BY KAORU URATA
明治維新150周年と日仏友好条約160周年を記念する日本文化紹介大型行事『ジャポニスム2018』が2018年7月から2019年2月まで、フランスで開催されている。展示会、舞台、コンサートなど50以上のイベントが予定される中、1万点を超える日本美術コレクションを誇るパリの装飾美術館 Musée des Arts Décoratifs の『ジャポニスムの150年』展が話題を呼んでいる。
装飾美術館 は、明治元年とほぼ同時期の1864年にルーブル美術館に隣接して建立された。西洋と東洋の卓越した装飾美術を収蔵、展示する文化の担い手として、開館当時から日本美術をいち早く評価し、収集してきた。近年は、プロダクト・デザインを収蔵する空間をリニューアルして名称をMADに省略。時代にふさわしい美術館の位置づけを図り、イメージを刷新し続けている。伝統と革新を柔軟に行き来する、意欲的なミュージアムのひとつである。
『ジャポニスムの150年』展は、「発見者」「自然」「時間」「動き」「革新」の5つのテーマで構成され、美術、工芸、プロダクト・デザイン、グラフィック、写真、ファッションといった多くのカテゴリが扱われている。
装飾美術館長で総合監修を手がけたオリヴィエ・ガベは、「さまざまなカテゴリの専門家の視点を融合することで、横断的な考察が可能な展示になることを目指しました。当館の誇る膨大なコレクションに日本の美術館や個人所有者からの貸し出し品や現代作家の創作が加わったことによって、日本美術全体を俯瞰し、その価値をより明確に伝える構成が可能になりました。1万4千点の展示品が、ジャポニスムの過去と現在を語ります」と語る。
同館のアジアコレクション担当でキュレーターのベアトリス・ケットによる作品選考は、日本側でフランスの要望をキャッチしてアドバイスをされた工芸史家の諸山正則氏と、21_21DESIGN SIGHT アソシエイトディレクターの川上典李子氏の多角的な視点が加わったことによって、より豊かさを増した。
鎖国時代に終止符を打ったばかりの日本は、ヨーロッパの人々の目にどんな姿に写ったのだろうか。ジャポニスムは1860年頃に生まれ、フランスのアーティストや職人、産業に多大な影響を与えてきた。19世紀後半から20世紀にかけて欧州で日本美術への関心が急激に高まっていく中、1867年にパリで開催された万国博覧会では、画廊やコレクターたちがこぞって所有する日本美術の作品を展示し、その美を広く知らしめた。『ジャポニスムの150年』の「発見者」の展示では、初めて日本美術を美術館で展示したパリ装飾美術館ほか、こうした日本美術紹介の“先駆者”たちの足跡をたどる。