せきね きょうこ 連載
新・東京ホテル物語<Vol.17>

New Tokyo Hotel Story “IMPERIAL HOTEL TOKYO”
ホテルジャーナリスト、せきね きょうこが独自の視点でおすすめの東京ホテルを案内。連載第17回めは、歴史とともに輝きを増すグランドホテルの代表格「帝国ホテル 東京」

BY KYOKO SEKINE

 堂々とした風格を漂わせ、都心に君臨する「帝国ホテル 東京」は、間違いなく日本を代表するグランドホテルである。輝かしい歴史を語る書籍や雑誌は数知れず、その功績をほめたたえる評論家や、ホテルのファンも星の数ほどいる。筆者もまたファンの一人として、その華やかなる歴史を語りたいところだが、ここではやめておこう。そのストーリーだけでも1冊の本が書けるほど、終わりがないからだ。

画像: 正面玄関ではドアマンがプロのお出迎え。重厚感と格式を感じさせるメインエントランス

正面玄関ではドアマンがプロのお出迎え。重厚感と格式を感じさせるメインエントランス

 あまたの愛好家の目はまた、より厳しくもある。それに応えるべく、このホテルはさらにサービスのきめこまやかさを磨き、クオリティを上げてきたに違いない。そういう筆者も、子ども時代から母親に手を引かれ、ホテルパンを買いに来た。しかし今なお、「帝国ホテル 東京」のエントランスを入るときには自然と背筋が伸び、時には緊張感に包まれる。それが高級ホテルへの敬意でもあろう。

画像: 常に季節感のある大きな生花のブーケが目を引くメインロビー。格式ある空間ながら、多くの人が待ち合わせにも利用する安心安全なスペースでもある

常に季節感のある大きな生花のブーケが目を引くメインロビー。格式ある空間ながら、多くの人が待ち合わせにも利用する安心安全なスペースでもある

 今、世界を見渡しても、「帝国ホテル 東京」のような大きなスペースのロビーは激減し、待ち合わせ場所としての利用もしにくくなっている。セキュリティ、滞在ゲストのプライバシーの問題などが理由だが、それを思うと、このロビーは、なんと自由で贅沢な空間なのだろう。それに、少しでも困った表情や、何かを探す様子をしていると、ロビーに立つスタッフの誰かが必ず声をかけてくれる。つねに行き交う人々の表情を読み取り、気にかけているのだろう。また、館内のどんな場所でも、スタッフにひと言何かを問えば、充分に納得のいく丁寧な説明がなされる。誇らしげに応えてくれる“帝国ホテルマン”たちがいることが、私にとっても誇らしく、ホテル・ラバーとして、こんなシーンはたまらない。

画像: 本館14~16階に位置するインぺリアルフロアのジュニアスィート。アースカラーの落ち着いた色調や、クオリティ確かなマテリアルがくつろぎを演出

本館14~16階に位置するインぺリアルフロアのジュニアスィート。アースカラーの落ち着いた色調や、クオリティ確かなマテリアルがくつろぎを演出

 さて、世間に知らない人はいない「帝国ホテル 東京」だが、意外と語られないのが客室内のことかもしれない。客室は伝統とモダニズムが融合し、静謐な空気感を漂わせている。華美な装飾や尖ったデザインがないのはこのホテルの流儀だ。滞在してわかるマテリアルの高級感、信頼から生まれる大きな安心感など、リピーターの多い理由は数えきれない。

画像: 旧本館(ライト館)を設計した建築家フランク・ロイド・ライトの意匠を再現した「フランク・ロイド・ライト スイート」。独特なデザインがライトならではの感性を表現した唯一無二の客室

旧本館(ライト館)を設計した建築家フランク・ロイド・ライトの意匠を再現した「フランク・ロイド・ライト スイート」。独特なデザインがライトならではの感性を表現した唯一無二の客室

画像: 同じくフランク・ロイド・ライト スイートのリビング。帝国ホテル東京のシグネチャールームともいえる存在だ

同じくフランク・ロイド・ライト スイートのリビング。帝国ホテル東京のシグネチャールームともいえる存在だ

 そして今回は、ホテルのバックサイドにも迫ってみた。まず案内をお願いしたのは電話交換室。話す相手に顔の見えないオペレーターは、会話する数十秒、数分に全神経を注ぐ。デスクの上には、自分の顔が見えるよう小さな鏡が置かれ、話す前、話しているときにも“上等な顔”ができているかどうかを確認するのだという。声に込められた笑顔は、相手にも必ず伝わるものだから。

画像: 伝統の帝国ホテル流ローストビーフは、フランス料理「ラ ブラスリー」の人気定番メニュー。ブフェレストラン「インペリアルバイキング サール」(ディナー)でも提供される PHOTOGRAPHS: COURTESY OF IMPERIAL HOTEL TOKYO

伝統の帝国ホテル流ローストビーフは、フランス料理「ラ ブラスリー」の人気定番メニュー。ブフェレストラン「インペリアルバイキング サール」(ディナー)でも提供される
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF IMPERIAL HOTEL TOKYO

 次に訪れたのは、凍てつく冷凍庫。筆者も初めての入場である。「ブッチャー」と表示されたドアの内側に入れてもらうと、「地下には肉のためのスイートルームがあるんです」と聞かされた。室温2℃以下。鮮度を争う魚とは違い、エイジングの熟成期間を過ごす、肉専用のスイートルームである。防寒具に身を固めた肉専門のシェフが、そこで脂、水分、身の締まりを確かめる。さらに、すべての肉は専門家の目を通すという。厳選に厳選を重ねる裏方のプロの仕事を知るほどに、レストランでの味わいにも深みが増してくる。ランドリーチームによるクリーニングのこまやかな技も仕事ぶりも、TV番組で公開され、今では広く世間の知るところだ。こうしてさまざまな部署部署が、互いにクオリティを競い合い、切磋琢磨しているという。

“縁の下の力持ち”が本当に力を発揮し、プロの誇りと実力を見せつける。こうして、「帝国ホテル 東京」は表も裏も、一部のすきもない高品質を維持し続けているのである。

帝国ホテル 東京(IMPERIAL HOTEL TOKYO)

住所:東京都千代田区内幸町1-1-1
予約電話: 03(3504)1111
客室:全931室
料金:¥53,460~
(1泊1室2名の料金。サービス料・消費税込) 
 ※日によって料金が異なるため、要問合わせ
公式サイト

せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および 関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com

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