BY ALEXANDER FURY, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
6月25日に閉幕した2018年春夏パリ・メンズ・ファッションウィーク。どう総括するのがベストだろう? 長くなった会期、短すぎるショートパンツ。ファッションを記憶に残る、長続きするものにしようと競り合うデザイナーたち。ビッグメゾンのコレクションだけが注目されたわけではなく、今後長らく人々の記憶に残るに違いないショーも数多く見られた。新たに参加するブランドが増え、会期の長くなったパリ・メンズ・コレクションは、再びファッション界の王者の座に君臨することになったのだ。
BALENCIAGA(バレンシアガ)
21日にパリの森にいた者は、誰もが驚いたことだろう。デムナ・ヴァザリアによるバレンシアガのショーは、パリ西部にある公園、緑豊かなブーローニュの森で開催された。その場に不釣り合いな椅子がシュールレアリストのインスタレーションさながらに列をなし、木々とランウェイとの間仕切りになっていた。
「普遍的かつ現代的なリアリティ」ーー これはデムナが今回のコレクションを説明する際に使った言葉だ。前回の秋冬コレクションから自然な進化を遂げた今回のショーの主役は、オフィスで働くビジネスマン。写真のルックは、週末に自然の中で余暇を過ごすバレンシアガ・マンとでも呼べそうだ。
過去数シーズンと同様、モデルキャスティングは驚くほど多様性に満ちていた。服にリアリティを出すため、ファッションモデルの枠を超えたさまざまなモデルたちが選ばれた。
とはいえ、コレクションを象徴したのは「若さ」だ。インスピレーション源は、子どもたちとともに過ごす父親像。写真のように、子どもを抱きかかえたり、手をつないだりするモデルも。子どもたちはみな、実際にモデル本人の子どもだ。
野外でのショーにふさわしく、アウトドアアイテムが豊富。フードつきレインコートや防水加工のアノラック、スポーツギアなどをスタイリングに取り入れていた。バレンシアガのロゴが各所にあしらわれた自転車まで登場。この自転車はショー同日に売り出され、パリのセレクトショップ「コレット」のショーウィンドウでは3900ドル(約44万円)ほどの値がついた。
とにかくショートパンツがトレンドの今シーズン。特にベリーショートパンツを提案するブランドが多かったが、デムナがバレンシアガで提案したのは、バミューダパンツとホットパンツを重ね履きしたように見える、太もも上部と膝の2ヵ所で生地を切り替えたトラウザーパンツ。
デムナはいつも社会学への関心をショーで示してきた。彼のもうひとつのブランドであるヴェトモンでは、人々のリアルな装いをショーにして見せている。「僕が見せたいのは服だ。ファッションではなくて」と彼は語ったことがあるが、これはまさに今回のバレンシアガのコレクションにも当てはまる。