブランドを紹介。Part2は最高峰のショコラティエとパティシエの技を見せる「アルチザン」で、フレデリックはPart2での出店となる。Part3の「NEXT」はチョコレートの多様性がテーマ。チョコレートを使った菓子やパンの紹介のほか、注目の若手日本人シェフのお披露目の場でもある。このPart3で華々しくデビューするのが、2022年にチョコレートの世界大会「ワールドチョコレートマスターズ」のベルギー代表となり、総合8 位となった「TOGO MATSUDA」。ショコラティエの松田詢吾は日本やパリのパティスリーで働いたのち、ベルギーのショコラトリーで研鑽を積んだ実力派。1 年半以上前から松田の動向を追い、オファーを決めた国内ブランド担当バイヤーの岩瀬智哉は「技術力が高く、素材の生かし方も秀逸。まさに"NEXT"にふさわしい逸材です」と太鼓判を押す。

画像: 「小さな一粒の中に、舌ざわり、アロマ、素材のハーモニーといくつもの要素がレイヤーとなって、まるで小宇宙があるかのようだと感じたことが、チョコレートに魅せられたきっかけでした」と松田詢吾シェフ。現在は札幌の「ショコラティエ マサール」にスーシェフとして勤務しており、「サロン・デュ・ショコラ」には同店と自身のブランドのダブルネームで出品。2026年春に千歳市に自らの店舗をオープン予定。北海道を拠点に選んだのはベルギーに近い気候、食材のポテンシャルの高さ、妻の出身地であることが理由だとか。 PHOTOGRAPH BY SHUSAKU NAGAHAMA

「小さな一粒の中に、舌ざわり、アロマ、素材のハーモニーといくつもの要素がレイヤーとなって、まるで小宇宙があるかのようだと感じたことが、チョコレートに魅せられたきっかけでした」と松田詢吾シェフ。現在は札幌の「ショコラティエ マサール」にスーシェフとして勤務しており、「サロン・デュ・ショコラ」には同店と自身のブランドのダブルネームで出品。2026年春に千歳市に自らの店舗をオープン予定。北海道を拠点に選んだのはベルギーに近い気候、食材のポテンシャルの高さ、妻の出身地であることが理由だとか。
PHOTOGRAPH BY SHUSAKU NAGAHAMA

「あの『サロン・デュ・ショコラ』から声をかけてもらって素直にうれしかったです。常に食べてくださる方の目線を大事に、"また食べたい""元気になる"と思ってもらえるクリエイションを心がけています」と松田シェフ。

 23年を経て、いまだ進化を続ける「サロン・デュ・ショコラ」。その躍進の軌跡は、バイヤーたちの時代の潮流を見る洞察力とネットワーク、そしてシェフたちの創造性を育む信頼と絆があってこそなのだ。

画像: 「TOGO MATSUDA」の「ボンボンショコラボックス togo」¥5,400。右下のグリーンはタヒチ産バニラとトンカ豆を使ったガナッシュで、アプリコットやアマレットの香りが印象的。その左はピエモンテ産ヘーゼルナッツとしょうがのエッセンスを加えたプラリネ。ゲランドの塩がアクセントに。 PHOTOGRAPH BY SHUSAKU NAGAHAMA

「TOGO MATSUDA」の「ボンボンショコラボックス togo」¥5,400。右下のグリーンはタヒチ産バニラとトンカ豆を使ったガナッシュで、アプリコットやアマレットの香りが印象的。その左はピエモンテ産ヘーゼルナッツとしょうがのエッセンスを加えたプラリネ。ゲランドの塩がアクセントに。
PHOTOGRAPH BY SHUSAKU NAGAHAMA

『~パリ発、チョコレートの祭典~サロン・デュ・ショコラ 2026』
一般会期:
Part1/2026年1月15日(木)~ 1月20日(火)
Part2/2026年1月26日(月)~ 1月29日(木)
Part3/2026年1月31日(土)~ 2月4日(水)、2月7日(土)~ 2月15日(日)
※2月6日(金)は全館休業
会場:伊勢丹新宿店 本館6階 催物場 東京都新宿区新宿3 の14の1
※時間、入場方法などの詳細については「サロン・デュ・ショコラ 2026」公式サイトをご覧ください。
公式サイトはこちら

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.