2017年、坂本龍一はわれわれに新境地をのぞかせた。8年ぶりに発表した新作アルバム『async』では、雨や風の音、金属音、擦れや残響、朗読する人の声などをサンプリングし、“楽器で演奏していない音”を音楽化することに挑戦。一方、その楽曲を14チャンネルの音響システムで再現し、映像などの表現も組み合わせたインスタレーション作品「設置音楽」として、展覧会形式で披露した。現在、その「設置音楽」シリーズの続編で、『async』から続く一連のプロジェクトの最新版とも言える《IS YOUR TIME》が、東京・初台のICCで公開されている。



(写真左)1999年に上演したオペラ《LIFE》以降、

坂本龍一のコラボレーターを務めているアーティストの高谷史郎

(写真右)坂本龍一

PHOTOGRAPH BY ZAKKUBALAN



展示空間にはピアノ、LEDモニタと14チャンネルの音響を実現するスピーカー、

そしてラジオも配置されている

PHOTOGRAPH BY MASANOBU MATSUMOTO



 このインスタレーション作品を特徴づけるのは、真っ暗な空間に置かれた一台のピアノだ。天板には埃が落ち、いくつかの弦は壊れている。2017年11月4日に公開されたドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto : CODA』(http://ryuichisakamoto-coda.com)を観た方にはわかるだろうが、これは、その冒頭に彼が出会う、東日本大震災で津波に流されたピアノである。水没により、もはや正しいドレミの音が出せなくなったこのピアノを、彼は“人ではなく、自然が改めて調律したモノ”として捉え、その音にひかれていった。

 そして本作ではこのピアノを、鍵盤部分に自動打鍵機をとり付け、プログラムに沿って自動演奏する新しい楽器に作り変えた。プログラムのソースは、世界各地で計測される地震のデータ。ピアノは、地震という地球の鼓動の音を奏でるメディアになり、その音は、このピアノだからこそ特別な意義を持つ。



水没したピアノの鍵盤部分に特殊な装置を施し、

プログラミングに沿って音を鳴らす仕掛けに。

このピアノの音は、アルバム『async』でも使用されている

PHOTOGRAPH BY MASANOBU MATSUMOTO



 ピアノの音、そして『async』からの楽曲、LEDに映し出される高谷史郎のディレクションによる映像やポツンと置かれたラジオ。ひとつの空間のなかにさまざまな要素を配置する形で《IS YOUR TIME》は構成される。音を作り、音を奏でるモノを作り、空間までを作る。シリアスな物語性とともに、“作曲”という行為の範囲を自由に拡大する、現代音楽家としての坂本龍一の企ても、この作品の醍醐味だろう。




坂本龍一 with 高谷史郎 | 設置音楽2  IS YOUR TIME


会期:〜2018年3月11日(日)

会場:NTT インターコミュニケーション・センター[ICC]

住所:東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー 4F

開館時間:11:00〜18:00

休館日:月曜、年末年始(2017年12月28日〜2018年1月4日)、2月11日

入場料:一般・大学 ¥500、高校生以下無料

公式サイト






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