ルールやスタイルに捉われず、ただ好きなものを愛し、花や緑を愛でる。“自分らしさ”を貫いた素敵な生き方が息づくスタイリスト古牧ゆかりさんの部屋。古牧さんの部屋を数回に分けてレポートし、自分のいる場所を心地よい空気で満たすコツを伺う。第5回は部屋を彩る花たちにフォーカス

BY EMI ARITA, PHOTOGRAPHS BY MAKOTO NAKAGAWA

 おしゃれな家具にギャラリーのように飾られたアート、そして旅先で集めた素敵なものたち……と、古牧さんの“好き”で溢れた部屋は、いつも美しく飾られた花たちが生き生きと彩りを添えている。

画像: 鮮やかな黄色のラナンキュラスのアレンジ

鮮やかな黄色のラナンキュラスのアレンジ

「寝る前や朝起きた時、飾った花を『かわいいな〜』『素敵だな〜』って愛でる。そんな瞬間が私にとっての癒しのひととき。だから、飾るのはやっぱり自分が好きな花が多くなってしまうんですよね。特に好きなのが、薔薇やクチナシ、ライラックなど、香りがふわ〜と広がる花。あとアネモネやラナンキュラス、ガーベラとか、丸いフォルムで、たくさんの色がある花もよく飾っています」。

画像: 黄色のラナンキュラスにうねうねと動きのあるタンチョウアリウムをあわせて。使っている花器は、「アラジンの魔法のランプ」と古牧さんが呼ぶ、ヴィンテージの水差し

黄色のラナンキュラスにうねうねと動きのあるタンチョウアリウムをあわせて。使っている花器は、「アラジンの魔法のランプ」と古牧さんが呼ぶ、ヴィンテージの水差し

 数年前はいけばなのレッスンにも通っていたという古牧さん。いけばなのメソッドを活かしつつ、もともと持ち合わせている古牧さんのセンスでアレンジされた花たちは、どれも素敵だ。

「ブーケのように何種類も花を買い揃えることはあまりなく、多くても4種類くらい。大小リズムをつけて、そこにびよ〜んと伸びるグリーンを足したり、グリーンをベースにして、1本だけ季節の花を挿したり。アネモネのように柔らかい茎のものは、ふにゃっとしっている動きをそのまま活かしてざっくりと生けたり。シンプルに、ざくっと、ダイナミックに生ける。それが自分らしい生け方かな」。

画像: ふわふわしたスモークツリーやアーティチョークなどグリーンをベースに、白い芍薬を一輪添えたシックなアレンジ COURTESY OF YUKARI KOMAKI

ふわふわしたスモークツリーやアーティチョークなどグリーンをベースに、白い芍薬を一輪添えたシックなアレンジ

COURTESY OF YUKARI KOMAKI

画像: コスモスとユーカリの葉を使ったダイナミックなアレンジ。花器は、最近友人から購入したというインド製のガラスの花器。大ぶりの花器のため、底に剣山を仕込んで、そこに花を挿すことでバランスを取っている。「剣山を使うと、花器の大きさにかかわらず、上手にバランスが取れます。2、3本だけ生けたいときにもおすすめです」 COURTESY OF YUKARI KOMAKI

コスモスとユーカリの葉を使ったダイナミックなアレンジ。花器は、最近友人から購入したというインド製のガラスの花器。大ぶりの花器のため、底に剣山を仕込んで、そこに花を挿すことでバランスを取っている。「剣山を使うと、花器の大きさにかかわらず、上手にバランスが取れます。2、3本だけ生けたいときにもおすすめです」

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画像: 仕事で訪れたハーブ農園で入手した食べられる花を使ったアレンジ。花たちのそのままの姿を生かし、まるで大自然の中でそよそよと風に揺れながら咲いている草花を眺めているよう COURTESY OF YUKARI KOMAKI

仕事で訪れたハーブ農園で入手した食べられる花を使ったアレンジ。花たちのそのままの姿を生かし、まるで大自然の中でそよそよと風に揺れながら咲いている草花を眺めているよう

COURTESY OF YUKARI KOMAKI

 陶器のもの、ガラスのもの、あるいは水差しと、花を生けている花器もまた、目を惹かれるものばかり。花器として集めてきた器は50個以上あるといい、その時の花に合あわせて、多彩なコレクションの中から花器を選んでいる。

「作家ものや、プロダクトデザインのもの、骨董市で買ったものと、色も柄も素材も、様々なものが揃っているのですが、特に水差しに花を生けるのが好きなんです。なぜ水差しなのかは自分でもわからないんですが、素敵なものに出会う度に買っていて、今も増え続けています(笑)」。

画像: ピンクの水差しに生けたアネモネのアレンジ。赤や紫と同系色の中に、白を入れることでアクセントに。動物たちに囲まれて楽しげな雰囲気に包まれている COURTESY OF YUKARI KOMAKI

ピンクの水差しに生けたアネモネのアレンジ。赤や紫と同系色の中に、白を入れることでアクセントに。動物たちに囲まれて楽しげな雰囲気に包まれている

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画像: さわやかなサックスブルーの水差しに生けた、いけばな的なアレンジ。赤や紫のアネモネを使った、大胆なカラーリングでモダンな雰囲気に COURTESY OF YUKARI KOMAKI

さわやかなサックスブルーの水差しに生けた、いけばな的なアレンジ。赤や紫のアネモネを使った、大胆なカラーリングでモダンな雰囲気に

COURTESY OF YUKARI KOMAKI

画像: 数ある花器の中でも使う頻度が高いという「アラジンの魔法のランプ」的なヴィンテージの水差しに色とりどりの花を生けて。「実はこれは後から色を足していったんです。生けた日の翌日に、水色とピンクの花を足して、表情の変化を楽しんでみました」 COURTESY OF YUKARI KOMAKI

数ある花器の中でも使う頻度が高いという「アラジンの魔法のランプ」的なヴィンテージの水差しに色とりどりの花を生けて。「実はこれは後から色を足していったんです。生けた日の翌日に、水色とピンクの花を足して、表情の変化を楽しんでみました」

COURTESY OF YUKARI KOMAKI

画像: 白やピンクと淡い色のグラデショーンに、赤い薔薇をアクセントにしたアレンジ。使っている花器は、青山の骨董市で手に入れたというシックなロシア製のミルクピッチャー。こちらも、数ある花器コレクションの中で使う頻度が高い花器のひとつだそう COURTESY OF YUKARI KOMAKI

白やピンクと淡い色のグラデショーンに、赤い薔薇をアクセントにしたアレンジ。使っている花器は、青山の骨董市で手に入れたというシックなロシア製のミルクピッチャー。こちらも、数ある花器コレクションの中で使う頻度が高い花器のひとつだそう

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 お正月はいわゆる正月花ではなく、橙と椿のアレンジ、クリスマスはツリーではなく、生花のスワッグと、古牧さんらしいシーズナルアレンジで演出しているのも素敵だ。

画像: 観賞用の橙と椿を使ったお正月のアレンジ COURTESY OF YUKARI KOMAKI

観賞用の橙と椿を使ったお正月のアレンジ

COURTESY OF YUKARI KOMAKI

「お正月の橙は、頭が重いので剣山を使って立てています。クリスマスはスワッグを作って、ちょっとしたデコレーションをする程度。ドライフラワーは苦手なので、スワッグを作る時も生花を使っています。生花だと香りがぶわ〜って広がって、朝、目覚めたら深呼吸してその香りを思い切り吸い込むのがすごく気持ちいいんです。部屋をスワッグの香りで満たすのが、クリスマスシーズンのお楽しみ」。

画像: クリスマスのスワッグ。杉をベースに、赤い実やゼンマイがアクセントに。「スワッグにできそうなものをいくつか揃えて、わさわさっとまとめて束ねるだけと、とっても簡単。枯れるまでは霧吹きで水をかけて手入れをしています」 COURTESY OF YUKARI KOMAKI

クリスマスのスワッグ。杉をベースに、赤い実やゼンマイがアクセントに。「スワッグにできそうなものをいくつか揃えて、わさわさっとまとめて束ねるだけと、とっても簡単。枯れるまでは霧吹きで水をかけて手入れをしています」

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画像: スワッグにオーナメントを飾って、クリスマス気分を演出することもあるそう COURTESY OF YUKARI KOMAKI

スワッグにオーナメントを飾って、クリスマス気分を演出することもあるそう

COURTESY OF YUKARI KOMAKI

 飾った花たちは、水温に気を配りながらこまめに水換えをし、枯れた時は「ありがとう」といって処分をする。枝物は極力剪定せず、そのままの姿で生ける。部屋で育てているたくさんのグリーンたちと同じように、花も、命あるものとして、大切に世話している。

画像: 背の高いガラスの花器に藤一本だけを生けて。枝の造形をそのまま生かした彫刻的な美しさに COURTESY OF YUKARI KOMAKI

背の高いガラスの花器に藤一本だけを生けて。枝の造形をそのまま生かした彫刻的な美しさに

COURTESY OF YUKARI KOMAKI

「枝物は、買うときに枝ぶりのいいものを選んで買っています。どうしてもバランスを取るのに枝を剪定するときは、切り落とした部分を小さな器に生けて、キッチンに飾ったり。みんな生きているから、剪定したものをそのまま捨てるなんてできないし、なるべく、そのままの状態で生けてあげたいんです」。

 みんな生きているのだから──。飾って終わりではなく、日々、古牧さんの愛情をたっぷりと注がれているからこそ、どの花も美しく、生き生きと目に映るのかもしれない。

古牧ゆかり
スタイリスト/ビジュアルディレクター。ファッション誌で活躍後、渡仏。パリに暮らす。帰国後『エル・ジャポン』のファッションエディターに。現在はフリーでファッション、インテリアのスタイリングや動画制作のビジュアルディレクションを手がける。本誌ファッション特集でも活躍中。
公式サイトはこちら

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