BY OSMAN AHMED, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
世界的に見れば、デンマークといえばミニマルなホーム・インテリア、実験的なキュイジーヌ、ヒュッゲな(心地いい)暮らし、といったところだろう。だが、このリコリス好きの小国が、実は流行の発信源であることはあまり知られていない。ファッションについていうなら、この都市は、自転車に乗りやすい快適さと北欧風シックをおもしろい具合にブレンドするのが巧みだ。おそらくそれこそが、デンマークの新進3ブランド、「セシリー バーンセン」、「サックス ポッツ」、「レインズ」を結びつける要素だろう。
この3ブランドは、コペンハーゲンに新しいエネルギーを運び込んでいる。もっと規模の大きい北欧発のブランドが市場を支配する一方で、これらの独立系ブランドは自国でも海外でも新規顧客をとり込むことに成功している。1月末から開催された’18-19年秋冬のコペンハーゲン・ファッションウィークで新しいコレクションを披露した3つのブランドを、Tマガジン独占ビジュアルとともに紹介しよう。
Cecilie Bahnsen(セシリー バーンセン)
一見すると、「セシリー バーンセン」の服の甘いフリルやひだ飾りは、ガーリーで可愛らしすぎるように思えるかもしれない。だがもっとじっくり見てみると、彼女のデザインには北欧風のミニマリズムがはっきりと見てとれる。シャープなシルエットやボリュームたっぷりのスカートが、彼女の服にモダンな印象を与えている。セシリーの世界は、ギャザーの寄った白いオーガンザのスモックやベビードールドレス、シルクのキルトスカートの上に合わせるゆったりしたウェルシュニットといったアイテムに満ちている。それらのアイテムを特徴づけるのは、常に変わらないインスピレーション源ーー学校の制服、昔からあるようなドレス、ミッドセンチュリー時代のクチュールといったものだ。そこにはまた、コンテンポラリー・アートへの深い造詣も感じとることができる。
過去2シーズン、セシリーはコペンハーゲンのアートスペース「ギャラリー・ニコライ」でコレクションを発表している。ショーのあいだ壁に飾られたアート作品は、そのときのテーマを反映していた。今シーズン、ギャラリーに飾られていたのはダン・グラハムのガラス彫刻だった。セシリーはこれを「人間と、重なり合う層について」の作品だと解釈している。セシリーはロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学び、イギリスのブランド、アーデムでデザイン・アシスタントとして働いていたが、昨年、故郷のコペンハーゲンに戻ってアトリエを設立した。今コペンハーゲンで人気の、スカートやワンピースの上にTシャツを着るスタイリングに注目している彼女は、自分の服もそんなふうにカジュアルダウンして着こなしてほしいと考えている。
大好評を博しているセシリーのブランドは、すでに LVMHプライズ2017でファイナリストに選ばれ、昨年1年間だけで、取り扱いショップは世界で22店舗に増えた(最初に取り扱いを始めたショップのひとつがドーバー ストリート マーケットで、オンラインショップのエスセンスや高級百貨店のセルフリッジズ、レーン・クロフォードがすぐさまその後に続いた)。そんなわけで、彼女のブランドがコペンハーゲン・ファッションウィークで最も期待度の高いショーのひとつになったのも、さほど驚くにはあたらない。
今年は彼女にとって大切な1年となるだろう。なんといっても初めてのプレフォール・コレクションを発表したばかりで、今後はさらに手を広げ、靴やバッグ、ジュエリーも展開していくつもりなのだ。9月には、ロンドン・ファッションウィークに参加してショーを開催したいとも考えている。「ランウェイで見せるものを、そのまま店で買えるようにしたいと思っているの」とセシリーは言う。