BY EMI ARITA, PHOTOGRAPHS BY MAKOTO NAKAGAWA
おしゃれな家具にギャラリーのように飾られたアート、そして旅先で集めた素敵なものたち……と、古牧さんの“好き”で溢れた部屋は、いつも美しく飾られた花たちが生き生きと彩りを添えている。
「寝る前や朝起きた時、飾った花を『かわいいな〜』『素敵だな〜』って愛でる。そんな瞬間が私にとっての癒しのひととき。だから、飾るのはやっぱり自分が好きな花が多くなってしまうんですよね。特に好きなのが、薔薇やクチナシ、ライラックなど、香りがふわ〜と広がる花。あとアネモネやラナンキュラス、ガーベラとか、丸いフォルムで、たくさんの色がある花もよく飾っています」。
数年前はいけばなのレッスンにも通っていたという古牧さん。いけばなのメソッドを活かしつつ、もともと持ち合わせている古牧さんのセンスでアレンジされた花たちは、どれも素敵だ。
「ブーケのように何種類も花を買い揃えることはあまりなく、多くても4種類くらい。大小リズムをつけて、そこにびよ〜んと伸びるグリーンを足したり、グリーンをベースにして、1本だけ季節の花を挿したり。アネモネのように柔らかい茎のものは、ふにゃっとしっている動きをそのまま活かしてざっくりと生けたり。シンプルに、ざくっと、ダイナミックに生ける。それが自分らしい生け方かな」。
陶器のもの、ガラスのもの、あるいは水差しと、花を生けている花器もまた、目を惹かれるものばかり。花器として集めてきた器は50個以上あるといい、その時の花に合あわせて、多彩なコレクションの中から花器を選んでいる。
「作家ものや、プロダクトデザインのもの、骨董市で買ったものと、色も柄も素材も、様々なものが揃っているのですが、特に水差しに花を生けるのが好きなんです。なぜ水差しなのかは自分でもわからないんですが、素敵なものに出会う度に買っていて、今も増え続けています(笑)」。
お正月はいわゆる正月花ではなく、橙と椿のアレンジ、クリスマスはツリーではなく、生花のスワッグと、古牧さんらしいシーズナルアレンジで演出しているのも素敵だ。
「お正月の橙は、頭が重いので剣山を使って立てています。クリスマスはスワッグを作って、ちょっとしたデコレーションをする程度。ドライフラワーは苦手なので、スワッグを作る時も生花を使っています。生花だと香りがぶわ〜って広がって、朝、目覚めたら深呼吸してその香りを思い切り吸い込むのがすごく気持ちいいんです。部屋をスワッグの香りで満たすのが、クリスマスシーズンのお楽しみ」。
飾った花たちは、水温に気を配りながらこまめに水換えをし、枯れた時は「ありがとう」といって処分をする。枝物は極力剪定せず、そのままの姿で生ける。部屋で育てているたくさんのグリーンたちと同じように、花も、命あるものとして、大切に世話している。
「枝物は、買うときに枝ぶりのいいものを選んで買っています。どうしてもバランスを取るのに枝を剪定するときは、切り落とした部分を小さな器に生けて、キッチンに飾ったり。みんな生きているから、剪定したものをそのまま捨てるなんてできないし、なるべく、そのままの状態で生けてあげたいんです」。
みんな生きているのだから──。飾って終わりではなく、日々、古牧さんの愛情をたっぷりと注がれているからこそ、どの花も美しく、生き生きと目に映るのかもしれない。
古牧ゆかり
スタイリスト/ビジュアルディレクター。ファッション誌で活躍後、渡仏。パリに暮らす。帰国後『エル・ジャポン』のファッションエディターに。現在はフリーでファッション、インテリアのスタイリングや動画制作のビジュアルディレクションを手がける。本誌ファッション特集でも活躍中。
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