TEXT & PHOTOGRAPHS BY MARI KATSURA

大黒ふ頭客船ターミナルに停泊中だった豪華客船「クイーン・エリザベス」。その大きさは壮観だ。
豪華客船「クイーン・エリザベス」で魅惑の船旅を体験
20代の頃、カリブ海の5つの島を巡るクルーズ旅をしたことがある。未知の島々を大型客船で巡るというだけでもワクワクだった。数年前には香港の客船に泊まる旅を取材したが、世界のクルーズラヴァーが憧れ、海の女神ともいわれる豪華客船、キュナード社のあまりにも有名な「クイーン・エリザベス」での旅は、もちろん初めて。その人気の理由を体験すると、どこをとっても絵になる美しい客船、尽きない感動をのせた船の旅の格別な魅力の虜に。華やかな歴史やサービスだけではなく、充実のエンターテインメント、選択肢豊かな美食の世界、寄港地の魅力を享受しつつ、リゾート気分の非日常も満喫できる。この上ない旅にクイーン・エリザベスが連れていってくれた。

港から見上げたキュナード社のクイーン・エリザベス号
DAY1:横浜の大黒ふ頭を出航。豪華客船は広島へと航路を進む
忘れてはいけない持ち物は、パスポート、水筒、楽しい気持ち。船で過ごす時間は、のんびり過ごすにはあまりあるスケジュールが毎日届く。5泊6日の旅はまず、横浜の元町・中華街駅近くの山下公園から出るシャトルバスで、壮麗な船が待つ大黒ふ頭客船ターミナルへ。山下公園でバスに預けたスーツケースは客室に直接運ばれる。配送サービスもあるそうで、長旅で荷物が多くても安心だ。クイーン・エリザベスは横浜ベイブリッジをくぐることができない大型客船なので、大さん橋ふ頭からではなく大黒ふ頭客船ターミナルからの出航だった。

美しいグランドロビー。初代クイーン・エリザベス号をモチーフにした寄木細工も素晴らしい
噂に違わぬ麗しきクイーン・エリザベス。船旅の黄金時代に大西洋定期航路を行き来していた当時の名残を体感できる、世界で最も名の知れた客船だ。僥倖に恵まれ乗船した今回の船は、2010年にデビューした3代目。全長294メートル、乗客定員2081名、デッキ1~12まである12階建ての大型客船だ。“Welcome Aboard”と迎えてくれるスタッフとともに、まず目に飛び込んでくるのは、船の中央となるデッキ1~3階が吹き抜けになったアトリウム、グランドロビー。エリザベス女王の甥、第2代スノードン伯爵の手による寄木細工の初代クイーン・エリザベスの壁画が荘厳だ。この船はイギリスの船なので、港からタラップを数歩渡っただけでそこは英国領地となるがゆえにパスポートも必携。アールデコ調のクラシックな景色、宮殿のような世界が広がりに、ひと目惚れするしかなかった。まさに動くラグジュアリーホテル! エレベーターホールに至るまで、どこを切り取っても美しい内装に圧倒され、テンションは上がるばかり。

エレベーターホールも隅から隅まで美しい

パブ、ゴールデン・ライオンでオーダーしたフィッシュ&チップスとキュナード オリジナルビール
13時半のチェックイン予定だったが、勢い余って集合時間よりだいぶ早くに港に着いていたので、乗船するや否や、遅めの昼食をとろうと2階にあたるデッキ2のパブ、ゴールデン・ライオンへ。キュナード・ゴールドビール入りの衣を纏わせ揚げたフィッシュ&チップスとオリジナルビールのテイスティングセットを頬張り、英国気分にどっぷり。味と雰囲気は本場イギリスそのもので、旅気分の着火剤となった。イギリスのブルワリーと共同開発したオリジナルのビールはキリリと冷えていて、染み渡る美味しさ。飲み比べもできる。シガーを愛したウィンストン・チャーチルの名をつけたシガーラウンジ「チャーチルズ」も、パブやバーのように趣きがあるので必見だ。

チャーチル元英国首相といえばシガー。船内にはその名を冠したシガーラウンジが
麗しい客室が船旅期間の“我が家”に

ウェルカムシャンパンが用意されていた
そしてもちろん客室も麗しい。長旅用に設えられた、ゆったりとしたクローゼット、日本と同じ差し込み口まであるコンセント、アメニティはイギリス王室御用達ブランドでもある、シトラスの香りのペンハリガン! 全室にウェルカムシャンパンが用意されている。客室の飲料水は有料。客室でお湯を沸かしたい時などは、船内2カ所にウォーターサーバーがあるので持参の水筒が重宝する。そのサーバーにはペットボトル何本分が使われずに済んだと表示が出て、気分も良くなる。
船旅は、荷解きしたらその後下船するまで、そのままパッキングすることなく、さまざまな港町を観光できるのも利点。部屋にはオーバーサイズの肌触りのいいバスタオルがあり、プールサイドでもチェックのブランケットと共に貸し出しもしている。ふかふかのバスローブもうれしい。

客室のバスタオル。キュナードのロゴが入っている
客室は、バスタブつきの約128㎡のグランド スイートから海に面していない約14㎡のスタンダード(内側)まで、大きく分けて4つのカテゴリー(ブリタニア、ブリタニア・クラブ、プリンセス・グリル、クイーンズ・グリル)があり、さらにシングル客室など含めさまざまな種類が。デッキ12まであるうちのデッキ4~8がメインで、上級キャビンから売り切れるのだそう。今回滞在したのは21㎡の海側バルコニーの部屋・“ブリタニア”。海を見ながらヨガをするのにも十分な広さのリビングエリアがあり、毎朝異なる景色を見せてくれるテラスが独り占めできるのも最高に気持ちがよかった。

(左)客室のベッドにはキュナード社のロゴ入りピローが (右)客室からベイブリッジを眺めて
出航時間に合わせて9階のデッキ(デッキ9)で生演奏があり、シャンパンを片手に夕陽と富士山とベイブリッジに乾杯。クイーン・エリザベスではローラン・ペリエ・ラ・キュヴェ・シャンパンなど、ワインやカクテルも楽しめる。船内は一部のレストランと、ソフトドリンクおよびアルコールが別料金なので、事前予約もできるドリンクパッケージの利用が便利だ。

デッキ9の船尾で、旅の友とシャンパンのグラスを傾ける

ベイブリッジの向こうには富士山が
キュナード社が誇る客船、クイーン・エリザベス
英国で創業し、185周年を迎える1840年創業の海運会社キュナード社。1840年は、ペリー来航の13年前に当たる。1940年初代の就航にあたり、1938年にエリザベス王妃にちなんで命名された唯一無二の、当時世界最大の客船だそうだ。2010年に就航した3代目は、2018年に客室やスパ、2025年にクイーンズ・ルームの調度品などが新調され、優美さがブラッシュアップされている。世界で唯一英国女王の名前を冠することが許されたクルーズライン。エリザベス女王が命名したクイーン・エリザベス2(註:2008年に引退)には、女優のエリザベス・テーラーが乗船するなど数々のセレブリティにも親しまれた。クイーン・メリー2、クイーン・エリザベスに続き、2007年にクイーン・ヴィクトリアが、2024年にクイーン・アンが加わった。前述の通り4つの客室クラスがあり、クラスごとにメインダイニングルームが異なる伝統のスタイルを維持しているのも特徴だ。
エレベーターに乗り合わせたフロリダから、メキシコから、イギリスからといった国際色豊かなキュナーダー(註:お客様、とくにリピーター)たちとのスモールトークも楽しかった。横浜で乗船した日、シンガポールから引き続き旅を楽しんでいるご夫婦からかけられた挨拶は、”Are you new?”だった。
初日のディナーはリド・レストランで

リド・レストランでいただけるピザ
この日のディナーはカジュアルなビュッフェ、デッキ9にあるリド・レストランへ。ここはコーヒーやお茶、ジュースも自由に選べるオールデイダイニング。気分の上がるサラダバーからデザートまで目移り必至の充実さで、さらにソースやチーズ、トッピングに至っては27種から選び、窯で焼き上げるピザが人気。イタリア出身のアウレリアーノ・マッツェッラ船長のお墨付きの熱々がいただける。ちなみに、クラブごとのメインダイニングでの食事やアフタヌーン・ティーなど、基本的な食事はクルーズ代金に含まれているが、一部有料のレストランもある。また、6月からはグリルクラスと朝食を除き。ルームサービスも有料となる。
客室に毎晩翌日のデイリー・プログラムが届くので、翌日の予定をチェックするのが乗船日からの日課になった。

毎晩届くデイリー・プログラム
DAY2:豪華客船は広島をめざし、厳かに進む

デッキ9のパビリオン・プール。子供も利用できる
出航2日目。目覚めると、穏やかな海に朝陽の道が輝いていた。快晴だったので、朝ごはんは、この春新しくできたというデッキ9にあるプールサイドの「ウェルネス・カフェ」で。ヘルシーなメニューが並び目移りするが、サワードゥブレッドのグリーンピースと枝豆ワカモレ、ポーチドエッグのせと、ギリシャヨーグルト、ストロベリー、ピーチ、ジンジャーコンポート、トーステッドピスタチオ&シーズ、フレッシュカットフルーツをチョイス。ランチメニューにはナスのペースト、ババガヌーシュや、デザートにナッツバターとチェリージャムのチアシードカップなどもあり、ヘルスコンシャスな気分に沿ってくれる。ここには卓球台が2台あり、スパやジムが近い。ひとつ上のデッキには、テニスの縮小版のようなピックルボールコート、ゴルフ、卓球、クリケットなどの施設まである。

デッキ9のプールサイドにある「ウェルネス・カフェ」にて。メニューはどれも目にも鮮やか

デッキ11の屋外施設、ゲーム・デッキ。

デッキ9のパビリオン・プールそばには卓球台もあった
客船内は魅力が満載。お気に入りエリアが必ず見つかる

見渡す限りの海
今回のクルーズは、「新緑の西日本周遊と韓国10泊」。寄港地着岸日ではない、海の上でゆったりと過ごす一日もあり、存分に船旅の魅力を享受できた。カジュアルにもラグジュアリーにも過ごせ、飽きることのないエンターテインメントも目白押し。ダンスホール、クイーンズ・ルームでの社交ダンスやアフタヌーンティーなどイギリスらしいイベントがあまたあり、中にはフルーレ・フェンシング入門、ビンゴ、ゴルフのチッピング大会、ブリッジ、麻雀、映画、元英国王室執事グラント・ハロルドの講演といったプログラムまで! 参加しきれないラインナップのまさに娯楽の楽園なのだ。

潮風が心地よいデッキ3のプロムナード

デッキチェアにも入っていたキュナード社の紋章。英国王室とのつながりや伝統を感じさせる
個人的に特にお気に入りの場所となったのは、デッキ3のプロムナード。潮風を感じながらウォーキングをしたり、デッキチェアでのんびりくつろいだりすることもできる。ネイビーと白のデッキチェアが大航海時代を彷彿とさせる佇まいで、3往復すると約1,450mになると表示があった。有料のWi-Fiを追加すれば、オーシャンビューの好みの場所で優雅なワーケーションも可能だ。コーヒーやお茶がセルフサービスで飲め、おやつの時間もあるデッキ9の「リド・レストラン」でラップトップに向かうというのもすこぶる気分が良い。
ボリュームたっぷりのランチに舌鼓

デッキ9のリド・レストラン

リド・グリルのハンバーガー。おいしい!
ランチもリニューアルしたてのデッキ9後方、パノラマ・プール・クラブのパラソルの下で、美味しいと噂のリド・グリルのハンバーガーを! ビュフェのサラダバーのサラダもつけて。ビュッフェには発酵商品であるマーマイトやベジマイトが当たり前のように並んでいるのもイギリスらしい。プールサイドを見下ろすデッキで、やわらかな海風に吹かれながら日光浴すれば、BGMにシャーデーが流れているなど、ここでもイギリスムードに包まれる。イギリスを旅しながら日本の名勝を訪れる感覚にもワクワクした。

(左)リド・グリルのサラダバーのサラダ。ハンバーガーと一緒にいただいた(右)ビュッフェにはイギリスならではのマーマイトとベジマイトが
何度も行った大好きな英国に想いを馳せて

クイーンズ・ルームはデッキ2に
昼食後、クイーンズ・ルームで耳を傾けたピアニスト、ジェームズ・ロングフォードのコンサートも楽しく、彼がワイト島出身と聞き、美しい島を巡った思い出とあいまってまた胸が熱くなった。イギリスは、プライベートでも撮影や取材でも様々な地方を訪れたが、ワイト島も夢のように美しかった。見学しようと探していた個人宅を偶然案内してくれたミセスが、お茶にと家に招いてくれ、庭で息子さんがバイオリンまで披露してくれたのだ。そのおもてなしに旅の友は涙が止まらなくなり、それを見た彼が「僕の演奏が下手で???」と微笑みながら戸惑っていたのが忘れられない。母の英国趣味も手伝い、自分の中のイギリステイスト好きが蘇るのを再確認できたものだ。ちなみに航海中もイギリスを意識して毎日リバティプリントの服を着たし、フォーマルシーンで着たシルクのトップスはJ&M DAVIDSONだった。

故・エリザベス女王の美しい肖像画も飾られていた
航海中“アットシー”のお楽しみは、ショッピングにもある。コレクターも多いオリジナルグッズを扱うショップや、オリジナルのジンも人気で、前述したように船内は英国領地なので、陸を離れるとジョー・マローンなども揃うデッキ3の免税店がオープンするのだ。
豪華クルーズならでは。ドレスコードあり、なディナーへ
服装については、毎日17時30分以降はスマート・アタイアがドレスコードだが、カジュアルウェアで過ごしたい日は、リド・レストラン、ゴールデン・ライオン、ガーデン・ラウンジなどを選べば、気負うことなく利用できる。
この日の夜は、事前にテーマが知らされるキュナード伝統のテーマナイト、「ブラック&ホワイト」。ガラ・イブニングのドレスコードは、タキシードや蝶ネクタイ、ロングドレスやカクテルドレスだけでなく、スマートなパンツスーツなど、結婚式のフォーマルウェアと考えればいいそう。着飾った紳士淑女の華やいだ雰囲気や、プロダンサーによるダンスも非日常の極みで目の保養だった。

デッキ2&3にある「ブリタニア・レストラン」。吹き抜けの上から見るとこんな感じ
ドレスアップした臨んだガラ・ディナーは、吹き抜けのデッキ2と3にある華麗なメイン・ダイニングの「ブリタニア・レストラン」で。エビとロブスターのコロッケ、トリュフ風味のローストオニオンスープ、鴨胸肉の北京風マリネをチョイス。非の打ちどころのないスタッフたちの心地よいサービスを添えた美味しい時間を過ごせ、デザートのバニラ・レモンスフレ、リモンチェッロ・ソースも雲のような口溶けで夢のようだった。ちなみに予約はマイボヤージという、船内デジタルサービスでできる。このマイボヤージは船内でスマートフォンなどモバイルをWi-Fiにつなげば利用できるサイトでとても便利だった。

メイン・ダイニングのブリタニア・レストランにて

コースメニューからチョイスした鴨胸肉のお料理

(左)デザートのバニラ・レモンスフレ(右)ふわふわスフレにとろとろのリモンチェッロ・ソース
ロイヤル・コート・シアターやバーで、夜も楽しいひと時を
食後に劇場で観劇した、ロイヤル・コート・シアター・カンパニーによる人気ミュージカル楽曲の数々を散りばめたオリジナルのショー「ビー・アワ・ゲスト」も白眉。衣装も美しく、観劇が日常のロンドナーになった気分で、感激だった。デッキ1、2&3にある800名収容可能なロイヤル・コート・シアターは、エリザベス女王が観劇したボックス席もあるゴージャスな劇場。心に響く本格的なショーも予約なしで楽しめるのには正直驚きが隠せなかった。

オリジナルのショーが白眉だったロイヤル・コート・シアター
一日の終わりに寄ったミッドシップス・バーは、初代クイーン・エリザベスから名前を受け継いだバーで、オリジナルのジン&フィズ、カクテルも用意。

クラシカルな雰囲気のミッドシップス・バー
たとえばこの船オリジナルのクイーン・エリザベス・ジンは、伝統的な蒸留酒用のタップから注がれる。キュナード4クイーンズ・ジンは、エディンバラのピッカリングスとのコラボレーションから生まれたオリジナルジン。トライしたクイーン・メリー2エディション「ほのかなアメリカ大陸の香り」は、アップル、シナモン、チェリー、松、ラズベリーリーフのほのかな香りだ。グランドロビーから聴こえてくるアコースティックギターに耳を傾けながら楽しんだ。このバーは、デッキ3のオープンスペースにあるので、ふらりと寄れるのがいい。
ほろ酔い気分で部屋に戻れば、チョコレートつきのターンダウンサービスも済んでいて、明日のデイリー・プログラムが用意されていた。

(左)伝統的な蒸留酒用のタップ (右)キュナードのクルーズでしか飲めないオリジナル
DAY3:広島寄港日。まずはおいしいモーニングから
目覚めると、瀬戸内海の島々がゆっくり通り過ぎていく。朝食はすっかりお気に入りのリド・レストラン。目の前で次々に焼き上げているふわふわのバターミルクパンケーキ。ビュッフェのプレートもビレロイ&ボッホというのにも感心。

リド・レストランでの朝食でいただいたふわふわのパンケーキ
広島港から宮島、厳島神社へ

赤い鳥居が美しい、宮島の厳島神社
今日は横浜を出港してから初の寄港日。下船時にはパスポートと、部屋のカードキーで船内でのエクストラチャージに使えるIDカードの携帯が必要だ。船が着く港にはシャトルバスが用意されていて、広島港までいける(ちなみに徒歩だと15分ほど)。広島港の前には市電の駅もあるので、市内観光にでかけるのにも便利。いっぽう宮島行の高速船も出ていて、宮島港まで30分。今回はその船に乗り、初めてユネスコ世界文化遺産の厳島神社に参拝。友人が永遠に食べられると絶賛していたミヤトヨ本店のもみじ饅頭も買い、ランチに、別の友人のお勧めの創業明治34年という「あなごめしうえの」に寄って、穴子丼に舌鼓。かつて駅弁だったというそれは、想像を超える美味しさだった。

(左)宮島の名店「あなごめし うえの」で穴子丼を堪能 (右)宮島土産はもちろんもみじ饅頭

広島市消防音楽隊の演奏に見送られて
船に戻り、夕刻に出航。港で地元の方々が旗を振り、いつまでも見送ってくれた。広島市消防音楽隊の演奏もあり、大型客船での旅でなければできない貴重な体験に感激だった。
寄港地での限られた滞在時間内に効率的に人気スポットをバスでめぐる寄港地観光ツアーもあるのでおすすめ。ツアーはほかにも、操舵室や毎日約2千人の食事を提供する厨房、シアターのバックステージなどクイーン・エリザベスの裏側見学ツアーも評判で、早めの予約を推奨している。
船内のプログラムも至れり尽くせり
船ではまた思い思いに楽しめる船内でのプログラムが待っていた。クイーンズ・ルームでのズンバから、本格的なマジックショー、キュナードオリジナルのミュージカルダイジェスト公演など、もてなしの心のこもった素晴らしいショーに胸が熱くなる。この日はクイーンズ・ルームで、プリンス、マドンナ、a-haなどの80’sミュージックが生バンドで楽しめ、大いに盛り上がっていた。ニューオリンズ・トラッド・ジャズ、ダンスフロアのバンドと迫力のヴォーカル、弦楽三重奏が同じフロアで同じ時間に楽しめるのも興味深かった。数歩歩けばまったく異なるエンターテイメントの世界が広がり没入できる、こんな場所がほかにあるだろうか?
客室ではテレビでどこを航海中なのかがわかり、船内ダイニングの説明や、毎朝日本語の案内番組があるのも良かった。

客室のモニターではどこを航海しているかがわかるようになっている
船の旅も3日目。いつかまたクルーズの旅にいきたいと抱いていた夢が、唯一無二の豪華客船クイーン・エリザベスで叶った。目に映るものがすべて美しく、歴史を継承する佇まいやサービスに圧倒された。ここまで書いてきたように、食事もエンターテイメントも素晴らしく、あっという間に充実の航海の半分が過ぎてしまった。
船内では基本的にお財布いらずなのも良かった。ジムのプログラム、アルコールドリンク、ソフトドリンクの一部やレストラン「ステーキハウス・アット・ザ・ベランダ」、「リド・テーマレストラン」、スパ、エクスカージョン、Wi-Fi以外は基本的に料金に含まれていて、チップもまとめて支払えるし、ショッピングも部屋のカードキーでできる(6月からルームサービスは有料)。
洋上の女神クイーン・エリザベスでは、船旅の魅力、寄港地の散策、リゾート気分でプールサイドのデッキチェアでのんびり読書など、そのすべてが叶うのだと確信した。【後編に続く】

白い航跡が続く
桂まり
雑誌「SPUR」「eclat」などで、フード&トラベル、インタビュー記事を担当するライター。趣味は世界各国で料理教室に行くこと。温泉保養士。Instagramはこちら
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