かつては剣豪や武将に憧れた男性が、現代ではゲームに熱狂する女性たちが、刀剣を追いかける。21世紀刀剣ブームの到達点となる特別展『京のかたな』が開催中の今、日本刀の新しい見方、楽しみ方を橋本麻里が伝授する

BY MARI HASHIMOTO

 9月末から京都国立博物館で開催されている特別展『京のかたな』。始まる前からSNSを中心とする、異様なほどの熱気の高まりを感じていた方も多かったのではないだろうか。鑑賞も蒐集も年配男性の趣味、と長く思われてきた刀剣が、オンラインゲームをきっかけに注目を浴びるようになったのは2015年以降のこと。集客力という点で今ひとつだった刀剣をテーマとする各地の美術館・博物館での展示に、今や女性客が大挙して詰めかけている。

刀剣そのものの鑑賞はハードルが高いにもかかわらず、歴史的な名刀が背負う、「信長や秀吉らの名将が携えた」、あるいは「鬼や幽霊を斬った」という“物語”が、人の生死、一国の命運をかけた瞬間とも関わりながら、現代の私たちをたやすく魅了してしまうからだ。その熱量がついに国立博物館を動かしたか......と世間では思われているようだが、これは少し違う。

画像: 阿国が立つのは、能舞台を継承した簡略な舞台 《阿国 歌舞伎図屛風》 17世紀初、 紙本金地着色、六曲一隻、京都国立博物館蔵、重要文化財 © KYOTO NATIONAL MUSEUM ほかの写真を見る

阿国が立つのは、能舞台を継承した簡略な舞台
《阿国 歌舞伎図屛風》17世紀初、 紙本金地着色、六曲一隻、京都国立博物館蔵、重要文化財
© KYOTO NATIONAL MUSEUM
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 2018年を期して『京(みやこ)のかたな』展が企画されたのは、ゲームがリリースされる2年も前の2013年。国立博物館で刀剣をテーマとした大規模な展覧会が開催されるのは、1997年に東京国立博物館で開催された『日本のかたな』展以来、じつに21年ぶりのこととなる。昭和の刀剣ブームは遠ざかり、研究者の数も減りつつあった。だがここで刀剣研究の灯を消すわけにはいかないと、ほとんど「負け戦」を覚悟しての企画だったそうだが、まったく思いも寄らぬ「援軍」のおかげで、最高の盛り上がりのうちに開幕を迎えることになった。

『日本のかたな』と対を成すようなタイトルは、『京のかたな』。王城の地・京都は、日本刀が最初に生み出され、備前や美濃、相州などさまざまな地域へと広がっていった起点であり、再びそこから還流してきた技術や人を受け入れることで、盛衰を繰り返しながら名刀を生み続けてきた、“かたなの都”でもある。そして刀剣は単なる殺傷用の武器ではなく、天皇位を象徴する神器、また武家の威信を示す儀仗、そして現代では鑑賞のための美術品という、多彩で複雑な属性を備えている。展覧会では、こうした刀剣の多面性や、公家、武家、町衆たちが織りなす歴史の中で果たした役割などに注目しながら、京=山城国で打たれた作品を中心に紹介する。

 刀剣鑑賞とは、言ってみれば「鉄」を鑑賞する技術と文化だ。刀身の姿、また折り返し鍛錬(鋼中の不純物を除去し、炭素の含有量を調整する工程。加熱した玉鋼を打ち延ばし、折り返してという鍛錬を繰り返すことで、鋼中の不純物は火花となって飛散する)と焼入れによって、さまざまな景色を描き出す鉄の芸術は奥深いが、慣れぬ目にはいささかハードルが高い。今展では、そうした刀剣初心者にとっての入り口となる、これまた名作揃いの絵画作品も多数出展されている。

 

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