7月からフランスで開催され、大きな反響を呼んでいる『ジャポニスム2018』。パリ在住のライター浦田 薫が、1万点を超える日本美術コレクションを展示するパリ「装飾美術館」のもようをレポート

BY KAORU URATA

 続く「自然」の展示では、植物や鳥、昆虫など、生活周辺の自然にインスピレーションを受けた作品が並ぶ中、空間中央部に展示された現代金工作家、高橋賢悟の作品「flower funeral -deer-」に目を奪われた。日本鹿の骨格を、薄さ0 .1mmほどに鋳造したわすれな草で埋め尽くしているのだ。死んだ動物に花を手向けるという日本らしい死生観の表現に加え、明治の名工に触発されたという緻密を極めた技法には圧倒されるばかり。高橋は、「古来、さまざまな素材を扱う技術が発展してきた日本の工芸においては、素材との独特の向き合い方も重要な特徴」であると捉え、アルミニウムという現代の素材をあえて選択している。

画像: 高橋賢悟の作品「flower funeral -deer-」 © KENGO TAKAHASHI ALL RIGHTS RESERVED

高橋賢悟の作品「flower funeral -deer-」
© KENGO TAKAHASHI ALL RIGHTS RESERVED

 作品の選考や展示構成に携わった川上典李子氏は、「美術館の150年に及ぶ収蔵作品のなかで、各時代につくられてきたさまざまな作品と対話するように現代作家の新作を配置しました」と話す。「髙橋さんの試み、生命を問うメッセージに富んだ作品を、こうして歴史のなかで描かれてきた花とともに展示するというのは、ほかでは実現しえない試みでした。パリ装飾美術館の方々と会話し、同じ想いで展示ができたこと、それによって、日仏がそれぞれに大切にしてきた表現の歴史や想いに改めて心を向ける展示が実現できたことをとてもうれしく思います」

 川上氏自身がつねに大切にしているのは「違いを知ること、感じとること。そのうえで浮かびあがる共通点を意識すること」だという。「同時に、多視点の重要性も感じています。さまざまな角度から歴史や現在の状況に目を向け、未来を考えること。視点が変わることで、とらえ方が変わることもあります。複数の視点が交差する中での対話によって、そこから重要なものを探っていけるのでは」

画像: 日本の明治時代以前の生活を紹介する展示風景 PHOTOGRAPH BY LASZLO HORVATH

日本の明治時代以前の生活を紹介する展示風景
PHOTOGRAPH BY LASZLO HORVATH

「時間」の展示では、150年間におよぶ日仏相互交流、日本-ヨーロッパ間の対話を見ることができる。ここで前述の金工作家・高橋賢悟の目に留まったのは、フランスの人間国宝でもあるプリーツ職人、ピエトロ・セミネリによる一枚の布を折った甲冑のような作品「Sanetomo」だという。「布を折るという作業だけでこんなにも美しい作品を作りあげていることに感銘を受けました。折り紙という文化をもつ日本人には親しみやすく、また作品の凄さも直感的に理解できるはず。鍛金の一枚絞り(一枚の板を叩いて造形物を作り上げる技法)にも類似する感性があると思います」。こうして会場内で作家同士が刺激しあい、次の創作モチベーションへと変換されていく。過去から現在、そして未来へと創作が発展していく力に限界はない。

 日本から西洋へ、西洋から日本へと相互に影響を与えた芸術作品に焦点を当てた「動き」のコーナーでは、池 将也の有機的な竹の作品「艶やか」が、パリ装飾美術館が収蔵する三宅一生の白い衣服「COLOMBE(コロンブ)」と呼応するように配置された。長谷川 絢の竹の作品「萌芽」も同様で、収蔵作品と響き合うような展示を意識していると川上氏は語る。

画像: TAKT PROJECTによる作品「Dye It Yourself 2015」 PHOTOGRAPH BY MASAYUKI HAYASHI

TAKT PROJECTによる作品「Dye It Yourself 2015」
PHOTOGRAPH BY MASAYUKI HAYASHI

「革新」では、現代の技術を積極的にとりいれ、乾漆作品に取り組む土岐謙次の作品が、デザインの未来に目を向けるTAKT PROJECTや中里唯馬のプロジェクトとともに展示された。ここでは、素材そのものの概念を問い、もののつくり方を探る TAKT PROJECT の提案型プロジェクトが興味深かった。大量生産される工業製品を象徴するプラスチック素材を一点ずつ染色することで、工業製品と工芸を結ぶものづくりのあり方を問いかける。あるいはまた、街中の造形を収集してオブジェにする最新のプロジェクトでは、渋谷のゴミ袋のフォルムからつくった美しい照明器具を紹介している。

 

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