今回は、ゴールデンウィーク中に訪れたい展覧会を厳選。7年目を迎えた「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。ムーミンの意外な素顔も発見できる「ムーミン展」。そして、サックス奏者、俳優として広く知られたジョン・ルーリーによる絵画展

BY MASANOBU MATSUMOTO

『ムーミン展 THE ART AND THE STORY』
|森アーツセンターギャラリー 

 小説にはじまり、絵本、新聞連載コミック、アニメなどさまざまなかたちで人々に愛されてきた、トーベ・ヤンソンの「ムーミン」シリーズ。その日本最大級の展覧会『ムーミン展 THE ART AND THE STORY』が、六本木・森アーツセンターギャラリーで始まった。

 会場に飾られるのは、トーベによる「ムーミン」シリーズの挿絵や絵本の原画、スケッチ、フィギュア、グッズまた広告ポスターなど。こうした約500点にもおよぶ作品や資料は、主人公ムーミン・トロールたちの愛らしさと同時に、彼らがただ単純に“かわいい”だけの存在ではないことを伝えてくる。実際、トーベが初期に描いたイラストの中には、雷鳴が響く嵐の夜に木の上に立つ、赤い目で真っ黒な身体をしたムーミン(のようないきもの)もいる。

画像: トーベ・ヤンソン《「ムーミンパパ海へいく」挿絵》 1965年、インク・紙 ムーミン美術館

トーベ・ヤンソン《「ムーミンパパ海へいく」挿絵》
1965年、インク・紙 ムーミン美術館

画像: トーベ・ヤンソン《「ムーミン谷の彗星」挿絵》 1946年、1968年(改作) インク・紙 ムーミン美術館

トーベ・ヤンソン《「ムーミン谷の彗星」挿絵》
1946年、1968年(改作) インク・紙 ムーミン美術館

 ムーミンの本当の“素顔”とは? ーーその答えは、トーベがムーミンというキャラクターに託した思いに隠されており、それを探ることも本展を楽しむ大きなポイントだろう。

 この『ムーミン展』は、作者であるトーベ自身の画業にも光を当てる。彫刻家である父と挿絵画家の母のあいだに生まれたトーベは、小さい頃から芸術家に憧れ、15歳の若さで挿絵画家としてデビューした。「ムーミン」シリーズを手がける以前に、政治風刺雑誌『ガルム』などに寄稿した作品も並ぶ。特に第二次世界大戦の最中は、イラストによって世の独裁者たちをユーモアを交えながら批判した。

 実のところ、「ムーミン」シリーズの最初の小説作品『小さなトロールと大きな洪水』の序文で、 これらのイラストの署名の脇に添えた、“怒った顔をしたいきもの”が、ムーミンになったことをトーベは明かしている。そして、「これはわたしがはじめて書いた、ハッピーエンドのお話」だとも。

画像: (左から) トーベ・ヤンソン《スウェーデンの日刊紙「スヴェンスカ・ダーグブラーデット」広告》 1957年 印刷 ムーミンキャラクターズ社 トーベ・ヤンソン《「フォーレニングス銀行」広告》 1956年 印刷 ムーミンキャラクターズ社 PHOTOGRAPHS: ©MOOMIN CHARACTERS ™

(左から)
トーベ・ヤンソン《スウェーデンの日刊紙「スヴェンスカ・ダーグブラーデット」広告》
1957年 印刷 ムーミンキャラクターズ社
トーベ・ヤンソン《「フォーレニングス銀行」広告》
1956年 印刷 ムーミンキャラクターズ社
PHOTOGRAPHS: ©MOOMIN CHARACTERS ™

 実物の風刺漫画や、その他、トーベの生き方や哲学をひもとく作品や資料もじっくりと目を凝らして鑑賞してほしい。彼女の考えや思いを知れば知るほど、なぜムーミンがこれほどまで多くの人に、また子どもだけでなく大人にも愛されてきたかがわかる。そして、なによりムーミンがいっそう好きになる。

『ムーミン展 THE ART AND THE STORY』
会期:〜6月16日(日)
会場:森アーツセンターギャラリー
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 52F
開館時間:10:00〜20:00(火曜は〜17:00) ※入館は閉館の30分前まで
会期中無休
料金:一般 ¥1,800、高校・中学生 ¥1,400、小学生〜4歳 ¥800、3歳以下無料
電話:03(5777)8600(ハローダイヤル)
公式サイト

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