東京国立近代美術館で開催されている『高畑勲展—日本のアニメーションに遺したもの』。その会場で、映画監督・細田守に、本展のみどころ、そして高畑作品の魅力と演出術について話をきいた

BY MASANOBU MATSUMOTO

 2018年に没した、日本が誇るアニメーション映画監督、高畑勲。東映動画(現・東映アニメーション)で演出家としてのキャリアをスタートし、テレビアニメシリーズ『アルプスの少女ハイジ』(1974年)、『母をたずねて三千里』(1976年)、『赤毛のアン』(1979年)などを担当。1985年に宮崎駿らとスタジオジブリ設立に参画してからは『おもひでぽろぽろ』(1991年)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)、そして『かぐや姫の物語』(2013年)といった作品を世に送り出した。

 東京国立近代美術館で開催中の『高畑勲展—日本のアニメーションに遺したもの』は、彼の作品から、高畑演出の秘密を解き明かそうとするもの。並ぶのは、絵コンテ、背景美術、キャラクター設定や世界観を構築するためのイメージボードなど、アニメーション制作の“現場”で高畑が遺したものだ。

画像: 『アルプスの少女ハイジ』の絵コンテ。絵は宮崎駿が描き、描写の説明を高畑が文字で記している © ZUIYO 「アルプスの少女ハイジ」公式ホームページ http://www.heidi.ne.jp/

『アルプスの少女ハイジ』の絵コンテ。絵は宮崎駿が描き、描写の説明を高畑が文字で記している
© ZUIYO 「アルプスの少女ハイジ」公式ホームページ http://www.heidi.ne.jp/

「こうして、改めて高畑さんの仕事をみると、やはりイノベーターであったことがわかりますね」と映画監督の細田守は話す。細田監督は、近作『未来のミライ』が、2018年のカンヌ国際映画祭「監督週間」に選出され、また今年の米国アカデミー賞「長編アニメ映画」部門にもノミネート。高畑以降の日本のアニメーション界を牽引する監督のひとりだ。

 じつのところ、細田監督も高畑とおなじ東映アニメーション(高畑の在籍時の名称は東映動画)の出身者でもある。「東映動画は、いわゆる東映長編と呼ばれるアニメーション映画を作ってきた場所。僕が入社したころには、もう東映長編は作られていませんでしたが、それでも“アニメーションづくりとは映画を制作することだ”という気概が残っていました。だから、テレビシリーズであっても、高畑さんの作品は映画的な迫力があるんです。また、いま、日本アニメーションの草創期がNHKの連続テレビ小説『なつぞら』の舞台にもなっていますが、高畑さんが東映動画にいらっしゃった当初は、“こうやって作れば、アニメーション映画はできる”というかたちがまだなかった時代。会場展示からは、試行錯誤しながら作品をつくっている様子もうかがい知れて、僕にしてみれば、すごくうらやましい(笑)」

画像: 『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』のレイアウト画。宮崎駿のアイデアをベースに高畑が演出を担当 © TMS

『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』のレイアウト画。宮崎駿のアイデアをベースに高畑が演出を担当
© TMS

 実際に、高畑が劇場用長編を初めて監督した『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年、主人公のホルスが、村人と団結して悪魔を倒す物語)にまつわる展示では、高畑のユニークな作品作りの一端が紹介されている。劇中にキャラクターたちが口ずさむ歌の作曲やダンスの振り付けを、絵作りに先行して制作。また踊りに関しては、実際に踊り手たちを使って、オリジナルの振り付けを仕上げている。

「(作品づくりの体制における、スタッフの作品参加の機会均等や問題点などに関する高畑のメモのなかに)“作品づくりを民主化する”なんて言葉もあります。“村人と団結して悪魔を倒す”という『ホルス』の主題が、じつは作品づくりそのものにもリンクしているんです。アニメーション制作の黎明期ならではの、貴重な現場感を伝えるものですね」

 

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