BY KAORU SAITO, PHOTOGRAPHS BY SAKI OMI(MODELS), SATOSHI YAMAGUCHI(OBJECTS), MAKEUP BY MICHIRU, HAIR BY KOICHI NISHIMURA, STYLED BY YUKARI KOMAKI, MODEL BY EIMI KURODA, SAKI NAKASHIMA, EDITED BY TERUNO TAIRA
ふたつ目に、共感力と寛容性。人々の話に耳を傾け、穏やかな表情で人々に語りかける新しい時代のリーダーたちにそれは明らかだ。特にコロナ禍にて、それぞれに手腕を発揮し温もりあるメッセージと強いリーダーシップで国民の支持を集めたのが、いずれも女性リーダーだったのは偶然とは思えない。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相しかり、台湾の蔡英文総統、ドイツのアンゲラ・メルケル首相またしかり。いずれも人をホッとさせるまろやかな顔だちだ。正義感を支えに平和を自らの使命とする人は、宿命的にたおやかな顔へ導かれていくのだろう。スピリチュアルの世界で、人生の何割かを世のため人のために生きる運命にある「ライトワーカー」と呼ばれる人々の顔も、一様に穏やかだと言われる。人の感情に寄り添う人は、顔も寛容。それも人の心をつかみ動かす、能力のうちなのだ。
そして3つ目は、笑顔の需要が一気に高まったこと。マスク必須の時代、人との関わりも減り、無表情になりがちなことへの反省と反動ももちろんある。さらに、物より心を大切にする“風の時代”。かつての、所有が重要視され、ヒエラルキーある縦社会において力で支配する時代から、もっと自由で平等で、良いものはみんなで喜び合いシェアする時代へと移行する中、力で動かす険しい顔より、自然に人の心が動く、穏やかで温かい“笑顔”が見直されているのは確か。加えてSDGsの気運の高まりや人間回帰の精神、ウェルビーイングの目覚め…… それらがひとつになり、問題や課題をクリアするのは「笑顔だ」との回答が浮かび上がったのだ。
光を操り、みずみずしさと多幸感を発揮する秀逸ラインナップ
驚くなかれ、今秋のスキンケアは「笑顔」がテーマだったりする。真顔も笑顔に見える細胞ケア、笑顔のような艶肌づくり、笑顔を形状記憶させるマスク…… そんな予想もしなかったトレンドが生まれるほど。当然、メイクも笑顔印象がカギとなる。頰の艶、肌の透明感、眉山がない大らかな眉、血色唇、線よりも面、丸の強調……笑顔が足りない人が、そこから始めてみるのも理にかなった方法だ。仮に心からのものでなくても、口角を上げるだけで心身に笑顔の効用がもたらされるから。ボクシングの入江聖奈選手が満面の笑顔で東京オリンピックの決勝に臨み、金メダルを取ったように、すでに科学的に証明されている事実をいよいよ本能でわかってきたから、一人ひとりが笑顔を取り戻そうとしているのだろう。笑顔しか思い出せない人になれたら、素敵だ。
さて今世紀に入り、キャリアアップやリーダーを目指さない女性が増えたとされる。それは女性のエンパワーメントが必ずしも幸せを生まないことを感じ取ったからではないか。でも“幸福そうな顔のリーダー”が次々生まれれば、そうした誤解はとけていくのだろう。気持ちの安定した幸せなリーダーが増えるのは、まさしく社会における女性の進化に他ならないから。人間の美しさは、見る人を心地よくさせるものでなければいけない。威圧する美しさは美しさではない。本当の意味で、美しいリーダーが生まれる機が熟したのである。
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