BY AIMEE FARRELL, PHOTOGRAPHS BY MEL YATES, TRANSLATED BY JUNKO HIGASHINO
ハミルトン
私はこのギャラリーでまさに、あなたが今言ったようなことが実現できた気がするの。周囲をまだよく見てさえいないのに、展示室に入っただけですでに圧倒される、そんな空気感が生み出せたかなと。
アンダーソン
たぶん僕が世界一好きなアート・コレクションが揃う「ケトルズ・ヤード・ハウス」について言えば、あそこはもともと人(ジム・エド夫妻)の住まいだった。2016年のリゾート・コレクションのショー会場として使わせてもらったとき、僕らはそこで3日ほど過ごしたんだけど、あの場所にはハーモニーがあるんだ。アート作品と、人が暮らしていた痕跡、そして作品の収集スタイルまで、すべてが見事に調和されていて。
ハミルトン
そう、あそこに行くとくつろげるのよね。まるで自分の家にいるみたいに。あの場所ならではのロジックがそうさせるんでしょうね。
アンダーソン
いつもあの場所には敬虔さを感じるんだ。すごく禅的というか。だからこそ僕は、この“反モード的な場所”で最先端のファッションショーを開いたら面白いんじゃないかって思ったんだよ。実際のショーのときは、まるで何かのレクチャーのような、あるいはサロンにいるような雰囲気でね。モデルがひとり現れるごとに、そのスタイルを丁寧に解説していく講義みたいな、そんなムードだったんだよ。
ハミルトン
「ケトルズ・ヤード・ハウス」はあなたのショーにぴったりね。あの場所では、それぞれのオブジェがそれぞれいちばんふさわしい位置に置かれているの。社会的、宗教的、政治的、美学的と、いろいろな理由に基づいてね。あそこは単に誰かが住んでいた家ではなく、オブジェたちがヒストリーを語る場所なのよ。
アンダーソン
これって、英国ミドルクラスの“タイプA(心理学用語。物事に熱中しやすく野心的で短気な性格特性)”の典型的な暮らし方なのかもしれないね。コンセプチュアルな生活というか。なにしろジム・エドは下階で、奥さんのヘレンは上階で寝ていたそうだよ。ふたりはハッチを通じて話をしていたんだって。
ハミルトン
ものすごく純潔だったのね。
アンダーソン
あの場所と性愛は無縁さ(笑)。
ハミルトン
この展覧会を手がける前、私は人々の興味をかき立てるような、煽情的な作品ばかり作っていた。でも今回の展覧会では、イギリス人気質とかミドルクラスについての知識を深めることができたし、ある意味、私にとってのいい息抜きになったわ。
アンダーソン
じゃあ、これからはまた君の遊び心が発揮できるってことだね。君の作品で僕がいちばん好きなのは、そのユーモアのセンスなんだよ。
※このインタビューは要約・編集されたものです。