気鋭のデザイナーとアーティストが、それぞれの創作スタイルや互いのクリエーションへの想いを語り合う

BY AIMEE FARRELL, PHOTOGRAPHS BY MEL YATES, TRANSLATED BY JUNKO HIGASHINO

 アンダーソンとハミルトンは2015年に初めて顔を合わせた。ロエベ財団のアートプロジェクトの一環として、マイアミ・デザイン地区で催されたアート展のために、アンダーソンがハミルトンに3つの作品の制作を依頼したのだ。そして今回、ふたりが椅子に腰かけながら、Tマガジンのためにアートとファッションの話をするうちに、彼らの共通点が明らかになった。ふたりとも取りつかれたように布を収集していて、服を作っているのだ。その一方で正反対の要素もある。最近モードの世界に夢中だというハミルトンは、アンダーソンのクリエーションのスピードに驚嘆し、キュレーターもこなすパワフルなデザイナーのアンダーソンは、モード界よりゆったりとしたペースのアート界がうらやましいと打ち明ける。

画像: アンセア・ハミルトンが再考するケトルズ・ヤード』展(現在は終了)の会場で、椅子に腰かけるアーティストとデザイナー。ハミルトンの2016年の作品「ブリティッシュ・グラッシーズ・キモノ」の前で

アンセア・ハミルトンが再考するケトルズ・ヤード』展(現在は終了)の会場で、椅子に腰かけるアーティストとデザイナー。ハミルトンの2016年の作品「ブリティッシュ・グラッシーズ・キモノ」の前で

 ふたりのファッションや性質もやはり正反対だ。アンダーソンは、感情を表に出すはっきりした性格で黒の服を着る。一方のハミルトンは慎重で穏やかで、白いTシャツとペールカラーのフレアデニムをまとう。でも彼らは、互いに学ぶことが多いと口を揃えて言う。“仕事を取り替えたらどうか”という話になったときだけ押し黙ったふたりだが、それ以外のときは、今のラグジュアリーファッションが意味するもの、ビジネスとクリエーションのバランス、コラボレーションの重要性など多面的なテーマについて話し合い、会話は最後までよどみなく流れた。

ジョナサン・アンダーソン(以下アンダーソン)
僕がロエベ財団のアートプロジェクトを進めているとき、君のアトリエで初めて会ったんだよね。

アンセア・ハミルトン(以下ハミルトン)
そう、あなたに3つの作品の制作を依頼されたのよね。「ブリティッシュ・グラッシーズ・キモノ(British Grasses Kimono イギリスの草の着物)」と石膏製の脚のオブジェ、それと私が長いことシリーズで取り組んでいる「レッグチェア」の3点。

アンダーソン
そこで出会ってから僕は、どこに行っても君の作品に出くわすようになったんだ(笑)。あれからもう10年くらいたったような気がするけど。

ハミルトン
あれは2015年のことよ。私はちょうどニューヨークでの別の展覧会を終えたところで、かなりハイな状態だったわ。マイアミのプロジェクト向けにいくつかの作品を制作しながら思いついたアイデアを、今回の展覧会の土台にしているの。

アンダーソン
アンドリュー・ボナチナ(「ヘップワース・ウェイクフィールド・ギャラリー」のチーフ・キュレーター)が、君の作品を初めて見せてくれたんだ。作品から伝わってくる感触みたいなものとユーモアがすごく気に入って、すぐに惚れ込んでね。君のアトリエに行って制作風景を見られたのも最高だったよ。

ハミルトン
でも、あのときテーマは打ち合わせたのかしら、忘れてしまったわ。

アンダーソン
というか、テーマがなかったから(笑)。

ハミルトン
テーマがないっていうのが、ある意味いちばん難題ね。でも私には、長いこと手がけていた“着物シリーズ”があったから。この「ブリティッシュ・グラッシーズ・キモノ」で使った写真は、ボタニカル・フォトグラファー、ロジャー・フィリップスの作品なの。依頼を受けた頃は、本で見た彼の作品を私なりにどう表現するか考えていたところだったのよ。

アンダーソン
君のこの作品は本当に美しいよね。僕はあらゆる時代のテキスタイルが好きなんだけど、君の布の扱い方は格別だと思う。感触が伝わってくるし、一体どんな素材なのか知りたくなる。直接触れてみたくなるんだ。

ハミルトン
おかしなことにね、以前は意識的にファッションを追うことなんてなかったのに、あらゆるショーをオンラインで見るようになったの。でもモード界って、私の理解を超えるスピードで動いているわよね。私の仕事のやり方とは正反対よ。私自身は、考えるのにものすごく時間がかかるから。

 

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