韓流エンタメの第一人者、田代親世さんが、韓国ドラマの魅力を様々な独自の切り口でご紹介。今回は、芸術高校を舞台に、才能に恵まれた若者たちの葛藤や挫折、そして成長を描いたドラマを3本セレクト。

TEXT BY CHIKAYO TASHIRO

2つの才能がもたらす光と影を描く
『フォーハンズ ~2人のソナタ~』

 才能が結びつけ、才能が引き裂く、2人の青年の絆と葛藤を描いたドラマです。物語の中心となるのは、偉大な指揮者の孫としてピアノのエリート教育を受けてきたカン・ビオと、貧しく、十分な教育を受けられなかったにもかかわらず、野性的な勘と天性の才能に恵まれたチェ・ジョンヨ。対照的な2人は、互いにとって、まるで魂の深いところで結ばれているかのような存在になっていきます。互いに刺激し合い、相手がいてこそ最も輝ける。1人では引き出せない力が、2人でピアノを弾くことによって生まれてくる。連弾という演奏スタイルが、そのまま2人の関係を象徴しているようでした。

画像: 主演のソン・ガン Netflixシリーズ「フォーハンズ ~2人のソナタ~」独占配信中

主演のソン・ガン Netflixシリーズ「フォーハンズ ~2人のソナタ~」独占配信中

 けれど、圧倒的な才能の差が、2人の間に残酷な影を落としていきます。優れた実力を持ちながら、常にジョンヨの才能を意識せずにはいられないビオ。一方のジョンヨも、そんなビオに気兼ねし、次第に2人の関係は複雑に絡まり合っていきます。ソン・ガン演じるビオは、まるでガラス細工のような透明感と繊細さを持つ青年。冷たい眼差しも、罪悪感に怯える目も、憂いを帯びた虚ろな表情も美しく、どこか『ポーの一族』の世界を思わせます。一方、イ・ジュニョン扮するジョンヨは、最初こそ人懐っこく素直な青年なのですが、物語が進むにつれて、復讐にとらわれた暗い一面をのぞかせていきます。その変貌ぶりにはゾクゾクさせられました。

画像: イ・ジュニョン  Netflixシリーズ「フォーハンズ ~2人のソナタ~」独占配信中

イ・ジュニョン  Netflixシリーズ「フォーハンズ ~2人のソナタ~」独占配信中

 物語は中盤で10年後へと移り、2人の関係はさらに複雑さを増していきます。愛情と憎しみ、友情と嫉妬、尊敬と敵意。相反する感情が絡まり合い、かつて大切な存在だったからこそ、憎しみもまた深くなっていく。そのどうしようもなさが、切なく、やるせないのです。2人だからこそ生み出せる音楽があり、2人だからこそ深く傷ついてしまう。才能がもたらす光と影を、クラシック音楽の美しい調べに乗せて描き出した、美しくも残酷で、深い余韻を残す作品です。

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歌やダンスの世界を舞台にした青春群像劇
『ドリームハイ』

 仲間やライバルとの出会いを通して、それぞれが自分の夢の形を見つけていく物語です。オペラ歌手を目指し、容姿にも才能にも恵まれ、ずっと1位でいることが当たり前だった少女が、家庭の事情で夢を諦めざるを得なくなり、仕方なく芸術高校のオーディションを受けることに。クラシックこそ高尚で、アイドル歌手など自分より下──、そんな偏見を持っていた彼女は、当然合格すると思っていた自分が不合格となり、いつも後ろをついてきた友人が合格したことで、大きな挫折を味わいます。ここからヒロインは、田舎育ちながら絶対音感を持つ青年、政治家の私生児として目立たないように生きてきたダンスの才能を持つ青年、そして長年ヒロインに劣等感を抱いてきた少女らとともに、夢を追い始めます。

画像: 生徒役の一人 オク・テギョン  写真:Everett Collection/アフロ

生徒役の一人 オク・テギョン  写真:Everett Collection/アフロ

 このドラマがおもしろいのは、才能だけでは一流にはなれないと描いているところです。才能があっても、慢心や偏見があれば成長できない。反対に、今は実力が足りなくても、努力し続けることで可能性は開けていく。そしてライバルは、時に自分を傷つける一方で、自分をより高い場所へと押し上げてくれる存在にもなるのです。芸術の世界では、どうしても誰かと比べずにはいられません。相手の才能がまぶしいからこそ苦しくなり、負けたくないと思う。でも、その相手がいるからこそ、自分の中に眠っていた力に気づくこともある。この作品では、そんな競争や劣等感を、歌やダンスという華やかな世界を舞台に、青春群像劇として描き出していきます。

 さらに、今ではトップスターとなった面々が、若き日のアイドルとして数多く出演しているのも、この作品ならではの魅力です。歌い、踊り、競い、傷つきながら前へ進む彼らの姿には、どこか出演者自身が歩んできた道と重なって見えます。才能とは1人で磨くものではなく、誰かとの出会いや競争の中でこそ磨かれ、成長していく──、そんな青春のまぶしさと痛みが感じられる作品です。

■U-NEXT、Prime Video他で配信中

3人の高校生の姿が清々しい余韻を残す
『演奏者たち~Page Turner~』

 ピアノの才能をめぐって競い合ってきた2人と、そこに飛び込んできたピアノ初心者。3人の高校生の出会いが思いがけない変化を生んでいく、全3話の爽やかな青春ドラマです。主人公は、常に1位を取り続けてきた天才ピアニストの女子高校生と、実力はありながらも、どうしても彼女に勝てない万年2位の男子高校生。ところが、彼女が事故で視力を失ったことで、2人の関係は大きく変わります。

画像: Licensed by KBS Media Ltd. ⓒ 2016 KBS. All rights reserved

Licensed by KBS Media Ltd. ⓒ 2016 KBS. All rights reserved

 おもしろいのは、ライバルの彼の複雑な感情です。ずっと勝ちたいと思っていた相手なのに、彼女がピアノを弾けなくなると、誰よりも心配してしまう。悔しい、負けたくない。でも、彼女がピアノを弾けなくなってしまうのは違う。ライバルだからこその、単純な好き嫌いでは割り切れない感情が実にいいんですね。そんな2人の前に現れるのが、怪我で棒高跳びの道を絶たれた男子高校生。ピアノはほぼ初心者なのに、「自分にもできる!」と信じて猛練習を始めます。この元棒高跳び選手の存在が、物語に爽やかな風を吹き込みます。幼い頃から才能や順位、親の期待に縛られてきた2人にとって、彼の明るい無邪気さは、何よりもまぶしく映ります。そして皮肉にも、彼女は視力を失って初めて、演奏することの純粋な楽しさに気づいていくのです。 

画像: 主演のキム・ソヒョン Licensed by KBS Media Ltd. ⓒ 2016 KBS. All rights reserved

主演のキム・ソヒョン Licensed by KBS Media Ltd. ⓒ 2016 KBS. All rights reserved

 そして何より素敵なのが、タイトルの意味。「ページ ターナー」とは、演奏者のそばで楽譜のページをめくり、演奏を支える人のこと。人生でも、挫折して自分1人では先に進めなくなったとき、誰かがそっと次のページをめくってくれることがある。このドラマの3人は、まさにお互いにとってのページ ターナー。誰かに支えられ、今度は自分が誰かを支えることで、それぞれが再び歩き出していきます。才能の残酷さや挫折の痛みを描きながらも、最後には「もう一度やってみよう」と思わせてくれる。見終わったあとに清々しい余韻が残る、素敵な青春ドラマです。

■Prime Videoのサブスクリプション“Channel K”にて配信中

田代親世 韓流ナビゲーター 
韓流解説、韓流イベント司会の第一人者。公式サイト「田代親世の韓国エンタメナビゲート」やYoutube「ちかちゃんねる☆韓流本舗」「韓ドラ・マスター親世と尚子の感想語り」などで韓流情報を発信しているほか、会員制のコミュニティ【韓流ライフナビ】を主宰。ツアーやイベントを企画・開催している。


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